第38話 僕ウイルスはこうして出来ました。

 どうすればいいか悩んでいた。

 最上級の治癒魔法使いがいれば……。

 ある日、ギルドに行った。

 僕の望んでいた人がいた。

 そこに……まるで用意されたかのように。


「彼女の名はミナージュ。見て。このステータス」


 ギルドマスターであるフィナが僕にミナージュのステータスを見せてくれた。

 フィナはあのサチエの友達だった。

 だから、サチエは自家製の能力測定器を持っていた。


 ミナージュ(20歳)


  Lv.5010

  スキル :治癒魔法(最上級)

  攻撃力 : 1

  防御力 : 50

  HP : 300

  MP : 9999

  素早さ :570

  知力 : 7950

  運 : 1445


「ミナージュさん。はじめまして」

「ん」


 昼間っから、ギルドの隅っこでビールを飲んでいるミナージュは僕の声に反応した。

 白い肌に白い髪。

 スラリとした身体に絹の白装束をまとっている。

 大きな目に海色の瞳。

 鼻筋の通った美人。

 いかにも治癒魔法使いと言った風情だった。


「唐突で申し訳ありませんが、僕の話を聞いてください」


 僕の計画を彼女に話した。

 

「分かりました」


 彼女は頷くとこう言った。


「治癒魔法をバカにしている輩に復讐する件、お請けしましょう」

「ありがとうございます」

「ただ、私はあくまで治癒魔法使い。その反対となる病気を魔法で作るとしても、それほど強力なものは作れません」

「例えば、どんなものが作れますか?」

「人を殺すほどのものは作れません。せいぜい、風邪を強力にしたもの程度なら……」


 彼女はビール片手に淡々と語った。


「その程度で大丈夫です。僕はなるべく死人を出したくない」

「では、用意しておきます。明日、またここで会いましょう」


 次の日。


 ミナージュは、『病気の元』が入った瓶と、その病気を治癒することが出来る『病気の特効薬』を持って来ていた。


「治癒魔法使いの人は凄いですね。病気を作った上に、セットで薬まで作れるなんて」


 魔法の力を込めることで作った病気の元と、『病気の特効薬』。

 彼女オリジナルのものだ。


「私より上級の治癒魔法使いでなければ、この病気を治すことは出来ません」


 つまり、コブチャではどうすることも出来ないわけだ。


 そして、僕は病気の元を街中にばらまいた。

◇◇


 ミナージュが望んだ報酬は、999999999999999エンだった。

 グルポと同じ額だ。

 当然払える額じゃなかった。

 だけど、彼女は僕の悩んでる顔を見てこう言った。


「払える時まで待ってます」


 そして、彼女は去って行った。


 次の日。


「行ってしまうのね」


 シヲリが寂しそうな顔でそう言う。


「はい。僕にはやるべきことが沢山あります」


 僕は前しか向かない。


「いつか戻って来いよ。その時は、なっ、シヲリ」

「もう、お兄ちゃんったら」


 顔を赤くしたシヲリがマツヲの肩をパンチした。


「ところで次はどこに行くんだ」

「西の国」


 魔法使いルビーが治める国。

 なんだか、呼ばれているような気がするんだ。


「じゃ」


僧侶の国編 おわり

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