第85話 まさかの襲撃

 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!


 突然、大きな爆発音がこの場一帯を包み込む。爆発音は空からするようだ。

 あわてて上空に俺たちは視線を移す。



 グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


 この場一帯に届く咆哮音。



 醜い外観に、その肉体から放たれる真っ黒い光。

 恐らくはホロウなのだが──。


「何よこいつ、こんなに巨大なホロウ、見たことがないわ」


 レテフのいい通りだ。一言で言うとこのホロウ。今まで見てきたどんなホロウよりも巨大だ。

 大きさで言うと20メートルくらいか──。

 それもただでかいだけではなく纏っている魔力も今までとは比べ物にならないほどだ。


 通常のホロウの数倍はあるだろう。



「サナ、レテフ。と、とりあえず戦わなきゃ」


「そうね」



 そして俺たちは変身をして魔力を纏った形態。「魔装状態」となる。


 その瞬間ホロウの口が開き、真っ黒い輝きをともし始める。


「まずい、光線を撃とうとしているぞ!」


「みんなで迎撃しましょう」


 レテフの言葉通り俺たち3人はホロウに向かって自身の武器を向ける。

 そしてありったけの魔力を込めてその口に向かって攻撃を解き放った。


 それに合わせたかのようにホロウの方の光線を解き放ってきた。

 両者の攻撃は激突し大爆発を起こす。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!



 両者の攻撃は互角といった所。


 しかしこっちの魔力だって限りがある。こんな全力の一撃、何度も放てるわけがない。


 ──がホロウがどこまでこの攻撃を放てるかは不明だ。



 今まで見てきたどんなホロウよりも強い。


 俺達がどういう手を取ればいいか考え込んでいる間にも、ホロウは次々に街を破壊していく。


 仕方がない、戦おう。戦っていけば相手の弱点がわかるかもしれない。

 そう考え、剣を強く握りしめたその時、後方から聞き覚えのある声がした。



「おいおい、そんなことで今の私に勝てると思っているのかね!」


 背後から誰かの声が聞こえだす。

 黒くて長髪のポニーテール。あの魔法少女はまさか──。


 さらに誰かがこっちに向かって叫んでくる。


「見つけたぞカグヤ」


 その直後に現れたのはユピテル。それだけじゃない、カグヤの名前を口にした

 するとユピテルは今までのいきさつの説明を始める。


「さっきまでこいつを追っていた。街で見かけたとき、闇の力のオーラがしたから『この力は何だ。説明しろ』といったとたんこいつを召喚し始め、今に至っている。一緒に戦ってくれないか?」


「ほ、本当かその話……」


 ユピテルの話に衝撃を受ける俺。

 先日俺はカグヤと戦った。


 あの時は真剣勝負だったのから互いに死力を尽くして戦っていた。


 けれど、堂々とした態度の騎士という雰囲気で悪いやつという感じではなかった。

 それに、よく見てみると以前とはどこか雰囲気が違う。


「カグヤ、何があった。以前の貴様とは、他人と思ってしまうほどの変貌だな」


 ユピテルも、そのことには気づいているようだ。


「気が付いたのだよ。貴様に敗北し、アグナムに敗北し。そんな絶望に明け暮れている中で──」


 目つきがまるで違う。先日俺と戦った時とは。

 以前は、優しく紳士のような堂々した目つきをしていた。


 まるで獣の様な目の前の敵をとって食おうというような目つき。

 あれは、覚悟が座った目だ。


「今まで私は、相手をリスペクトして騎士道を守り正々堂々と戦い勝利する。そんな自分の戦いをすることができればそれでいいと思っていた。しかし、それは間違っていた」


「確かに、お前は闘技場でも、どんな場所でもやることは変わらないな。からめ手を使わず


「どんな手段を使っても、どんな邪悪な力を使ってでも、貴様たちに勝つという覚悟だ」



 その光景を見て一番黙っていられないのがサナだった。


「私たちの街を、壊さないで!」


 当然だ。サナにとってはこの街は自分の故郷だ。それをここまで破壊されて、黙っていることなどできない。


 激怒したサナがカグヤに立ち向かっていき、その剣をふるう。しかし──。



「なんだそのお遊戯は。そんな攻撃では私に触れることすらできんぞ」


 サナが放った剣をカグヤは、落ち着いた様子でぬるりと交わしていく。

 その間にもカグヤが放った竜巻は威力を増していき、周囲の建物が次々に破壊されていく。


 その光景にサナの表情が深刻なものに変わっていく。


「さあ、私を許さないのだろう? さあ来たまえ。この街を守るために!」


「許さない。絶対に倒す!」


「待ってサナ。怒る気持ちはわかる、けど相手はそれを狙っている!」


 怒りに震えていたせいか、見え見えの挑発にサナは乗ってしまう。


 確かに街は守らなければいけない。けれど相手の策に引っかかったら余計に事態は悪化してしまう。




 理性は剥がれ落ち、感情をむき出しにして攻撃を続けるサナ。


 突き、切り下し、なぎ払い──。


 何度も、魔力配分も、駆け引きも、戦術もなく力の限り攻撃していく。

 しかし,攻撃はかすりもせず、ただ体力を消耗しているだけだった。



 サナがの攻撃が全く聞いていない。どうして自分の攻撃がかわされてしまうのか。

 そんなことを考えている


 カグヤはヒョイとジャンプすると彼女の肉体がホロウの頭上まで飛び上がり、頭上に座る形で俺たちを見下してきた。



 サナは無茶な連撃で体力を使いつくし、疲弊し膝をついてしまった。



「サナ、大丈夫? 危ないから下がってて!」


 サナなしで戦うというのは正直きつい、けれど、それ以外に道はない。


 するとカグヤはまるで野獣の様な鋭い目つきをして俺ににらみつけてきた。

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