第203話 さてと、これから低評価を高評価に変えますよ。

前回のあらすじ:ウナギが手に入った。



前回の釣果・・・モートイール6体


 さてと、とりあえず1体仕留めたけど、まさか以前いた世界のウナギに変化するとは思わなかったな。あの時食べていたウナギはほとんどが輸入物だったけど、2、3回ほど知人から川で釣り上げたやつ、いわゆる天然物を食べたことがあるんだけど、あれは本当に美味かった、、、。捌くの大変だったけど、、、。


 ということで、残りの5体については逃げられないように水術で凍らせて仮死状態にしておいたので、練習がてらマーブル達に仕留めてもらった。仮死状態だったのであっさりとモートイールはそれぞれ6、7体のウナギに変化したので、現れたウナギを改めて凍らせて仮死状態にしておいた。それと、モートイールが普通のウナギになったとはいえ、天然物にしては結構大きいサイズだと思った。


 とりあえず味見+手本ということで、1体をこの場で捌いてみることにする。その前に今目の前にあるウナギたちはまだ仮死状態であったので、とりあえずシメておかないとな。


「ジェミニは食べたことがあるみたいだけど、美味しくないって言ったよね?」


「ハイ、骨が多いし、何か臭いし、あれはもう2度と食べたくないと思ったですよ、、、。」


 ジェミニは思い出していたのか、何とも言えない顔をしていた。


「確かに、普通に食べようとすると美味しくないかもしれないけど、正しいやり方で捌けば、一気にトップクラスの美味しさに早変わりするよ。」


「アイスさんがワタシ達に美味しくないものを出すことはないのはわかっているですが、こればかりは半信半疑です、、、。」


「なるほど。じゃあ、そのやり方を見て覚えるといいよ。それでは作業開始です!」


 ジェミニだけでなく、マーブル達も半信半疑ではあったけど、私が捌く様子が気になってもいたようだ。久しぶりで多少緊張はするけど、今の私には調理スキルがある。多分大丈夫だろう。


「まずは、って、地べたはまずいね、っと、これでよし。」


 氷締めを維持する意味も込めて、水術で土台を作成する。それと、固定させるために目打ちくらいの太さの針? も付けておく。もちろん包丁なんて持ち合わせていないので、ウナギの大きさに合わせた水術で作った氷の刃を用意する。うん、水術って本当に便利だねぇ。魔法使えないけど(涙)、、、。


「では、捌いていくよ。まずは、ウナギをこの針に打ち付けて固定するんだ、こんな感じにね。で、この場所に来るように意識してね。」


 針の上にウナギの頭を打ち付ける。よし、場所はしっかりと目の後ろ部分を貫いているね。マーブル達は興味津々に見ていた。ジェミニは「おぉ、なるほど、、、。」とか言ってるね。よしよし、手応えは十分あるかな。


「打ち付けたら、頭の後ろの部分、ここら辺だね、この部分を切るんだけど、思いっきりやらないようにね。ここは、真ん中くらいで止めるように。大丈夫、骨があるから、思いっきりやらなければ大丈夫だからね。」


 正直、そう言いながら断ち切ってしまうのではないかとおっかなびっくりではあったけど、上手く出来たようだ。料理スキルが良い仕事をしてくれているのだろう。 ん? 何か頭の中で曲が流れてきたぞ。おお、この曲は何だっけかなぁ、、、。


 あ、そうだ、出だしが『ぶんぶんぶん』に似ているアレだ。お、おぉ、何だかジェミニが頭にお盆を乗せて何かを運んでいる光景が浮かんできたぞ、、、。何これ、可愛すぎるんだけど、、、。あれ、マーブルとライムまで、、、。可愛すぎるぜ、、、。あれ? この光景どっかで見た覚えがあるんだけど何だったかな? ま、いいか。


「で、これが出来たら、ウナギを開いていくよ。私は背中から切るけど、腹から切るやり方もあるから、どちらが正しいとかはないからね。どちらにしても、逆側を貫通しないように気をつけてね。後、真ん中くらいから多少抵抗があるから、そのときは刃を少し下に向けていけば大丈夫かな。」


 そう説明しながらも、頭の中は例の曲と、マーブル達が従業員として動き回っている姿が浮かんでいた。自分の中ではテンションが爆上がり中である。そのマーブル達は刃が徐々に尾の部分に移動している様子に釘付けである。


