第27話 復讐に必要なもの
「叔父さん。ゆ、許してくれ ほんの出来心だったんだー」
ボロボロになったカズシが、仁王立ちのタケルに土下座している。
さっきまでリーダーシップをはっていた威勢の良さは、もうどこかに吹き飛んでいた。
「反乱などと遊んでいる暇があったら、どうやって国民から金を巻き上げるか考えろ!」
「す、すまねー」
僕はこんな無様なカズシを見たくなかった。
僕は辺りを見渡した。
やはり、カズシじゃ無理だったか。
カズシが倒れても、この人数でタケルに襲い掛かれば勝てるかと思ったが、この兵士の数だとそれも無理そうだ。
すっかり怖気づいたBチームのメンバーの中に、きっと裏切り者がいるんだ。
そいつがタケルにこの反乱のことを密告したんだ。
「グルポ」
僕の後ろに立つ、屈強な角刈り戦士が頷いた。
こんなこともあろうかと、彼を雇っておいたのだ。
実は本当のこと言うと、僕はギルドでカズシと出会う前にグルポと出会っていたんだ。
サチエの能力測定器で彼の攻撃力が9999だったのには驚いた。
僕はすぐに彼を雇おうと思ったんだ。
「俺を雇うには999999999999999エン用意しろ」
当然、その頃の僕にはそんな大金なんて無かったから諦めた。
その後、カズシと組んでタピオカミルクティー屋をやったりスライム狩りで金を稼いだ。
稼いだ金で、グルポを雇いたかったからね。
だけど、彼が欲しい額の金なんてそう簡単に稼げなかった。
そうこうする内に、タケルの圧政が酷さを増して行った。
人々の不満を利用して反乱を起こすなら今かもしれない。
そう思った。
だけど、それは運頼みなところが大きかった。
だから、僕は昨日の夜、ダメもとでギルドにいる彼に声を掛けたんだ。
◇◇
「今は君が欲しいだけの金を持っていない。だけど、僕が将来、大富豪になったら君が欲しい金の倍をあげるよ」
「……」
「だから、力を貸してくれ」
「分かった。今回限りだ」
◇◇
僕とグルポの間には、カズシとの間にある友情なんてない。
あるのは金だけだ。
だけど、グルポの方が強いから信頼出来た。
「『スライムの欠片』の商売をやっている奴は誰だ!?」
カズシがタケルに締め上げられている。
「そ、それは、ケ……ケン……」
カズシが僕の名前を言いそうになっている。
やばい。
僕は思った。
復讐に友情は不要だ。
相手を打ち負かす圧倒的な力さえあればいい。
「やってくれ!」
僕の号令で、グルポがタケルに向かって行った。
次の瞬間、タケルの両腕と両足が吹き飛んでいた。
魔王討伐パーティ一番の戦士タケルは、ダルマになって床を這っていた。
つづく
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