第193話 さてと、今度こそ出来たてのチャーハンを。

前回のあらすじ:踏んだり蹴ったりな一日だった。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン、、、。あぁ、今日はマーブル達がいた。何か昨日のことを気にしているみたいで、いつも以上に優しい起こし方であった。いや、いつも優しく起こしてくれるんだけどね。そういうわけで、私もいつも以上に丁寧かつゆっくりとモフプヨで気持ちを伝えた。


 いやぁ、昨日は酷い目に遭ったな、、、。朝型まで管巻かれるわ、それが原因で遅くなった昼食で乱入されて結局しっかりと食べられなかったし、それで忘れていたチャーハンの存在を思い出して作ったはいいけど、またそれをリクエストされて結局味見すらできずに少し冷めた状態のチャーハンを食べざるを得ない状況になり、更には食べた時間が時間だったので、夕食の準備もまともにできなかったわで、散々だったなぁ、、、。


 まぁ、ムシャクシャしたから、その分奮発してドラゴン肉のステーキにしたけど。・・・あまり時間差がなかったから多くは食べられなかったけどね、、、。マーブル達が喜んで食べてくれていたので問題なし。私の食も大事だけど、マーブル達の喜ぶ顔の方が優先されるべきだし、実際そのつもりで日々生活している。


 この後顔を洗ったり、朝食を食べたり、マーブル達が遊んでいるのを眺めたりしているうちに、アンジェリカさん達がやってきた。


「アイスさん、ご機嫌よう! さあ、今日は張り切って魔物を狩りますわよ!!」


 アンジェリカさんは非常にテンションが高かった。それも致し方ない、というのも、数日ルクレチ王国の王宮では国内の連中は元より、他国の使者達からも嫌と言うほどのアプローチを受けてウンザリしていた状況にも関わらず、私達が楽しく魔物狩りに励んでいたことでかなりの鬱憤が溜まっていたようだ。


 とりあえず落ち着いてもらうと、我に返ったのか、昨日のことを謝られてしまった。土下座までしようとしたので流石にそれは止めてもらった。また、あのハイテンションは、武術大会まであと数日しかないので、あの場所での狩りもあと数日しかない、ということも大きいようだった。


 というわけで、今日も張り切ってルクレチ王国での魔物狩りを行うことに。メンバーは私とマーブル達、あとは戦姫の3人とオニキスといういつものメンバーである。昨日の様子から領民達は何かを察したらしく、今日から武術大会の日までは参加しないことになったらしい。ちなみに、武術大会の日までというのがミソである。というのも、ここまで毎日ではないけど、これからもちょくちょくルクレチ王国で魔物狩りは行う予定なのである。折角元フライド邸があるのだから、それを利用しない手はないのだ。あの家が廃棄処分されてしまったら素直にあきらめるけど、それまでは有効利用させてもらいましょうかね。


 アマデウス教会の転送ポイントから元フライド邸へと転送する。本来なら領主館から転送してもよかったのだけど、とりあえずこれから出発することを領民達に教えなければならなかったようだ。何でなのかはわからないけど、そういうことなら致し方なし。わからないものはわからないのだ。


 折角だから、いろいろな場所へ行ってみようということで、魔物を倒しながらできる限り隅々まで回ってみたけど、これといった発見はなく、魔物についても特に変わったところはなかった。最後に魔王砦へと行ってみて、それ以上進めなければ交換優先の魔物ドロップを狙っていこうという話になった。


 魔王砦に到着すると、やはり入り口は閉じている状態だった。ゲートキーパーは山頂に封印してあるので今現在は手元にはない。あ、山頂行くのをすっかり忘れてたね。面倒だから却下の方向ではあったけど、本気で忘れてたよ。これじゃぁ入れないかな、と諦めていたけど、折角だから入り口の顔の部分を記念で触ってみようと思って触れてみると、何と、入り口が開くではありませんか!! ゲートキーパー持ってないんだけど。


