156●『ゴジラ-1.0』の疑問点と続編を妄想推理する。③皇居とGHQはどうなった?

156●『ゴジラ-1.0』の疑問点と続編を妄想推理する。③皇居とGHQはどうなった?




●疑問その3:ゴジラ映画初の珍事、皇居とGHQが壊滅! それで委員会?


 ……『ゴジラ-1.0』で、都心へ進撃したゴジラは、銀座方面から国会議事堂めがけて放射熱線を浴びせます。

 国会議事堂、爆散。「巨大なキノコ雲が立ち上っていた」(P116)とされます。

そして……

 「半径六キロの範囲すべてを破砕」(P115)して、「直径十二キロに及ぶ円状の瓦礫地帯」(P117)が出現しました。


 このあとすぐに海神作戦の説明会に移行(P120)してしまうのですが、ここで重大な事実がスルーされたことがわかります。


 ゴジラの放射熱線が国会議事堂を中心に「半径六キロ」の地域を壊滅させたのですから……


 皇居の全域と、お堀端のGHQ(第一生命館)ビルも、壊滅地帯にバッチリ含まれてしまうのですが、それで委員会?


       *


 これ、ゴジラ映画で史上初の出来事です。

 過去のGさんは、阿吽の呼吸で忖度したのか、畏れ多くも皇居にだけは手を出さなかったのですから。


 初代ゴジラ(1954)では国会議事堂を蹂躙し、銀座和光ビルを時計塔ごと粉砕、日本橋? の松坂屋百貨店を火の海にして、当時の松坂屋社長をカンカンに怒らせたという話もありましたが、皇居だけは寄り道しなかったですね。


 この伝統は長らく守られてきましたが、小説版の活字レベルとはいえ、このたび皇居とGHQが壊滅したのは、史上初の珍事と言えましょう。


 しかも、その事実が物語ではスルーされています。

 誰も話題にしません。ラジオニュースに報道もされません。

 いやもちろん、あらかじめ陛下は御座所を長野県松代あたりに御移しになり、マッカーサー元帥は厚木あたりに避難したということでしょうが……


 ともあれ、皇居とGHQ(ついでに米国大使館も灰燼に帰したはず)を潰されて、マ元帥が黙って観ているはずがありません。

 「駐留軍の誇りにかけて、全戦力をもってゴジラを殲滅せよ!」となるはずです。


 ソ連には内密にしておこう……なんて言っても、都心で小型原爆並みの原子力災害をもたらされたのでは、隠しようもありません。

 むしろソ連はこれを米国のせいにするでしょう。「小型原爆を誤って都心で爆発させたマ元帥のアホー! だって原爆を持ってるのはアメリカだけだもん!」……と。


       *


 都心の壊滅から海神作戦の実施までは、敷島君が震電の機体に出会うまで「数日後、」(P134)の時間を要し、整備員の橘君を探すために各所へ手紙を投函して、橘君がそのことを知るまでさらに数日を要して、それから機体を改造したことになるので、全体で十日ほども、期間が開いたことになります。


 その間、マ元帥とGHQが、何もしなかった?

 そんなはずがありませんね。

 ここが、『ゴジラ-1.0』のさらなる不自然です。


 都心をブッ潰されて、キノコ雲が立って、放射能ムンムンの廃墟……つまり、ヒロシマ&ナガサキの再来としか言えない惨状を招いてしまい、同時に皇居とGHQビルまで瓦礫の山にされてもなお、「大陸のソ連軍を刺激する恐れが高く」(P121)という、モヤモヤした具体性のない理由で、マ元帥とGHQが手をこまぬいているのは、さすがに、あり得ないと私は思います。


 しかも、海神作戦の開始まで十日ほども沈黙し、結局、民間日本人の海神作戦に依存するしかない……という情けない体たらくは、マ元帥にとって耐えられない屈辱でしょう。

 駐留米軍ここにあり、全軍出動! となったはずです。


 そこが、『ゴジラ-1.0』では全く説明されていません。

 まるで、マ元帥とGHQの存在を、何とかして最初から無かったものにしたい、つまり、黙ってシレっとスルーしたい……と意図されているかのようです。


 これには、なにか深い理由があるはず!


 これ、『ゴジラ-1.0』の最大にして根本的な謎であり、多分に意図的な演出であると思わざるをえません。


 考えられる理由は……

 『ゴジラ-1.0』は、本来のゴジラ映画ならば、ゴジラとガチで対戦しなくてはならない必要があった、ということです。


 なんとなれば……

 後々の章で詳述します。




    【次章へ続きます】






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