第12話 ユダとの会話

「え?え?え~~~~~~?? ずっと、手をつないでいなきゃいけないって!!!!」


「いやああああああああああああああああああああああああああああああ」


 頭を抱えて、発狂したようにイレーナが叫ぶ。


 その後のサラの話なのだが、回復の速さを調べた結果、普段は昼間に手をつなぐだけで大丈夫のようだ。

 が、魔王軍の襲撃があった夜などは寝ながら手をつないでおかないと、回復が間に合わないらしい。



 今日もさっきまでの幸一とのテストマッチでかなり魔力を使ってしまったため、何かあった時のために魔力を回復させて欲しいとい言う。


「何とかお願いします。何かあった時のために魔力を回復してほしいんです」


 イレーナはサラが気弱な正確に見えて、ここぞというときは絶対に引かない性格だという事を知っていて、仕方なく首を縦に振る。



「わ、わかった……」


 イレーナは涙目になりながら何とか了承。

 その後、三人は宮殿に帰って行った。







 その夜、イレーナは入浴していた。


 この年代にしては男性だけでなく、同性までもがうらやむボディ。胸は片手でつかみきれないほど大きくそれでいて、くびれはしっかりとしていた。

 太ももは一般的な同い年の女性と比べると少しむっちりしているが、それがまた情欲を掻き立てる。


 真っ白な肌を熱いお湯が流れていく。暖まった体はほんのり赤く染まっていた。

 そして、身体を洗い終え入浴を始めながら、今日の事を思い出す。


「幸一君かぁ、あの時私──」


 自分の過去、その怒りに身を任せ周りを見ていなかった。

 しかし幸一は初めての慣れない戦いでも、周りの自分が傷つくのをためらわなかった。

 そして周りも、自分の事も思って助けていた。


「私のこと、守ろうとしてくれたんだ。あんなひどく扱っていたのに……」


 確かに模擬戦としてはイレーナが勝っていた。しかし一般人を守る存在として、国を守る兵士としては完全に負けていた。

 しかし、どこか嬉しさを感じる事がイレーナにとって不思議だった。


「ふぅ──、なんか変な気持ち」


 湯船の中でイレーナはつぶやき始める。

 身体はあったまりほんのりとほほを赤らめ、胸の奥から高鳴りがするのを感じていた。


「意・外・と・頼・り・に・な・る・か・も・…・…・」


 彼女は感じ始める。

 女性としての本能が彼を欲しているということに──




 その後、就寝の時間となり、幸一は普段サラが寝ているベッドを借りて、イレーナの隣に寝ることになっていた。ベッドは五十センチほど間が空いていてそこにブリッジのようにして、二人の手をつなぐ事となった。

 たがやはり一緒に手を握って寝るには抵抗が強いようで、ジト目で幸一に釘を差す。



「こっちのベットにぜーーーーーったいに来たりしないでね!! もし来たら幸君の身体を八つ裂きにするからね!!」



 イレーナが強い口調で叫ぶ。幸一はその迫力に何も言えずただ従うしかなかった。


 そして二人はそれぞれのベッドにつく。


(そう言えば明日は金曜日だった──)


