逆順番の恋

 今日は、光命と夕霧命の話だ。彼らの恋愛の仕方は多少なりとも風変わりだった。

 三日違いで生まれた二人は従兄弟同士。家はすぐ隣。


 その時はまだ、親の霊層上がる――魂が磨かれると、子供も一緒に成長するという法則があった。そのため、二人は生まれてすぐに、十八歳になった。


 十八歳といえば、神世では成人である。それぞれ、仕事にき、平和に時は過ぎてゆくように見えた。夕霧命は生まれて数ヶ月も経たずに、覚師と結婚をして子供まで生まれた。光命は知礼と出会い、お互いの家を従兄弟として行き来していた。


 だが、子供の時期を送っていない人々の心に、大人として生きてゆくには不具合が見つかり、時が通常よりもかなり速いスピードで流れる空間の中で、生まれた時からをきちんとやり直すこととなった。


 今までの記憶は一旦、親が預かり、まっさらな状態で、やり直しはスタートした。その時に、光命と夕霧命は恋に落ちたのだ。


 夕霧命は絶対不動という代名詞がよく似合う人物で、同性を好きになっても、自分は自分、人は人という考え方だった。

 

 対する光命は、同性を好きになることは、ルールから外れていると思っていて、思い悩む日々を送り、二人はお互い気持ちを伝えるどころか、好きなそぶりも見せはしなかったが、好きだからこそわかってしまうものだった。それでも、知らない振りで十八歳まで成長し、元の世界へと戻ってきた。


 そこで思い出したのだ。夕霧命は妻子持ちで、光命は最愛のパートナーがいたと。禁じられた恋をしていた――。それからの日々も、お互い恋心には触れず、光命は思い悩む姿を見せず、十一年の月日が流れた。


 そんなある日、同じ音楽事務所の蓮と出会ったのだ。そうして、蓮の感性という名の直感でプロポーズされ、光命は蓮と先に結婚した。


 ここまで来ると、夕霧命に想いを伝えることを躊躇する問題が、光命の中からはなくなっていた。複数婚も同性愛も、彼のルールのひとつになったのである。


 二人は十四年の時を経て、晴れて結婚したのである。私もよかったと、二年近くも経つ今でも涙するほど喜ばしいことだ。


 2020年6月19日、金曜日。



 余談――

 夕霧命の息子で、夕霧がいる。正式な名前は夕霧童子。

 夕霧は光命も自分のパパだとずっと思っていたらしい。それほど、光命は夕霧命の家に遊びに行っていたのだ。だが、パパの従兄弟だと知った時、夕霧はちょっとガッカリしたらしい。しかしそれも、今となっては円満に解決したのだ。

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