「アイスさん、開きましたわね、、、。」


「ですね、、、。閉じてしまっていたから、記念に顔の部分を触っておこうと思って触っただけなんですけどね、、、。」


「折角開いたんだし、入りましょう!」


 セイラさんの一声で魔王砦へと突入することとなった。フライドさん達と入ったときもそうだったけど、魔王砦の魔物はルクレチ王国で現れる魔物よりも1ランク以上強い。ということで、強くなった敵に戦姫も大針きりで戦いをしていた。


 戦いつつ、魔王砦内を進んでいき、魔王のいた場所に到着したが、魔王がいないどころか痕跡すらなく、ただある程度広い空間がそこにあるだけだった。


「この場所に魔王がいましたのね。ここでの魔王はどんな姿だったのですか?」


 それを聞かれたとき、非常に困ってしまった。だってね、出現し始めたときに、ライムの光魔法を喰らわせたら消滅したものだから、、、。それをどうやって説明しろと? まぁ、ありのままを話したところ、なるほど、と納得して当事者のライムを褒めると、ライムはその場で嬉しそうに跳ね回っていた。可愛い。


 さて、そんなこんなで数日を過ごし、ルクレチ王国武術大会の日を迎えた。開会式みたいなものもあるらしいので早い時間に王城へと行かなければならないので、寝不足ではあったけれど早めに、というか日も出ないうちに起きることになった。そんな時間帯にも関わらず、マーブル達はしっかりと起こしてくれた。


 眠くてしょうがない状態だったけど、朝食を用意をした。とはいえ、ここで食べるのではなく、馬車で食べる予定だったから、手軽に食べられるものにした。


 準備が整った頃に合わせたかのように、戦姫の3人が登場。流石は王族、こういったものは慣れっこのようで、眠そうな表情をしておらず、シャキッとしていた。


 戦姫の3人も加わってすぐに、レオ達ウサギ族5体が来た。ルクレチ王国で馬車を引く係である。メンバーについて多少揉めたようだけど、武術大会当日は魔物狩りはしないよ、ということを話すと、じゃあルクレチ王国に最初に入ったメンバーということであっさりと決まったらしい。何とも現金なペット達だろうと思うと少し笑えた。


 向かうメンバーが揃ったので、転送魔法で元フライド邸へと転送した。この辺りは道が整備されていないから、道が見えてくるまでは普通に歩いて行く。魔物達が出現するけど、今日は戦う気がないから、さっさと撤退する。この国の魔物は撤退すると追いかけることはないので、ある意味便利である。


 ようやく道が見えてきたので、馬車を空間収納から出してレオ達と結びつける。マーブル達が引きたそうにしていたけど、今日のところは我慢してもらった。・・・本当だったら、レオ達に引いてもらうのでさえ気が引けるからね? 当人達は喜んで引いているけど、乗っている方は違う意味で引いているからね? 家の中でピョンピョン跳ねて可愛らしいウサギに馬車を引かせている絵を想像して欲しい、、、。


 未だに慣れないこの状況だけど、この状態で国内に入ってしまったのだから仕方がない。一応御者として乗り込んではいるけど、道はレオ達がバッチリ理解しているので、私としてはやることもないので、ただただ睡魔が襲ってきている感じだ。・・・まだ時間もあるし寝てしまおう!


 テシテシ、テシテシ、ポンポン。マーブル達が起こしてくれた、ということは、王城に近づいているということなのだろう。いつもと違うのは、その一部始終をアンジェリカさん達が見ていたということだ。


「・・・アイスさん、いつもあんな感じで起こしてもらっているのですか? ・・・羨ましい。」


「・・・ウサちゃんに起こしてもらうのは、ズルイ、、、。」


「アイスさんが機嫌悪くならない理由が分かった気がする、、、。」


 眠気が取れていないまま三者三様の感想を聞き流しながら、眠っている頭を起こそうと軽く頭を動かす。


 王城では軽い渋滞が起こっていた。無理もない、領民がこぞって王城へ来ているのだ。武術大会を見学するために。一応私達、というかアンジェリカさん達が招待客なので、優先的に通過できるのだろうけど、普通に並んで順番を待った。ってか、入り口1つしか無いので並ぶしかないんだよね、、、。


