07●『未来少年コナン』(6)メカのリアリティ…続“白亜の美艦:ガンボート”
07●『未来少年コナン』(6)メカのリアリティ…続“白亜の美艦:ガンボート”
●最大の謎、“一枚舵”、そして沈没原因
さて筆者にとって謎なのは、ガンボートの艦尾のスクリューが二軸あるにも関わらず、舵が中央一枚だけ、ということです。
常識的には、この程度の小型艦では、二軸のスクリュープロペラそれぞれの直後に一枚ずつ、計二枚の舵を設置するのが主流です。
そうすることで、舵の利きをよくして、より小回りで旋回するなど、運動性を高めるメリットがあるからです。
舵はやはり、二枚あるべきではないでしょうか。
さて気になる謎は、ガンボートの撃沈原因です。
後部の甲板上に置かれたガルおじさんの樽爆弾の爆発によるものであることは明らかですが、通常、徹甲弾が落ちたわけでもない、甲板上の爆発だけでは爆炎が上空に拡散して上部構造物に被害が及ぶにとどまるだけで、水線下にまで破壊が及ぶケースは少なく、沈没までは至らないと思われます。
それでも沈没したのは、謎であります。
考えられる要因としては……
ガルおじさんの樽爆弾が只物ではなく、甲板に吸着する成形炸薬弾であった……というケースです。
ガルおじさんは年齢的に、“大変動”前は軍で爆薬を扱う工兵部門にいたことも考えられ、専門知識を駆使して、手作りで成形炸薬弾を製造できたのかもしれません。
そうすると、爆発時に高温のガスジェットを甲板下にほとばしらせ、それが後部57ミリ砲の直下の弾庫に到達、予備の弾薬を誘爆させたということではないかと思います。
にしても、その樽爆弾を最初の設置場所であるスクリュー軸から取り外してきたガンボート乗組員は、凄すぎます。
だって夜の海中ですよ。何も見えない。しかもパンツ一丁に近い無防備な姿で素潜りですよ。
そのうえ、いつ爆発するかわからない爆弾を、そのまま海底に捨てずに持ってくるという神経のずぶとさ。
ついでに、甲板まで持って上がるように命じる、呑気な艦長さん。
だってここは外海です。
出航して「あれから一時間」と言っているのですから、海岸から数キロから十キロは離れているはず。
相当な水深であるはずです。
だから爆弾は即、海中投棄ですって。さっさと捨てなくちゃ。
それでも引き上げたのは、よほど爆弾を可愛がるお人だったのでしょう。
ガンボートのクルーたち、体力はあってもどこか抜けている、変人揃いだったのかもしれません。
沈没要因の最たるものは、乗組員のヘンテコ(一見マジメでオマヌケ)なパーソナリティにあるというのが真実ではないでしょうか。
●目測の砲撃
とはいえガンボート。
76ミリ口径の主砲を発射するシーンは、鳥肌的にリアルでした。
イメージとしてはイタリアのオート・メララ社製76ミリ速射砲。
ただし空薬莢は
しっかり再利用を考慮しているのですね。
にしてもバン、バン、バンと連射していくあのタイミング、シビレますね。
遠距離からバラクーダ号を狙うときと、至近距離で海岸のオーロたちを掃討するときで、それぞれ発砲と着弾の間隔に差をつけているところも、こまやかな演出です。
それに、バラクーダ号追撃戦の場面。
夜間の海戦ですね。
これも素晴らしい演出、発砲の閃光に、水中爆発の水柱とその中の炎の表現、連絡艇が撃沈される場面の水上火災など、光と炎の視覚効果が秀逸です。
闇に包まれた戦場で、絵的に見どころがなさそうなところを逆手にとって、閃光と爆発に照らされて船や人々が浮かび上がる光学的効果が、恐ろしくも美しい場面をつくりあげていました。
ガンボートの砲撃、レーダーが使われていません。
というのも第7話で、バラクーダ号がうっかり舷窓をちらりと開けてしまい、かすかに漏れた光の点を目視することで、ファルコがバラクーダ号を発見しているからです。
つまりファルコは捜索レーダーを搭載していない。というか、先に述べましたように、そもそも電波探知が難しい自然環境ということなのでしょう。
ファルコからガンボートへの無線連絡も距離的に困難なようで、ファルコは報告のためにガンボートの方へ飛び去って行きます。
ということでガンボートも同様に、備えてある電波装置は短距離無線くらいで、射撃用レーダーなどは最初から設置していないと考えられます。
ですからバラクーダ号への射撃は目視で照準しており、たぶんポータブルな暗視装置付きの
ハイハーバーへの艦砲射撃も見事でしたね。
ハイハーバー砲撃で、村に向かって着弾がじわじわと近づいていく場面。
ヤらしいほど狡猾で不気味ですね。いびり感覚満載です。
あれもレーダー射撃ではなく、おそらく山側に潜んでいるモンスリーが
まさにモンスリー的な攻め方でした。
デザイン的にちょっと感激したのは、ガンボートの露天艦橋の手すり部分にU字形にめぐらされた遮風装置。
作画上、めんどくさいでしょうが、よく描き込んで下さいました。
手すり状のあのスリットを使って、前方や側方から吹き付ける風を上方へ曲げて、屏風のようなエアスクリーンを作る仕組みなのです。
そうすることで、艦橋上の人物が周囲の海面から受ける風圧を和らげます。
やはり、あるとないでは大違いですから。
嗚呼、ガンボート。哀れなる獰猛な白亜の美艦。
悪役メカのまま海の藻屑と消えるには、あまりにももったいない美しさでした。
もって瞑すべきでしょう。
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