第45話 3カ月
カツラギがこちらの世界に来てから、もう三か月が経過した。
少しずつ、この世界にも慣れてきたところだ。
ふたりで同じ部屋の、違うベットに寝る。
ただ、ここだけが未だに慣れていない。王の吐息や寝返りの音、何気ない行動のしぐさ、すべてにドキドキしてしまう。おかげで、少し寝不足が続いている。
彼は毎朝五時に起きる。
魔術の修行をするためだ。
女を起こさないために、いそいそと部屋を抜け出していき、中庭で二時間の練習をこなす。
時折、カツラギは早起きをして、その様子を窓から見つめている。
精神統一をして、一心に魔術の修行をする彼はとてもかっこよかった……。
そして、ふたりは、七時に合流するのだ。一緒に朝食をするために。
そこからカツラギは、王妃として振る舞うのだ。
なるべく、気品があるように振る舞い、ねこを被る。
王と宰相が仕事をしているときは、基本的に彼女にやることはない。
畑の管理や大臣たちに元の世界の話をしてアドバイスをするくらい。
あとは本を読んだり、アンリとお茶をしたりして過ごす。
アンリはほんわかしたタイプなのに、時折、鋭いことをいうのだ。
「王妃様は、陛下のどこが好きになったんですか?」
とか
「陛下たちのお子さんができたら、きっとかわいい子になるんでしょうね~」
とか。
とても反応に困る話題を振られてしまう。
まるで、宰相のような、鋭さだ。
彼女が何度、お茶を吹き出しそうになったか、わからない。
小さい頃は憧れた王妃様という生活だが、実際にやってみると……。
気が疲れてしまう。
少しずつ、ストレスがたまってしまうのだ。
どこかに遊びに行きたいなんて、お茶をしながらアンリにこぼしたのが、いけなかったのだろう。
事件は夕食の時に起きた。
いつもの三人での夕食。
そう、あの発言が出るまでは……。
彼は突然、口を開いた。
「そうだ、おふたりとも!」
わたしたちは、嫌な予感で、体が固まる。
「もうすぐ、暑くなってくるので、別荘で夏休みをとってきてはどうですかね?新婚旅行も兼ねて」
あっ、寝不足が悪化する。
そう確信して、彼女たちは顔を見合わせた……。
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