第24話 さよならの準備

 地下室は静まり返った。

 カズシは一体何を怒っているのか?


「ケンタ、お前の目的は何だ? この国の王様になることか? それともお前を追放したパーティのメンバー全員に復讐することか?」


 カズシが僕に問い掛ける。


「僕はグラン達に復讐する。そして、マリナを取り戻す! それが僕の人生の目的だ」


 僕は権力なんていらない。

 僕をこんな目に合わせたメンバーを一人残らず殺し、マリナと結婚する。

 その為だけに生きている。


「お前ら、聞いたか?」


 カズシは皆に向き直る。


「ケンタの復讐はタケルを殺しただけで終わりじゃない。この後も続くんだ。だからケンタを反乱軍のリーダーにしたくない。目立たせたくないんだ!」


 なるほど。

 僕が反乱軍の首謀者になり、東の国の王様になったらその出来事は、きっとグランの耳にも届くだろう。

 そうなると、僕の代わりにスライム島で強制労働しているルキにも迷惑が掛かる。

 それに、僕の素性もバレてグランから命を狙われる。


「だから、反乱軍のリーダーは俺がやる!」


 カズシがそう宣言した。


「いいのかい?」


 カズシは叔父であるタケルや、彼の親父であるタケシに歯向かう気か。


「ああ。俺が反乱軍のリーダーになる」


 カズシはフッと笑った。

 そして、こう言った。


「身内が起こした反乱だ。ただの内紛だとグランも思うだけだろう」

「カズシ......」

「いいんだ。俺はこの国の王様になって、色々変えたいんだ。そしてお前は、ひっそりと旅立つんだ。次のメンバーに復讐するために」


 このままカズシや皆とこの国で過ごしたい。

 だけど、僕は旅立つことを決めた。


「さて、そこで反乱の仕方なんだが......」


 カズシと皆は打ち合わせをし始めた。

 カズシはまず、チームを二つに分けた。

 Aチームは、タケルの城に正面から向かって行く。

 城門の前で圧政に抗議するデモを行わせるのだ。


「で、この地下室から、城内まで続くトンネルを掘っておくんだ」


 デモにタケルの兵が気を取られている間、城内の守備は手薄になる。

 Bチームはトンネルを通って、城内に出る。

 そして、タケルを包囲し玉座を制圧する。


「そして、最後に......」


 カズシは僕に一振りの剣を差しだした。


「タケルを殺すのはお前だ」


 僕には武力が無い。

 カズシは反乱を起こし、タケル城を壊滅させる。

 そして、タケルをボコボコする。

 最後のとどめは僕が差す。

 そんな流れだ。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る