 ウナギは無事刃が反対側に行くことなく、自画自賛で恐縮だけど、見事なまでにキレイに開くことができたので一安心だ。


「よし、ここまで来れば一安心だね。次は、内臓を取り出すよ。」


 内臓は問題無くキレイに取り外すことが出来た。肝はお吸い物に使えるみたいだけど、どれが肝だかわからんからどうしようか、、、。試しに鑑定は、と、お! アマさんも興味津々か。しっかりと教えてくれているね、では、肝は取っておくとしましょうかね。


 次は頭を落として背骨を取っていく。よし、これもキレイにできたな。背骨が取れたら、頭の方にある腹骨などをこそぎ落としていきますか。これは見づらいから手で確かめながらやっていかないとね。・・・よし、これで大丈夫だね。あとは、背びれを取っていく、と。腹びれはどうしようかな。面倒だしやめておきたいところでもあるけど、、、。いや、最初が肝心だから取りますか。


 ということで、開いたウナギを再び閉じて、腹びれを取っていく。といっても、小さいから結構大変なんだよね、これ。・・・多少苦戦はしたものの、見事に取り去ることに成功。調理スキルに乾杯だ。


「と、まぁ、こんな感じで完成だね。」


 マーブル達は「おぉー!」と言わんばかりに驚いていたが、ふと何かに気付いたような感じでジェミニが言ってきた。


「あ、あの、アイスさん、、、。」


「ん? ジェミニ、どうしたの?」


「えっとですねぇ、私ではこういう形にはできないです、、、。」


「あれま。」


「ドラゴンとか硬かったり、大きな魔物の解体ならお任せあれ、なんですけどね、ゴメンナサイ。」


「いやいや、それは仕方ないよ。できないものはできないしね。まぁ、そんなことより、こいつを味見してみたいと思わないかい?」


 私がそう言うと、3人とも嬉しそうにその場を走り回った。うん、やっぱりこうでないとね。さて、そうは言ったものの、どうしようかなぁ、、、。ウナギといえば蒲焼きが基本だけど、タレはすぐには作れないし、領主館で作ると感づかれてしまう。いや、感づくのはいいんだけど、どうせすぐに広まって1日が丸々潰れてしまうのは頂けない。・・・あ、そうだ! タレはねぐらで作れば問題無いな。あそこは私達4人しか基本的には来られない。


 っと、今はタレの話ではないな、タレが作れないのであれば、塩焼きしかないか。思い切って定番を外してみるのもアリかもしれないけど、やはりここは塩コショウ、つまりスガーで味付けをした白焼き一択となるだろう。そういえば、竹串とか用意してないな。戻ったらゴブリンの職人に作ってもらう? いや、それをしてしまうとバレる。そもそも竹ってあったっけ? 水術で氷の串を作れるには作れるけど、そうなると火の通りが悪くなるから却下だ。仕方ない、普通にフライパンで焼くとしましょうかね。後日、網なり作ってもらうとしましょうかね。網だけであればバレないでしょ。・・・バレないよね?


 いろんな意味での予定が定まったということで、調理を開始していく。食事の時間には少し早いので、今捌いた1匹だけ調理することにした。もちろん、出汁などで使う骨や肝については収納し、頭やこそげ取った細かい骨、肝以外の内臓などはその場にポイである。ここはダンジョンなので、ポイした部分はしばらくすると勝手に吸収してくれる。実力さえあれば、非常にすばらしいキャンプ地ではないかな、この世界のダンジョンって。


 コンロとフライパンを取りだして、マーブルに火魔法で点火してもらう。その間に捌いた身を4等分しておく。フライパンが温めている間に、その身を水術で蒸し上げていく。そのまま焼こうか少し迷ったけど、一旦蒸してから焼くやり方を今回は採ることにした。


 十分蒸し上がったところで、フライパンの方も十分温まったようなので、皮目を下にしてフライパンに投入する。ここで注意したいのは、養殖物とは違い、天然物は皮と身が離れやすいということだ。ウナギや調理法によって違うかもしれないけど、少なくとも以前いた世界で調理したウナギは、どちらも焼いたときに皮と身が離れやすくなっており、ひっくり返すときにはかなり苦労したものだ。まぁ離れたら離れたでそれぞれ別々に食べるもよし、重ね合わせて食べるもよしである。別に売り物にするわけでもないしね。


