第202話 さてと、水場が見つかりましたね。

前回のあらすじ:もどきだけど、ラーメンを堪能した。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン。はい、目覚めの時間でございます。朝の挨拶に加えて、マーブル達をひとしきりモフってマーブル達の成分を補給完了。これでしばらくは戦えそうだと思っていると、部屋に入ってくる物陰が1つ。はい、コカトリスさんです。かなり慌ててやってきたようです。いや、そんなに慌てんでも問題無いのだけど、、、。


 いつも通り卵を持ってきてくれたので、お礼のモフモフをすると、コカトリスは嬉しそうに戻っていった。正直、私はコカトリス達の区別が全くつかないんだけど、いつも遅れてくるのは、同じコカトリスなんだろうなと思わず口に呟くと、マーブル達は、え!? 気付いてなかったの!? という反応をした。いや、あれ区別すんの無理だよ、と言うと、ジェミニが、頭に付いている赤い部分の模様が一羽一羽で異なるのだそうだ。


 なるほど、トサカの模様ねぇ、ってわかるかい!! あんなん区別つくかよ!! とか言うと、


「じゃあ、アイスさん、ワタシと他のウサギ族の区別ってどうやってしているですか?」


「区別? いや、特にそんなのは意識してないかな。ジェミニってすぐに分かるし。」


 ジェミニだけではなく、マーブルやライムも、私のその言葉に「おおー」と感心したかのような感じでこちらを見ていたので、


「ジェミニだけじゃなくて、マーブルもライムもすぐに見分けられる自身はあるよ。まぁ、3人以外は全く自身はないけどねぇ、、、。」


 マーブル達はそれを聞いて喜んでくれたけど、少ししたら何かに気付いたようで遠い目をしていたのだけど一体何のことなのだろうか? 誰かに同情しているような感じだったけど、わからんものはわからん。


 まぁ、それはさておき朝ご飯の時間である。朝ご飯といえばお米! いや、実際には押し麦のご飯になるけど、この世界での押し麦は美味いので問題無し。というか、以前いた世界では、押し麦を混ぜたりしてそれをアピールする食べ物やもあったらしいけど、私は食べたことがなかったので、実際に美味かったのかどうかはわからない。実際に私が食べていたのは○協で販売していた米であった。あれ、実はかなりコスパよかったんだよね。銘柄はともかく、あの中でも一番安い品種でも、下手な店で高いお金を出して買う米よりも美味しかったし。


 と、それはそうと、いくら考えても今の世界では食べられない物だし、目の前にある押し麦ご飯はそれらと同等かそれ以上に美味い物だから問題無し。もちろん、コカトリスの卵を使った卵かけご飯である。これは私達の朝食の定番だ。あとは味噌汁である。我がフロスト領では、最近レパートリーが増えてきたし、他国でもここまで食べ物の種類が多いところは少ないだろうと自負している。


 とはいえ、以前いた世界と比べてしまうと、これでも種類は貧弱といえる。朝食にしても、日替わりにしているのは味噌汁の具だけである。まぁ、不満はないので問題無いけどね。ちなみに、マーブル達も私と全く同じものを食べている。いくら異世界とはいえ、実際の猫達やウサギ達ではここまで全く同じものは食べられないと思うので、一緒に同じものが食べられるというのは非常に嬉しいものである。


 楽しく朝食も食べ終わり、片付けや昼食および夕食の準備をしつつ、今日も帝都のダンジョンへと潜る予定である。陛下からの勅命を受けているが、陛下本人からは急がなくてもいいとは言われているものの、フェラー族長やカムドさんが探索組から来た情報をまとめたものを聞いたりすると、ダンジョンの探索は早い方がいい気がするので、まずはこちらを優先しておく必要がある。


 ということで、やって参りました、ダンジョン入り口です。いつもの門番さんに挨拶をしてからダンジョンへと入る。向こうも何度か顔を合わせたり、実際にフロスト領へと招待されている面子もいるため、手続きなどは非常にあっさりとしたものである。平たく言うと顔パスなのである。精々、任務ご苦労様、道中お気を付けて程度に軽い会話が追加される位でダンジョンへと入れるのである。


 先日に、こんなにあっさりで大丈夫か聞いてみたのだけど、探索許可を得ていても、冒険者であろうとなかろうと、身分の高い低いに関わらず、私達以外については、かなり面倒な手続きを行っているそうだ。というのも、陛下の勅命を受けているのが私達だけなのだそうだ。ただ、門番いわく、勅命があろうとなかろうと、私達であれば顔パスで通すつもりだったとは言ってたけど、いいのかそれで!?


