「黄金姫の憂鬱」 第九話
”黄金の世界、銀の焔”・番外編「黄金姫の憂鬱」 第九話
「…………それ、使えないだろ?」
いつも通りの
俺の”唯一”と言っても良い”
「そうなのよねぇ、色々試したけどぜんぜん機能しないのよ……
「迷惑……」
――
確かにその”
ファンデンベルグ帝国技術少佐、ヘルベルト=ギレ博士制作の”
「盗人猛々しいな、
「そうでもないけど?こっちが使えなくても現に装備の無い
俺への返答として偉そうに胸を張って笑う女であったが……
「そうか?……そうでもないぞ、例えば……」
俺は右手を顔の高さまで上げる。
ガチャ!ガチャ!
「
途端に、俺を囲んだ兵士達が一斉に
「いや、そうは言ってもなぁ……早く戻らないと
俺は向けられた銃口をまるで見えないかのように無視して、上げた右手に装着した金属製の黒い時計……に見える機械の盤面部分を左手の人差し指で二度ほど軽くタッチする。
ピピピッ!
「き、貴様っ!」
恐らく兵団の部隊長であるだろう男が怒声をあげ、それに呼応する様に兵士達も一斉に引き金を……
――だがもう遅い!
そう、
ガコンッ!
「う、うわっ!」
ガコンッ!ガコンッ!
「おおっ!?」
コンクリートの地面に幾つか設置されていた鉄板の部分……
下水施設か何かの開閉口かと誰もが気にも留めていなかっただろうが、その鉄板が地下からの圧力で一気に弾け飛び、そしてその空いた空洞からせり上がって姿を現す謎の
シュオォーーン……
不気味な排気ガスを部分部分から吐き出す、体高二メートルはあろうズングリムックリとした白銀
シュオォーーン、シュオォーーン……
それは辛うじて人型を模しているが、人なら関節に当たる部分の隙間などからピコピコと
「な、なんだ、これは!?」
巨大卵の様な体型から伸びた二本ある蛇腹状の腕には、巨象をも一刺しで絶命させそうな鋭利な四本の鉤爪が光り、
「ロボッ……ト!?」
キュイィーーーーン!!
首無しの頭部らしき部位には、二つの円形状で双眼に似たレンズを赤く光らせる!
「あ……あれれ?……これって……どこかで見た?」
あまりに突然の出来事に兵士達が銃を手にしたまま呆気に取られる中、どこか間抜けな声を発した
――まぁ正確には”見た”というより”
俺は四体ほど出現した異形の……いいや、
「二年前の一件、ファンデンベルグ帝国の
――それは、
その時に立ちはだかったファンデンベルグ帝国が脅威の秘密兵器は、同盟国であるはずの日本の支配階級、十二士族の総帥である”
「う……まさか」
「あ、ありえない……」
兵士達は一様に青ざめた顔で立ち尽くす。
――有り得ない?そうでもない
なんと言ってもその超兵器開発初期段階には俺も関わっていたんだし、それを言うなら俺は
――そう、全ては
――俺の行動原理は全て
「国の中枢に関わる十二士族なら勿論、
「…………」
「…………」
「…………」
――あれ……あれれ?
俺は見事に敵の虚を突き、完全に場を支配した状況での決めの言葉を放ったはずだが、その
「おぉい、聞いてますかぁ?”
「…………」
――だが反応は同じ
なんというか……恐怖と言うより、明らかに白い目で。
「あの……ねぇ、
そして、兵士達の中からズイと一歩前に出た女は面々を代表するかのように俺に問いかけてくる。
「な、なんだよ?」
俺はと言えば……大見得切ったのは良いが、相手の少々予定外の反応にちょっぴり不安になっていた。
「確かにね、驚いたは驚いたけど?こんな国産自動車メーカーや携帯電話会社の作った展示用ロボットの出来損ないみたいなのが数体でなんになるっていうの?こっちは銃火器を手にした一個小隊なんだけど?」
「なっ!?俺の作品のどこが”ホン○のア○モ”や”ソ○トバ○クのペッ○ーくん”だっ!!コレはあんな愉快で癒やし系な展示物じゃないぞっ!!」
科学者としてのプライドを傷つけられた俺は大いに反論するが……
「ぷぷっ!……だってこの寸胴……不細工だし、あははっ!」
「くっ!この!お気楽女の分際でっ!」
誰に笑われるよりも、この適当で迷惑千万な女、”
「それにぃ、自分で言ってたじゃない?”超・
――そこまでは言っていない!
「う……うぅ……それは……”
「あはははははははっ!!」
――くそ、舐めやがって!!
確かにファンデンベルグ帝国の秘密兵器だった
「おまっ!これはな……」
「それに、こんなポンコツを勝手に地下に埋めてちゃダメでしょ?大家さんに怒られるわよ」
「ううっ!」
――きぃぃ!お気楽女のクセに一般常識なんて
「俺は……俺は
「
「だ、誰がストーカーだっ!!だ、大体、俺と
「公認のストーカー?」
「ちっがぁぁーーう!!」
「あははははっ!」
――も、もう許さん!!
俺は怒りにまかせ、腕に装着した黒い時計
「
ギュォォーーン!
四体の鉄人兵がその信号で一斉に目覚めかけた瞬間――
バシュッーーーー!!!!
直ぐ目前を強烈な風が通り抜け、そして同時に……
「ぎゃっ!」
「ぐはっ!」
ドガッ!ガシャッ!
ガラガラガラァァーーァァン!!
その場にいた
「あ、あれ……??」
位置的な関係から、ひとり難を逃れた女はポカンとしていた。
銃を手にした兵士達はおろか、ゴテゴテと鉄板で
「…………」
特殊な”衝撃波”……
それも恐らく威力を最小に絞ったうえ、
――つまりこの”桁違いの暴力”には……
――こんな”馬鹿げた力”だからこそ……
「あ……あの……ええと」
俺は恐る恐るその元凶が存在するだろうはずの場所……
高級マンションの入口付近に視線を移して確認する。
――果たして
「恋人を置き去りにこんな所で
夜闇の中でさえ存在を際立たせる艶のある美しく長い黒髪で、澄んだ濡れ羽色の瞳の波間に時折ゆれるように顕現する黄金鏡の煌めきを秘めた
――
そう……
一個小隊を鎧袖一触、装甲車両諸共に軽く”ひと
そんな最強の”
「私は聞いているのよ?…………こ・う・く・ん」
――そして
見目麗しき我が愛しの美姫は、氷点下の薄い
”黄金の世界、銀の焔”・番外編「黄金姫の憂鬱」 第九話 END
「黄金の世界、銀の焔」番外編 ひろすけほー @hirosukehoo
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