シン
ルン
第1話
この学校生活も2年目を迎えた春。毎年恒例の魔法模擬戦が明日行われる。
その模擬戦を前に彼は自分の家の中で陰鬱な気にさらわれた。いや、彼だけでなく、彼と同じクラスの人間はその行事に好意的な人間などついぞ1人もいはしなかった。
彼の通っている学校では、毎年始めにクラス対抗の魔法模擬戦をやる。と言っても、全クラスがやるわけではなく、魔法が使えるクラスのみだけである。
この学校は3年制でそれぞれの学年すべてA~Eまでクラスがある。
そのなかで魔法が使える者はAとBクラスにわけられる。つまりC~Eのクラスの人間は魔法を扱えない者たちということになる。そのためクラス対抗なのだが、実際のところはAクラス対Bクラスの人達の対決ということになる。
そしてこの魔法模擬戦、Bクラスの人間が勝つことは出来ないという暗黙のルールが存在する。
理由は簡単で、Aクラスの人間は全て貴族の人間だからである。つまりお偉方というわけだ。
この学校で魔法が使える者はAとBクラスに分けられるが、その中でも貴族の家柄の者はAクラスに分けられる、そうで無い者はBクラスに分けられる。
そのためBクラスの人間はAクラスの人間に勝ってはならないという暗黙のルールがある。もしAクラスの人間に勝ち、Aクラスの人間に恥をかかせてしまっては大問題になるからだ。だから、接戦は繰り広げても、最後には必ず負けなければならない。
「はぁ」
そんな八百長じみた模擬戦を前にしてBクラスの彼はため息をついた。
彼は明日のため、遅刻をしないようなるべく早くベッドに入り、すぐさま眠りにつく。
『これは物語である。先程のため息をついた者の名は「ツクヨミ シン」という。つまりこれは「ツクヨミ シン」という男の物語である』
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シンは朝の用意を済ませ家を出た。目的は魔術学校、通称魔高と呼ばれる。生徒全員が魔法を扱えるわけでは無いが、魔術学校(魔高)という名前になっている。シンはそこの2年生で、今日はまちに全くまっていなかった年に一度の模擬戦の日だった。シンは気持ちが全然上向かないまま、学校への道を歩く。
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学校に着いたシンは、クラスに入り席に座る。
朝のHRの鐘が鳴る。
それとほとんど同じタイミングで、先生が入室する。
「今日は魔法模擬戦です。名目は新入生の歓迎式となっているが、あなた方はただのやられ役です。間違ってもAクラスの生徒に恥をかかせてしまわないようきちんと負けるように」
担任の先生でさえ自分のクラスの者に勝つことを指導させはしない。それほどAクラスは特別ということである。
「それではみなさん、講堂にむかってください」
先生がそう言うと、クラスの中の生徒はぞろぞろと講堂に向かう。
この模擬戦、やるのは2年生と3年生のみで、1年生はただ観ているだけでやることはない。一応新入生の歓迎式の名目であるからあたりまえなのだが、2年生たち、つまりシンにとって見る側でなく、やる側にまわるのは始めての行事になる。そのため、どことなく緊張の度合いがシンの中で高まっていた。
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講堂に着くと、シンのクラスの生徒は所定の位置に着いた。未だ、他のクラスや他の学年の人間達がぞろぞろと講堂に詰めかけている。講堂は2階建てで円形になっており、一階の中央に広くスペースがある。
模擬戦はその広いスペースで行われる。
学校中の生徒全員が、講堂内に入り席に着いた。その後魔高の校長が、中央の広いスペースに立ち新入生歓迎の演説を始める。
「新しく入学された皆さん、大変おめでとうございます。この魔高を卒業すれば、未来の確固たる地位はーーー」
校長の演説の面倒臭さを感じ取り、シンを含めた、全校の生徒殆どが、校長の演説を自分の中でシャットアウトした。
「ー----さてそれでは、新入生の歓迎を大いに盛り上げるため、ささやかながらクラス別魔模擬戦を開催致します。どうか新入生の諸君、我が校自慢のAクラスである魔術師貴族、魔貴族の力をとくとご覧になってください」
校長がそう言い終わると、彼は講堂の中央スペースから静かに立ち去った。
校長がそのスペースから消えると講堂一階の中央スペースに二階まで届くほどの魔法のバリアが展開された。ついに、クラス対抗の魔法模擬戦が始まろうとしていた。
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