 そんなこんなでダンジョンに入り、直ぐさまマーブルに転送魔法で地下十六階へと転送してもらい、まずは階段を上って地下十五階へと移動した。・・・予想通りいました、スカルワイバーンが。ということで討伐開始である。


 ちなみに出現したスカルワイバーンの数は大体30くらいかな。今回は領民への土産用として考えている。たかが30と侮ることなかれ、たかが1体でもかなりの量の出汁が取れるのである。しかも、1回の煮込みで鶏ガラ、鶏白湯、天○と3種類ガッツリ用意できるのだ。沢山美味しい物を開発して欲しいものだ。


 一昨日も倒しているので私達も慣れたものである。私とマーブルが撃ち落として、落ちてきたところをジェミニとライムがトドメを刺して、骨と魔石を回収するだけの作業です。ダンジョン産の魔物だけあって、学習能力があまりないらしく、行動も一昨日と全く変わることなくガンガン攻撃してきてくれたので、それほど時間もかかることなく終了です。


 しっかりと回収してから、再び地下十六階へと降りた。階層的には、地下十一階と似ているけど、あそこまで広くはない。それに生意気にも明るかった。後は、腐敗臭はしないのは非常にありがたかった。


「それにしても、こんなものがあったとはねぇ、、、。」


 何があったのかというと、ずばり水である。そう、この階層には水路があったのである。


「ミャア!」


「水、水ですよ、アイスさん!」


「わーい、おみずだー!!」


 マーブル達が嬉しそうにしている。まぁ、今回の目的の1つでもあるんだよね、水の存在って。ただ、ここにある水が果たして安全な存在なのか、ということが大切なのである。ということで鑑定鑑定。


-------------------------

「地下水脈の水」・・・ほう、この水は下層から湧き出ている水じゃな。何で下層からこっちに来ているのかというと、それはダンジョンだから、という以外に理由はないのう。安全性についてじゃが、普通に生活で使えるぞい。まぁ、お主の領地にある水に比べると少し質は落ちてしまうがのう、、、。とはいえ、下手な場所から得られる水よりは質がいいのは保証するぞい。ただ、注意して欲しいのは、この場所から水を引こうとしても、すぐに枯れてしまうぞい。もちろん、一回の探索程度の使用であれば問題無く使用できるぞい。流石に帝国内、いや、少なくとも帝都での利用目的であれば、水源を見つける必要があるがのう。残念ながらどこにあるかは教えられぬが、下っていけば、そのうち見つかるはずじゃ。

-------------------------


 よし、この水は飲めるみたいだね、とりあえず一安心だ。ただ、ここから引いてしまうと枯れる、か。まぁ依頼は水脈だったから、更に探索は続けないといけないな。


「アイスさん、どうです? 飲めます?」


「うん、大丈夫みたいだね。ただ、水脈はここじゃないみたいだから、探索は続けないといけないかな。」


「そういえばアイスさん、マーブル殿が、水中に魔物の気配がするそうです。」


「ありゃ、やっぱりいたのか、、、。ん? 魔物か、、、。何がいるんだろうね。」


「ミャッ。」


「あ、近づいてきますよ!」


「よーし、やるぞー!」


 マーブルが何かを感じ取ったのか、ジェミニとライムが戦闘態勢に入った。私? 気配探知してなかったからわかりませんでしたよ、ハハッ、、、。ということで、水術で探知開始、って、なんじゃこりゃぁ!!


「ごめん、水中での探知切るね。地上での探知に切り替えるわ。もの凄く遠くまで確認できちゃったから、数が多すぎて訳わかんないや、、、。」


 そう、水術での探知なので、水路で探知をしてしまうと、反応が良すぎて頭がパンクしてしまう。ちなみに、いつもとは違い、かなり出力を抑えたにもかかわらずこの結果である。まさに過ぎたるは何とやら、ということだね。


 地上から探知してみると、ようやく落ち着いてきた。さてと、数は、と、6くらいかな。全部水路からの反応だ。ふーむ、今更だけど、どこを対象に探知するかによってもここまで結果が違うとは思わなかった。まだまだ検証が必要だね、これは。


 そんなことを考えている間にも、その6体はこちらに近づいてきている。私も戦闘態勢を取り襲撃に備える。何せ水中の魔物との戦闘なんてほとんどやらないからねぇ、、、。領内の川はアマさんの加護がついたものだから、魔物は存在しないし。農業班の領民達から聞いた話でも川魚の存在はいるらしいけど、あまり美味しくないから放っておいてるって話だしね。


