ハンドスピナー・エフェクト
伊島糸雨
プロローグ
こんなはずじゃなかった。こんなことになるとは思わなかった。
うんざりするほど聞いた言葉だと思う。私だけでなく、この世界の多くの人が、過去から見て未来に立ってしまった自分を見ては、そんな後悔を口にする。あの原因からこんな結果になるなんて想像できなかった。予測もつかなかったのだ、と。
でも、それは言い訳なのかもしれない。因果というものは必ずあって、それらは複雑に絡み合いながら非線形を描いていく。私たちはそれを知っているのだ。自分の動きのすべて、脳の皮質を這うニューロンの電気信号の瞬き一つをとったって、何かの原因になりうるのだと。
二〇一七年。上昇を続ける気温に辟易とした、就活失敗後最初の夏。
ハンドスピナーを回していた。一時間、二千円で。
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