第28話 SIDE:闇の森の冒険者ギルド

 闇の森近くにある街。そこにある冒険者ギルドは騒然としていた。

 モンスターがやってきたからだ。

 全身が黒い獣毛で覆われた、角と翼と尻尾を備えた二足歩行の獣。見るからに強力で、禍々しい気配を発している。

 その場にいた冒険者はあわててステータス鑑定を使用したが、彼らでは何もわからなかった。ステータスが隠蔽されているのだ。

「てめぇ!」

 恐怖に耐えかねたのか、自暴自棄になった冒険者がモンスターに突撃する。


 ばしん!


 冒険者はモンスターの尻尾で軽くあしらわれた。幸い死んではいないようだが、壁に激突して気を失っている。

「てめぇら! この方をなんと心得る! 極天のガレリア様だぞ! 頭がたけぇんだよ!」

 受付嬢が一喝する。

 すると浮き足だっていた冒険者たちもぴたりと動きを止めた。

「……って言われてもな。モンスターだろ、あれ?」

「人間要素ほぼないよな?」

「いや、まあ、エクレアさんが言うならそうなんだろうけどよ……」

 ガレリアと呼ばれた、どう見てもモンスターな存在はゆっくりと受付へとやってきた。

「久しいな。エクレアよ」

「お師匠様……そのお姿で街を出歩くのはお控えくださいと、以前から言っているじゃないですか……」

「あえて人の姿を取るのは非効率なのでな」

「それで、どのようなご用事で? 一門を引き連れてなどただ事ではないようですが」

 ガレリアの異容にばかり注目していた者は気付いていなかったが、ガレリアの後ろにはぞろぞろと人が連なっていた。ローブをまとい、杖を持った魔法使いの集団だ。

「ノートンが殺られたのだ。復讐をせねば、我が一門の沽券に関わる」

「まさか……ノートン殿が殺られるなど」

「このあたりでミミックについて何か噂はないか」

「ミミックですか? ……そういえば、ミミックを連れたモンスター使いの少女が来ましたが」

「まず間違いないだろう。街中をうろつくミミックなどそういるわけもないしな。その少女というのはカモフラージュのために連れ回しているのか。不憫なことだ」

 ガレリアは異様な風体ではあるが、無関係の少女を心配するなど常識的な部分もあるようだった。

「ミミックを連れた少女には、モンスター使いのドルホイという男を紹介しましたので、そちらに向かったはずですが」

「そうか。助かった」

 ガレリアが踵を返す。

「あの! 私も一緒に……」

「お前にはギルドの仕事があるだろう」

 そう言われては無理についていくこともできないのか、エクレアは渋い顔になる。

 ヨハンはそんな様子をギルドの隅でひっそりと観察していた。

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