 ようやく鑑定できそうな距離まで近づいてきたようなので、鑑定してみる。アマさん、出番ですよ。


-------------------------

「モートイール」・・・基本、水堀や水路のあるダンジョンに生息する魔物じゃ。というのも、地上では厄介な魔物ゆえ、発見次第最優先で討伐される魔物じゃからな。雑食性でかなり獰猛ゆえ、居着かれると敵味方問わずに襲われる故のう。モートイールを発生させないように町や城の堀には水を張らない国すら存在するくらいじゃからのう。また、表面がヌルヌルしておるせいか、捕まえるのは大変じゃし、攻撃もまともに入らないといういろんな意味で迷惑な存在じゃな。何より美味くないしのぅ、、、。

-------------------------


 うわぁ、マジか、、、。防衛よりもそっちに来て欲しくないくらい厄介な存在か、、、。


「みなさん、こっちにやって来ている魔物ですが、モートイールという魔物らしいです。」


「えぇー、モートイールですか、、、。倒すの面倒ですし、美味しくないしで最悪です、、、。」


 ジェミニがガックリとした表情で言ってきた。それを見たマーブルとライムもガックリきている。そりゃそうだよな、倒すのが面倒な上に、美味しくないときたら、、、。


 ん? 待てよ。イールって確かウナギのことだったよな? それなら、ヌルヌルしているのもわかるし、あれ、普通に食べたら美味しくないって有名だよな。以前いた世界でも、あの調理法が広がるまでは、下魚中の下魚で有名だったと思う。不味いということは、あの調理法が広がっていないということだな。とりあえず確認してみないことには始まらないか。


「マーブル、ジェミニ、ライム。今回は私に任せてくれませんか?」


「ミャア?」


「アイスさんが倒すですか? 矢では狙い通りに倒せないと思うですが、、、。」


「あるじ、だいじょーぶ?」


「大丈夫ですよ。今回少し考えがありますので、私に任せてください。」


 多分ウナギであるなら、私の作戦通りに行くはずである。ウナギの味を思い出して思わずニヤリとしてしまったが、そのニヤリとした表情をマーブル達に見られてしまった。


「ミャア、、、。」


「あの顔は、何か美味しい物を思いついた顔ですね、、、。でも、イールです、、、。」


 マーブル達は期待半分、不安半分といったところだ。もちろん、私が負けることは想像しておらず、本当にモートイールが美味い物かどうかといった不安である。


 私の方でも作戦と迎撃準備が整ったところで、モートイールが次々と襲いかかってきた。ってか、こっちに飛びかかってくるのね、、、。まぁ、一々釣ったりする必要がないから、むしろ好都合なんだけど。


 飛びかかってきたモートイールなんだけど、凄く、ウナギです。・・・デカいけどな! 巨大ウナギの突進を躱しつつ掴もうとしたけど、流石にウナギなだけあってヌルヌルしている。でも問題無し。というのも、触れた瞬間に水術で凍らせているから。


 予想通り、突進してきたはいいけど、水術で凍らせると最初こそは水堀に戻ろうとしていたけど、すぐに動かなくなっていた。要するに氷水などで仮死状態にされた感じである。


 水術でアイスピックのような突き刺す物を作成して、仮死状態になった巨大ウナギの目の後ろ部分目がけて突き刺す。いわゆるシメというやつである。ただ、ここがダンジョンだということを忘れていたのが誤算だったけど、、、。


 上手くシメができたと思ったら、巨大ウナギが消えて、以前いた世界である程度見慣れていたサイズのウナギが出てきてピチピチと動きだしやがった、、、。慌てて水術で囲って逃げられないようにしてから一匹ずつ仮死状態にしてから、さっき作ったアイスピックのようなもので次々にウナギたちをシメていく。


「ア、アイスさん、これ、イールですよね?」


「そうだよ、ジェミニ。」


「そ、それ、本当に食べるですか?」


「もちろん、食べるんだよ。まぁ、見てて。」


 マーブル達はやはり不安そうにはしていたけど、今まで失敗作以外で不味い物をアイスが自分たちに出したことはなく、自信ありげに言うアイスにやはり期待もあるけど、多少の不安もこころに秘めながらその様子をうかがっているのであった。


-------------------------

マーブル「ジェミニさん、イールってそんなに不味い物なのか?」

ジェミニ「はい、あれは骨が多くて食べづらいし、何より臭みが強いです。特にヌルヌルした部分が最悪です。」

マーブル「しかし、主は美味い物を目の前にしたときの顔をしていたが、、、。」

ジェミニ「そこがわからないんですよね。」

マーブル「まぁ、我らは主が作ってくれるのを見ているしか出来んが。」

ジェミニ「アイスさんを信じるしかないですね、、、。」


 珍しくマーブルの台詞を入れてみました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る