恩讐の終着点 その3

 売り飛ばさされる女の子達が閉じ込められ出荷待ちをさせられている倉庫をかぎつけた俺は、原住民の部下を一個分隊つれて襲撃することにした。


 隊を二手に分け、一隊は下から入り口を破って侵入し、もう一隊は屋根を叩き壊し上から突入するという作戦を取る。

 屋根からの班に居た俺は、天窓から中を覗き込むと、ちょうど一人の女の子が人買い共に嬲り者にされている最中だった。


 ところが不思議なことに、人買い共の人数は最初聞いていた数とは違い5,6人しかいない、10、2、3人は居ると聞いていたが?

 別の場所を見ると、男どもが折り重なって倒れている。ピクリとも動かない。


 事情は分からないが一刻の猶予も無いと判断した俺は突入を命じ、天窓をぶち破り綱を垂らして20式将校銃を撃ちまくりながら滑り降り、部下たちも下士官銃を構えて次から次へと侵入した。


 入り口からの班も合流し、人買い共は一匹残らず排除され、娘たちを依頼通り助ける事ができた。一人を除いては。


 嬲り者にされていた女の子は、出血もひどく内臓も相当痛めつけられており、医者に見せてもまず助かりそうに無かった。

 抱き寄せてやり、血まみれ液まみれの顔を水筒の水で拭ってやると、弱弱しいながらもにっこりを笑ってくれる。

 片方の角を欠けさせた女の子が駆け寄ってきて、俺に取りすがり、涙で顔をくちゃくちゃにしながら。


「そん人を助けてくなんじょ!1人で人買いと戦って、わんしらを助けてくれようとしなんすたんじょ!7人まんではやっつけたんじょが、うしんろからなぐられて、捕まったんじょ」


 こんな華奢な女の子が、7人をの男をブチのめした?

 手の指が全部へし折れていたのは、まさかそう言う事か。

 俺は彼女の頭を撫でてやりながら。


「何か、してほしい事は無いか?言ってくれ」


 すると、出てきた言葉がこれだった。


「あ、あが、の、つ、角を、切って、さ、里に・・・・・・。角、を、里に、里の、妹に・・・・・・」


「あと半時間、倉庫に付くのが早ければ、おまえさんのお姉さんを死なさずに済んだかもしれない。そう言う意味では、お姉さんを殺したのは。俺だ。すまない。けどこれだけは言わせてくれ、お前のお姉さんは、戦って死んだ。他の女の子を守る為に素手で7人の人買いを斃した。ネルワールの女として誇り高くな」 


 娘は、構えを解いてクッラをだらりと下すと。


「姉ェは体が弱かったんだ。だから戦うことは出来なったけど、技はたくさん知ってた。吾がにたくさん技を教えてくれた。里が長雪で食いもんが無くなって、皆が困ったとき、姉ェは街で働いて金を工面すると言って里をでた。止めればよかった」


 そう言ってうつむく。次に顔を上げた時は、黒曜石の瞳は涙で濡れていた。


「姉ェ、今どこにいる?」

「迂恕の街にある寺で、懇ろに弔ってもらってる。あの日助けられた子達が墓参りに行ってるそうだ。俺は、すまん。行けてない」

「そっか、ちゃんとお墓に入れてもらってるのか。よかった」


 涙が娘の小麦色の頬を伝う。

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