私たち三姉妹は見目麗しい王子たちの婚約者になりました

ikura

プロローグ

三姉妹と三王子

 私たち三姉妹はグレース王国の王子と婚約者である。


 その原因は私たちのちょっと、いやかなり変わりものの母親と我が国の偉大な王妃様にある。


 グレース王国の宰相である父が主を務めるエステート公爵家の三女が生まれて間もなくして、私たち三姉妹と三王子の婚約が決まった。

 もちろん本人たちの意思に関係なく。


 前代未聞のこの珍事は、お母様と王妃様によって怒涛の勢いで進められた。

 それも、お父様がグレース王国の宰相であるからでも、エステート家の今後の繁栄のためでもなく、お母様と王妃様が親友だったからである。


 仲の良い女の子同士が「将来私たちの子供たちを結婚させよう!」と夢見るのはよくあることだが、2人は若い頃の淡い妄想に留めず、有言実行してしまったのだった。


 しかも力ある公爵家の夫人と国の最上位に君臨する王妃様が、というところが一番の問題である。


 しかし、この二人の立場は問題であると同時に夢を夢で終わらせないために十分すぎるものだった。


 二人が言い出したら止めることができない、誰であっても。

 そう、一国の頂点である王様でも力ある宰相であってもだ。


 尻に敷かれている男たちは、助言は許されても、異議を唱えることは許されない。

 口出しなんてした日には……。


 もちろんお母様と王妃様が仲が良かったからに違いはないが、私たち三女は無類のイケメン好き、もとい、野心家のお母様の計算であったのではないかと思っている。

 お母様は、「人聞きが悪い!偶然よ!」なんて言っていたが、怪しい。


 なぜなら彼女の行動力は凄まじいのである。


 お母様から直接聞いた話ではあるが、元々隣の国オズワルド王国現国王の婚約者だったそうだ。


 なぜ今隣国のトップ2である宰相の妻なのかというとかくかくしかじかなのだが、事の始まりは現国王に婚約を破棄されたこと。

 しかも、学園の卒業パーティーという公の場で婚約破棄を言い渡されただけでなく、現国王はその場で他の女性との婚約を発表されたそうだ。

 私だったら確実にその場で舌を切って自害している。


 お母様は当時のことを思い出しながら、「だって悪役令嬢はヒロインには勝てないもの」なんてよく分からないことを楽しげに言っているのが恐ろしい。

 隣国のイケメン宰相と結婚するように奮闘したのもオズワルド国王への当て付けだったとお父様の前で口にしちゃうのも恐ろしい。

 それを聞いた当の本人が「それでソフィアと出会えたのだから結果オーライ!」と呑気に笑っているのも含めて恐ろしい。


 というわけで、そんなお母様のせい、もとい、おかげで私たち三姉妹は三女の生まれた年に初めて会った見目麗しい男児たちと婚約することになったのだった。


 そしてこれから始まる本編はエステート公爵家三姉妹とグレース王国三王子の素敵な?日常の物語である。

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