 そんなことを思いつつ、皮がメイラードっているのを確認して慎重に身をひっくり返す。うん、良い感じにできたな。ありがとう、調理スキル。そして、しっかりと焼き色がついた皮の部分にスガーをパラパラと振りかけていき無事ウナギの白焼きが完成した。うろ覚えの部分は少なからずあったけど、それでも思った以上に出来は良かったと思う。


 今後については、しばらくは私一人で捌くハメになりそうだけど、数をこなせば速度も練度も上がるのでその辺は問題無い。とりあえずしばらくは私達4人だけの秘密にしておこう。秘密にできればだけど。


 無事に焼き上がったので、皿を4枚取りだして、それぞれに白焼きを置いていく。面積や体積ではなく、長さで等分したので、尾に近い部分は自ずと量も少なくなる。その少ない部分はもちろん私が食べる。次以降はその辺も考えないとね。今回は何も考えずに4等分しちゃたからね。


「よし、これで完成です。まぁ、まずは食べてみてよ。」


 マーブル達はともかく、ジェミニは調理していなかったバージョンのウナギを思い出して少し躊躇っているところがあったので、私が率先して食べ始めた。食べた感想だけど、予想以上に上手かった! 蒸してから焼いたので、フワッとした食感だけど、しっかりと旨味も出ていた。スガーとの相性も抜群だったね。


 私が食べるのを見て、マーブル達も食べ始めた。


「! ミャア、ミャア!!」


「あるじー! これすごくおいしー!!」


 初めて食べる味と食感にマーブル達はご機嫌である。ジェミニはどうかな。


「!! ・・・アイスさん、一応聞きますけど、これって、あのイールですよね?」


「そうだよ。ジェミニが美味しくないと言っていた、あのイールだよ。」


「何だか信じられません。あのイールがここまで美味しくなるですね!?」


「分かってくれたかな? 確かにそのまま食べるとあれって美味しくないんだけど、こうやって捌いてから調理すれば、一気に美味しくなるんだよ。」


「流石はアイスさんです!!」


「ミャ-!」


「ピー!」


 うんうん、喜んでくれたね。


「しかし、アイスさん、このモートイールですけど、みんなに調理法とか教えるですか?」


「いや、しばらくは黙っているつもり。絶対に作らされるのはわかっているから。」


「確かに、そうなると思うです。しかし、すぐにバレる気もするですが、、、。」


「ジェミニ、それは言わないで。とにかく、しばらくはこの4人だけの内緒ね。」


「ミャア!」


「キュウ!」


「ピー!」


 マーブル達が敬礼をしながら応えた。うん、いつもながら可愛らしい。


 少しウナギの余韻に浸った後、探索を再開する。今回の目的はさらに深部を探索することだからね。ウナギがメインではないのだよ、、、。・・・忘れそうになったのは否定しないけど、、、。


 地下十六階をさらに進んで行く。通路だったり部屋だったりが続くが、それに沿うように右側には水路が続いていた。部屋にはスケルトンがいたりしたけど、それに混じってモートイールが何体かこちらに攻撃してきたので、倒しては劣化魔石を回収したり、ウナギ達を回収しつつ進んでいた。


 ちなみに、ウナギ達だけど、仮死状態でも回収できなかったので、目打ちだけをしてシメた状態にすると回収可能となったので、シメた後、それぞれ回収していった。


 魔物を倒しーの、戦利品を回収しーのでしばらく進んで行くと、ようやく下り階段にたどり着いたので、下りていく。地下十七階を進んで行くけど、特に地下十六階とあまり違いはなく、違いといえば、スケルトンの数が増えた程度かな。もちろんモートイールも襲ってきていた。こちらも数が増えた程度なので、特にこれといった問題もなく地下十七階の下り階段までたどり着いた。


 魔物を倒しつつ進んで行ったのだけど、予想以上に時間がかかってしまった。もちろん主な原因はウナギを一々回収しながら進んだことなんだけど。地下十八階に入ったことで、転送ポイントを設置してもらい、ダンジョン入り口まで転送してもらい、守備兵の人達と少し話してからフロスト侯爵邸に戻り、そこからフロストの町に転送をして我が家に帰宅した。

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