第4話 最強の魔法少女「勇者」ユピテル

「サナ、もう試合始まっているんじゃないのか?」


「えっ? 多分選手紹介だと思うよ。試合なら爆発音とか聞こえているはずだし」


 選手紹介、戦いだけではなくエンタメ性もあるのか。ちょっと興味あるな──。

 そして少し長めの道を抜け、闘技場の中に入る。


 中は俺達の世界で言う野球やサッカーのスタジアムに似ている。中央はで2人の人物がにらみ合っていて、対決するということが分かる。



 1人は、腕を組みながら相手を睨みつけているオレンジの肩までかかったセミロングの少女。

 もう1人は同じ年くらいで黒髪のロングヘアの少女。


 お互いが対峙する形でにらみ合っている体勢。そしてそれを取り囲むように観客席があり、満員に近い形で観客達が所狭しとひしめいている。


「うん、これから試合が始まるみたい。とりあえず、簡単に説明するね」


「あのオレンジの髪をした女の子。名前はユピテル。通称「勇者」って呼ばれているの」


「勇者? ずいぶん強そうな名称だな、やっぱり強いの?」


「うん。この街ではね。一番強い魔法少女を「勇者」って呼んでいるの。その名の通り、彼女が今この街で1番強いの。あらゆる実力者を圧倒的な強さで打ち破って、今あの座についているの」


 すると中央にいた騎士の格好をしたレフェリーが「試合開始」と叫ぶ。

 その瞬間ユピテルが黒髪の少女に向かって大きな声で話しかけた。


「挑戦者、まずは貴様の全力で挑んでこい。俺が見極めてやる、その強さを!!」


 するとユピテルは仁王立ちになり静観し始めた。


 黒髪の少女は圧倒されたような表情をしながらも右手をユピテルに向ける。そして──。



 黒き輝きの力よ、我が道を示す弓矢となり、遮るものを打ちぬけ!!


 ソウル・ビート・スターライト・インティーナ




 彼女がそう叫ぶと、ピンクと白をした弓矢が出現し始める。綺麗さとかっこよさを兼ね備えた洗練されたデザイン。



「魔法少女はね、戦うときは変身するの。自分の体内に存在する魔力エネルギーを出して、それぞれの固有武器を召喚して戦っているの」


「あとは、変身ってするの?」


「うん。変身して自分が1番魔力を出力しやすいコスチュームになるの。コスチュームはそれぞれ違っていて、それぞれ100人いれば100通りの姿になるよ」


「やっぱり魔法少女といったら変身するのか……」



 サナの言葉通り、彼女の体が光り始める。つまり、変身シーンということだ。

 光り出した彼女の体、元々来ていた服が光の粒子となり、代わりに白と黒を基調としたコスチュームに変身した。


 彼女の姿は、胸元にリボンが付いたゴズロリメイド服風のコスチューム。メイド服風だが、肩の部分はワンピースのようになっていて露出した肩がとてもセクシーに映る。



 おおお、魔法少女といったらこれだよな!! 綺麗な服装に可憐な武器。そして可愛い変身シーン。

 何かわくわくしてきた。

 上品さとかわいさを両立した素晴らしい姿をしている。


 そしてユピテルの方も変身を始めた。


 王者の波動・今世界を貫く剣となる・大いなる力、魂に刻め!!


 スイート・オレンジ・クロージング・ソウル


 体がさっきのように真っ白に光り始める。


 オレンジと緑を基調としたローブ姿。下のズボンは短パンの様に短く、太ももと足のラインがよく見える。ラインが見える。


 ローブ姿も、ファンタジーもののローブにフリフリの飾りや、リボン、などか追加された雰囲気で、ファンタジー風魔法少女といった形だ。

 こっちはかっこよさ、強さと美しさを両立したデザインだ。


 両方とも、方向性が違っても着る人にとても合ったデザインだと思う。


「とりあえず説明するね。2人を包んでいる白いオーラみたいなのが魔法ね。あの状態を魔装状態っていうの。あの状態だと剣や槍みたいな凶器で刺されても魔力で体をガードされて出血しなくなるの。痛みまでは、防げないけど」


「つまり、普通の武器じゃ倒せないってこと?」


「そうだね、後魔法はその人物の体内に一定にあるものなんだけど。使いすぎると燃料と同じで切れちゃって回復するのに時間がかかっちゃうから、使い方も気をつけてね」


 魔装状態の魔法少女は魔法少女でしか倒せない、魔力はガソリンや灯油と同じで使いすぎると無くなってしまう、計算して使うってことか。

 



 そんな事を話しているうちに、黒髪の少女は黙って仁王立ちしているユピテルに、圧倒されながらも攻撃を始める。



 少女が弓矢に魔力を込め、その矢をユピテルに向かって放つ。そのオーラはすさまじいものがあり、魔力で覆われているのが分かる。


 放たれた矢の攻撃に対して、ユピテルはよける動作をしようともしない。ただ右手にある剣を振り上げる。そして攻撃が接近すると、その弓矢に対して1振りあびせ、撃ち落としたのだった。


 ズバァァァァ────!!


「えっ……」


 その動作に茫然とする少女。ユピテルは全く動じず、平然としている。

 そして周囲に視線を向けながら叫び始める。



「勇者の戦いは、3つのフェイズが存在する」


「1つ、勇者は相手の能力を最大限まで引き出し、観客の興奮を集める。


 2つ、勇者は相手の最大限の攻撃を正面から受け止め、観客を魅了する。


 3つ、勇者は圧倒的な力で相手を撃破し観客のカタルシスを掴む!!」



 その叫び声に周囲はさらに盛り上がる。あの魔法少女ユピテル、人の心をつかむのもうまいんだな。


「最初っから勇者が全力でかかったら、1撃だ。勇者のバトルは周囲を魅了する者でなくてはならない!!」


「さあ、ユピテルの本気が来るぞ──」

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