第7話 この世界は──

 次の日、今日は国王との初の面会をする日でもある。



 朝六時ごろ、幸一とイレーナが寝ていた部屋で幸一が寝巻から着替えようとしていてイレーナが出ている時、サラが部屋に入ってきた。


 話によると、国王と会うときにこの服装を着てほしいということだ。


 すぐに幸一が試着してみるとそれは黒いローブの服装。イレーナは別の用事が外出らしく二人で面会になるという。


「うん、とっても似合ってますよ」


「あ、ありがとう」


 サラのお世辞に、幸一は少し照れて顔を赤くする。着替えを終えて二人は、国王との面会の場所へと宮殿を進む。


「大丈夫ですか? 緊張とかしてないですか?」


「無いと言えばうそになる、でも準備は出来てる、心配ないよ」


 サラの心配に幸一は大丈夫だと言葉を返す。


 階段を下りて一階、入口から一直線の赤じゅうたんの道の先に大きな扉、そこで二人は立ち止まる。


「ここです、その先に国王様がいます」


「うん、わかった──」


 そして幸一はゆっくりと大きな扉を開ける。


 すると──。


「これはこれは勇者様、よくぞこの世界にいらっしゃいました」


 会議室のような長い机があり、部屋の向こう側にいる人間が二人に話しかける。

 机を取り囲むイスには、地位が高そうな老人たちがずらりと腰掛けていた。


 あるものは物珍しそうに、またある者は見下すように、偉そうにしていたりまじまじと幸一を見つめる。

 そのうちの何人かは亜人の様で、犬やシカの耳などをしていて、ウサギの耳をした亜人の老人は幸一のことを気にも留めずニンジンをぼりぼりとかじっていた。


(なんか好きになれないな……)


 値踏みをされるようなこの感覚、幸一はどこか嫌な思いだった。


 そしてもっとも上座に位置する、40歳くらいのこの中では比較的若い一番豪華な装飾をした男性が声を上げる。


「始めまして、君が勇者さんだね、私がこのジーランディア王国の国王であるウェイガン=ミッテラン、周りのは各大臣の者だ」


 そういいながら国王は周りに視線を向ける。周りの大臣たちは一斉に頭を下げる。


「勇者様、どうかこの滅びの運命にあるこの世界をお救いくださいませ」


 そして国王ウェイガンがこの世界の危機の状況を説明し始める。


 数百年前、この世界では突然人々に魔法が使えるようになった。

 そして最近になってこの国に伝わる最古の遺跡から、魔王と滅びの予言の本が出現し出す。


 それによると魔王の配下の魔獣たちがランダムに十日から二カ月に一度突然現れ、この世界を破壊の限りう尽くし滅亡に追い込むと記してあった。


 当初は誰もが下らない迷信だとしか考えていなかった。しかし予言の言葉通り魔王軍を名乗る魔獣たちが襲来。


 魔王軍と名乗り、出現してはこの世界に甚大な被害をもたらし中には国ごと消滅した事もあった。


 そしてこの世界では伝説として滅亡の危機に陥った時、我が世界に伝わる天使が全く異なる世界から地方ごとに勇者たちが現れるとされている。


 この地では炎の唯一王が現れ私たちを平和な世界へ導くとされていた。


 今までは多大な犠牲を払いながら何とか魔王軍たちを倒してきたが、最近になってから魔王軍の強さが急激に上昇しており、このままではこの世界すべてが、魔王軍の手に落ちかねないところだ。


 よって国王達はこの地方の救世主である勇者、炎の唯一王の存在を心から待ち望んでいたというわけである。


「もちろんあなたには当然報酬も弾む、何かあった時は私が直々にサポートをする」


「他に援助金も用意しております、勇者様。我ら一同勇者様と共に魔王の脅威からこの世界を守るため一緒に戦いましょうぞ」


 そう宣言しながら、国王が他の大臣の者に視線を送る。しかし──。


「ま、よろしくお願いいたしますね」


「くたばらないでくれな、大事な戦力なんだからよーー」


 大臣たちはどこか投げやりな態度だったり、一歩引いたような態度だったり、勇者の召喚を心から祝っているようには見えない。


 オホンと咳をして、国王が少し強引気味に言葉を進める。


「気にせんでよい、ちと感情の出し方が上手でないものもおる。だがこの世界を守りたいという気持ちに偽りはない」


「は、はい」


「これが支援金です、受け取ってください」


 支援金が入った袋を受け取ると、王様が中身を開けて説明を始める。

 中には金貨一枚と銀貨200枚が入っていた。


「それさえあればそれなりの武器の購入、遠征にも耐えられます。他にも相談があったら何なりと申しつけください。そしてなにとぞこの世界をお救いください」


 その言葉とともに、頭を下げる国王。


(極悪非道な王というわけではなさそうだな)


 幸一は感謝の言葉を示し頭を下げる。

 そしてまずはギルドに行って登録をする事となった。











 翌日。


 パンと紅茶、スクランブルエッグの朝食を済ませた幸一は、服を着替えてサラのもとへ直行する。


 流石貴族達の食事といった感じで、いずれもおいしい味だ。


 今日は、先日約束したサラと一緒に冒険に必要な武器を買いに行く日だった。


「幸君お待たせ~~」


 サラの着替えが終わり、待ち合わせていた宮殿の門へやってくる。


 その姿に幸一は思わずドキッとする。胸元が出たワンピースにフリフリのミニスカート。

 何ともサラににあった服装。そのかわいさに思わず幸一はドキッとしてしまう。



 イレーナは急用があるということで遅れてやってくるといって、どこかに行ってしまったので今はサラと二人である。



 宮殿を抜けて門前まで到達し、サラが門前にいる門番の兵士に話しかける。外出する際に必要な紙を見せると許可が出たようで、すぐに門番が頭を下げ四、五人いた門番たちがゆっくりと重くて大きい扉を開ける。


「いってらっしゃいませ」

「はい」



「あそこです」


 サラが指を指してそう話す。

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