 布団にもぐりながら幸一は、明日のことを思い出す。明日は金曜日でユダが来るという事を。先週は用事があったらしく来れなかったと手紙が来たが明日は大丈夫のこと。


 どんな話をするのかと考えながら幸一は夢に中に入っていく──。





 深夜、突然幸一の目が覚める。


「な、何?」


 夜、ベットの上、幸一は何かがのっかった様な感覚に襲われる。

 よく確かめるとそれは柔らかくそれなりに重量がある。布団の中の温かな感触。

 鼻には髪の毛のようなものがかかっていて、それがどことなく甘い香りをしていた。



「ようお主、それとも期待しておったかのう、」


 ユダだ、彼女が幸一に覆いかぶさる体制で耳打ちすると、幸一は驚いて息をのむ。


 それも最初にあった時とは違い黒いワンピースに紫のミニスカートと露出度の高い服装。

 露出度が高い服のせいか胸元がはだけている。

 それが幸一の情欲を誘いドキッとしてしまう。

 その事に気付とっさに悲鳴を上げようとした瞬間、ユダはその手ですぐに口をふさぐ。


「騒ぐでない、またイレーナ殿に気づかれて起こられるぞい、あ!!それがお主の目的であったかそういう性癖なのか」


 と実に楽しそうな笑みを浮かべていた。


「んなわけないだろ、一体何しに来た?」


 味方ではあるのだが彼女にはどこか油断できない緊張感があった。その妖艶な笑みは何か意味を含んだように幸一には見えていた気がしていた。ユダはその質問に何の迷いもなく答える。


「何って金曜日じゃ、わしが来る日なのは教えたろうに」


「え?でも今日は木曜日って」


 幸一は今日の日付を思い出す確かに今日の曜日は金曜日のはずだった。この世界に最初に来た日は三日前、そこでサラは確かに月曜日だと言っていた。日付の記憶は覚えているし記憶違いでもない。そう考えているとユダがさらに一言──。


「今日付を回ったところじゃ、もう金曜日の1時じゃ」


 幸一はそういうことだったのかと納得する、さっきまで木曜日だった。それで日付を回ったのだから金曜日にはなっている、一本取られたと思い頭を抱えるとユダに対する抗議の言葉が幸一の脳裏によぎってきた。


「あ、そうだ、思い出した。この世界に来た時何でイレーナにあんな合わせ方をしたんだ? あいつに誤解を解くのにどれだけ苦労と思っているんだ?」


 それはもちろんあの浴室のテレポートのトラップ。

 おかげでこの世界に来てそうそう変態のレッテルを張られてしまった。サラが誤解を解いてくれなかったら牢獄に入れられ犯罪者になってもおかしくなかった。


「ひょっとしてもっと年上がよかったか? それとも幼女とやらが好みなのか?」


 罪悪感の欠片もなくはやし立てるような物言いで、ユダはさらに言葉を進める。


「天国じゃったろう?すぐに地獄に変わったじゃろうけど!!」


(こいつ……)


 この天使は本当に信じていいのか? そう考えながら幸一は今までの出来事を話した。

 イレーナとの関係が(当然ながら)険悪になったこと、テストマッチの名目で戦うことになっていた事、だがそこで何者かが襲ってきてイレーナを助けたことも。


「正直お前のせいで最悪なスタートだよ──」


 ため息をつき、ジト目でユダをにらみながら愚痴を漏らす。


(冗談抜きで緊張するよ、同い年の女の子と2人っきりだなんて、おまけに雰囲気も良くないし──)


「でも最後イレーナを助けたのだろう……、だったらこれから高感度が上がるかもしれないぞ」


 ユダのその言葉に全く浮かれることもなく、幸一は隣のイレーナに視線を移しながら言葉を返す。


「いや、あのくらいで帳消しにはならないだろ。相当怒ってたし、見せものにしようとしていたし」




「イレーナはああ見えてもまじめで自分が強くなることに一筋、当然交際経歴もなく男に免疫がなくてのう……。だから恋愛方面に全く免疫がなくてのう。

 あんたみたいな男にぐっと押しこまれたら、顔を真っ赤っかにしてお主にべた惚れしてしまうかも知れんぞ~~、うりうり~~」


 ユダはにやにやと笑いながら幸一の心臓をつっついて話を進める。その言葉に幸一は──。


「そんな非現実的な願望はもってねぇよ、そうそううまい話があるかよ」


「ま、それが本当かどうかはすぐにわかるじゃろ、わしはこれから用事があってのう、今日はこの場を去るぞ、じゃまた来週のう~~」


 そう言ってユダは手を振ると、パッと一瞬でいなくなってしまった。


(まあ、そんなわけないよな──)


 幸一は再び隣のイレーナの寝顔をじっと見ながら、再び睡眠につくため眼をつぶった。



 これからどうやってイレーナと接すればいいのか、そんなことを胸に抱えながら……

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