第13話 初めての仕事は?

 翌日、ギルドに到着した三人。


 イレーナとサラは、すでに張り出されている仕事の内容をじっと見ている。

 薬草集めに動物のハンティング──。


 三人でどうしようか考え込んでいると、入口の方から誰かの声が聞こえた。


「イレーナさん、お願いがあります私の親友を助けてください!!」


 突然後ろの方から、いたいけな少女の叫び声が聞こえる。その声に三人が振り向く。

 その少女は体が震えていて、涙目になりながらイレーナに向って事情を伝える。


 その少女は茶髪のショートヘアーをしていてレイと名乗り茶色の首輪をしていた。

 彼女がどこか必死な様子で幸一達に向かって願いを話す。


 何でも知り合いのローザンヌという人が知らない宣教師によって、魔女と宣告され生贄にしなければならないとされてしまったのだと。


 また、幸一は二人がどんな力を使うかを聞いた。


「私は水に関する力です、具体的に言うと鉄砲状に水を生み出して攻撃をしたりします」


「ローザンヌは物をテレポートさせる魔法です。しかしまだそこまで使いこなせているわけではないようで巨大な物は動かせず、生き物もまだできないらしい」


 そんな会話をしながら歩いていると、そのエリアに近づくにつれて幸一達はとある事に気付く。


「何か悪臭がひどくないか?」


「確かにそうですね」


 幸一の言葉にサラも同調する。イレーナも首を縦に振る。レイもそれはわかっていたようで──


「確かにそうです。最近この辺り変なにおいがするんですよ。でもこの辺りって奴隷であったり身分の低い亜人が住んでいる地域で、政府の人は関心が無いようで何もしてくれません」


 さらにレイが、話を進める。


「あの地域で奇病が流行しているみたいなんです。激しい下痢と脱水症状、朝元気だった人が夕方には亡くなっていることもあるようで、街はパニックになっていました」


「その中で原因を神の怒りと考える者が現れ、市民達を誤った方向へ誘導するものが現れました。あの宣教師と名乗る者です」


 そして街の中心部の広場にたどり着く。すると柱に縛り付けられている、紫のショートヘアの少女。


 そこで演説している人を見かけていた。白いフードをかぶった宣教師を名乗る人物だ。


「この魔女が神を怒らせ、このような奇病を生み出したのだ、この女を生贄にしなければ神のさらなる怒りが私たちを襲うであろう!!」


 その言葉にイレーナがカッとなって反応し、接近。他の三人も後に続く。


「神様の怒りを鎮めるためだ、この魔女が魔道などというわけのわからん力を使ったせいで神様が怒っているのだ。

 だからその怒りを鎮めるためにこの魔女を生贄にしなければならないのだ」


「生贄なんて、ひどい!!」


 イレーナが感情むき出しになり、突っかかろうとする。場合によっては魔法の使用も使おうとしたその時──。


「やめろ──」


 手を出そうとしたイレーナを、幸一が手を出してストップをかける。



 幸一の世界でもそういうことはあった。彼の世界でも病原菌や有害物質の概念が発見される前は原因の分からない病気を神様の怒りだと考える事が当たり前だった。

 向こうも生死がかかっている以上本気であるため、武力で押さえつけても相当強い抵抗が来ると予想できる。


 幸一がニヤリとした表情で話しかける。


「宣教師、俺と賭けをしないか?」


 周りの空気がざわざわとしだす、炎の唯一王の登場に回りがざわつく。


「もしこの奇病が治らなかったら俺が代わりにいけにえになる」


「だがもしこの奇病が収まったらお前が代わりに生贄になってもらう、どうだ?」


 宣教師は回りをみて無下に意見を強行しない方がいいと悟る。そして━━。


 「わかった。その意見、飲もう」


 仕方なしにローザンヌを縛っていた縄を持っていたナイフで切り落とし、解放。


「あ、あ、あ……ありがとうございますぅ──。私、本当に怖かった──」


 涙目になりながらローザンヌは頭を下げる。生贄にされる恐怖感と一人で戦っていた。その緊張が解けたのだからそうなるのも無理はないであろう。

 そんな彼女にイレーナが気になったことを質問する。


「でも魔法を使えるのに、何か抵抗しなかったの?」


 イレーナはそれが疑問だった。魔法を使って抵抗すれば、少なくとも魔法を使えない奴らに負けることはないからであった。

 ローザンヌは複雑な表情をして言葉を返す。


「私、攻撃の魔法が出来ないんです、物を運ぶだけでたいして役に立たないし重たいものも動かせませんし──」


 ローザンヌの魔法では攻撃ができないなので、宣教師とその側近たちに対して立ち向かえず拘束されてしまったのだという。


「そうなんだ……」


 同じように戦いに向いていない魔法を持つサラが共感する。自分だって彼女のような立場になったらどうする事も出来ないのだから──。


「とりあえず患者達の所へ行こう、どんなことが起きているのかこの目で確かめる必要があるからね……」


 幸一はそう話しながら街を歩き始める、そしてレナの誘導により患者達が集まっている病院に──。

 病院と言ってもベッドがそこらじゅうに置いてあるだけの簡易的なものであったが


 いずれも奴隷や亜人など身分が下の人達であった。

 病気の人達の特徴を一人一人調べ始める。すると一人抱け、興味深い人物がいた。


「どうしてわざわざ近くの井戸ではなくて、ここから水をとってきているんですか?」


 幸一の問いにするとその主婦の人が答え始める。


「ここの水、他の場所とは少し味が違うんです、以前私はここに住んでいたので味の違いがわかるんです」


「水の味……あ、そうか──」


 その言葉を聞いて幸一は一つの仮説を思い浮かべる。


(恐らくはあれを見てみないと)


「わかりました、とても参考になりました。この問題は私が絶対に解決してみせます」

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