第119話 最後の一撃
スッ──。
後方からの物音に幸一達の背筋が凍り始め恐る恐る背後を振り向き始める。
それはあり得ないはずの光景。
「ペドロ、貴様負けたはずでは??」
「恐らくは与えられた力でしょう。強すぎる憎しみと結び付きてしまい暴走してしまったのです」
国王の疑問にアーネルが淡々と答える。初語龍の力は持ち主の心を強く反応してしまっていると。
そして初語龍の力が、ペドロの肉体を乗っ取っているというのだ。
すでに彼女の意識は無い。与えられた力によってすべてを支配され、その力に燃料を供給するだけの部品にすぎない。
そしてその力が尽きればボロ雑巾のように使い捨てられるのだろう。
「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
強い雄たけびを上げ襲い掛かる。幸一は国王とイレーナの前に立ちはだかり攻撃を受ける。
鋭く空中を切り裂く攻撃を剣で縦に受ける。
カァァァァァァァァァァァン!!
「ぐぁっ、何だこれ──」
直後すさまじい衝撃が幸一の剣を叩きつけた。先ほどまでとは比べ物にならないほどの強い威力。
何とか踏みとどまったものの全身を強くたたきつけられるような感覚に身体が固まり足が止まる。
足をとめた幸一に追撃が襲う。幸一は残りの魔力を振り絞って何とか攻撃を受けきる。信じられない破壊力。
まともにくらったら勝負はすぐに突いてしまうだろう。
そんな恐ろし想像をしながら幸一は何とか必死に迫る斬撃を打ち払う。
しかし──。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「幸君!!」
とうとう攻撃を受けきれずに直撃をしてしまう。吹き飛ぶ幸一の体。イレーナがそれを見て思わず叫ぶ。
何とか受け身を取り着地をしたものの彼の中に迷いが生まれた。
(強化されたこいつに、勝つことができるのか……?)
圧倒的な力、こっちはすでに戦いで疲弊。どう戦っていいか迷いが生まれる。
その時、幸一の前から大きな声が聞こえた。
「もうあんたたちに、惑わされなんかしないわ!!」
レイカであった。彼女はペドロが先ほど倒れた時から意識を取り戻していた。そして本当に今自分がなすべき事に気づきたちあがっていたのだ。
そして目をつぶり始め精神を集中し始める。そして──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
「俺に、力が──?」
「私にも……」
魔力の大半を使い切っていた幸一とイレーナに再び魔力が灯っていくのを感じた。恐らくはレイカの力だろうと幸一が予想する。
「私は出来るのよ、長くは持ちそうにないけど、使って」
「わかった。お前の想い、無駄にはしない」
「私も、絶対勝つからね!!」
レイカは自分の魔力を他人に供給することができるのだった。その力を今使った。そして二人は少し打ち合わせをした後再びペドロに立ち向かっていく。
まずは幸一が先陣を切って相手をする。一気に間合いを詰め接近戦に入る。
互角の戦い、だが先ほどまでとは違う。
「力任せ、まるでイノシシだな──」
「黙れぇぇぇぇ!! 消えろォォォォォォォ!!」
確かに圧倒的な力を得る事が出来た。しかしその力に先ほどまでのような老獪さや経験深さは無くなっている。
まるでイノシシのように力を一直線に感情のままに振りまわすだけ、幸一はレイカによって与えられた力で反撃を行う。
(だったら、こうすればいい──)
一瞬イレーナの方向を向いてアイコンタクトを取る。
互角の接近戦からいったんバックステップで距離を置いた。そして──。
涅槃なる力、今世界を轟かせる光となり降臨せよ!!スピリッド・シェイブ・ハルバード
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
二人の全力の術式が衝突し爆発する。
互いに放った攻撃は消滅、相打ちとなる。
「ハハハ……、その程度か? ならば行かせてもらうぞ!!」
「ああ、だが勝負を決めるのは俺じゃない!!」
スッ──。
ペドロの背後から一人の少女。正気を失ったペドロはその正体に気づかない──。
イレーナはその想いを槍に込める──。
そしてイレーナの勝負を決める一撃。
時空を超える力、今敵をせん滅する力となり、その閃光貫け
ヘリオポーズ・イクシオン・ブラスター
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
イレーナが我を失ったペドロに最後の一撃を加える。
ペドロに肉体は10メートルほど吹き飛んだ後地面に叩きつけられ倒れこむ。ぐったりと倒れ込み動かない。
「勝負、今度こそついたね」
身体から魔力が消えていく。幸一が慌ててロープを取り出し拘束。
拘束が終わるとペドロがうっすらと瞳を開け始める。もっとも魔力は残っていないので戦うことは出来ないが。
虚ろな目をこちらに向けながら彼女が話しかける。
「ふざけるんじゃないよ。私は貴様らに復讐するんだ!!」
「ひと泡吹かせなきゃいけないんだ。あたしらに理不尽な目にあわせた王族どもに!!」
怒りの感情が彼女の胸の中を煮えたぎらせる。幸一を見ながら、憔悴しきった目で訴える。
自らの恵まれない過去を思い出しながら──。
「どういうことだ?」
「結局私らはまともに生きる道なんてなかった……」
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