 結構長蛇の列となってはいたものの、それほど待つことなく私達の番が来た。


「ん? お前達、いや、貴方達は!」


「あれ? 国境で会いましたね?」


「はい、今日はこちらでの門番です。・・・ところで、我が国はいかがでしたか?」


「貴方のおっしゃったように、自然豊かな場所でしたね。もう少し暖かいと言うことなしでしたが。」


「そこは私達ではどうしようもないです。が、お喜びいただけたようで何よりです。」


「では、通過しますが、よろしいですね?」


「ハッ! 失礼致しました!! どうぞ、武術大会を楽しんでください!」


 そういう遣り取りがあった後、窓からアンジェリカさんが声をかけると顔を赤くしながら敬礼でもって応えた門番さんだった。


 門を通過すると、武術大会見学に行く道と、王城へと行く道に分かれていた。私達はもちろん王城へと案内されていくが、王城の入り口手前で馬車を降りるように言われたので降りると、アンジェリカさん達戦姫の3人だけが王城へと案内され、私達は馬車の待機所みたいなところがあり、そこで滞在するよう言われた。案内人いわく、直接招待された者だけが、貴賓席から見ることができるようで、私達御者については観戦してもいいけど、一般席からのみだそうだ。


 他国の御者達は一般席から武術大会の見物に向かっているらしく、馬とその世話係がいるだけだった。正直私は見るつもりはなかったので、のんびりと寝かせてもらうことにした。マーブル達やレオ達ウサギ族はその辺で遊ばせてもらうつもりのようだ。一応世話係の人に聞いてみると、この敷地から出なければ大丈夫ということだったので、その旨を伝えて私は御者席で一眠りさせてもらうことにした。というのも天気もよかったので馬車の中に入るより、外で寝たい気分だったからだ。


 しばらく眠っていると、いつものテシポンで起こされた。昼食の催促であった。折角なので、世話係の人にも一緒に食べるか聞いて、用意してくれるならお願いしますと言われたので、まとめて準備することにした。また、世話されていた馬達についてだけど、ナイトホースという軍用場として使用される魔物の馬だったので、ジェミニに通訳してもらい、彼らの分の食事も用意することになった。ついでだし、どうせなら一緒に食べる方が美味しいだろう。


 ナイトホースは魔物の馬としては中級クラスであり、うちにいるスレイプニルのアウグストと比べると数段ランクは落ちるけれども、それでも国によっては王家のみが所有を認められる位貴重な存在のようだ。馬とはいえ人と同じものは食べられるとのことだったので、みんな同じものを用意した。


 今回用意した昼食は、昨日作ったチャーハンだ。何故それにしたのか、というと、昨日は作りたてを食べられなかったからだ。今回もお肉は一般クラスのオーク肉だ。チャーハンには、下手に上品な油を出す肉よりも失礼な言い方だけど、下品で油たっぷりの肉で調理した方が個人的には美味いと思っている。


 問題なく完成して、皿に分けてみんなに配り、頂きますの挨拶をして食べる。うん、美味い。贅沢を言うと、もう1種類か2種類何かが足りなく感じるけど、それでも問題なく美味い。世話係の人達も、馬達もそうだけど、レオ達も絶賛していた。マーブル達は2日連続ではあったけど、嬉しそうに食べていた。


「アイスさん、昨日食べたときも美味しかったですが、やっぱり、アイスさんと一緒に食べた方が美味しいです!!」


「ミャア!!」「ピー!!」


 ジェミニが嬉しいことを言ってくれ、マーブルとライムもその通りだと言わんばかりに元気よく返事をくれた。・・・何て心優しい猫(こ)達なんだろう、、、。心の中がジーンとした。


 楽しい昼食会も終わり、再びのんびりし出す私達と、厩舎に戻るナイトホース達とお世話係の人達。会場から「ワーッ!!」と大歓声が聞こえてきた。優勝者が決まったかな。その後は表彰式といったところかな。それでは帰り支度でもしましょうか、そんな気持ちで世話係の人達に挨拶に行くと、世話係の人達が言うには、こんなに早くは終わらないから別の何かでも起こったんでしょう、ということらしいので、もう少しのんびり待つことにした。


 お世話係の人達が言っていたように、まだ終わりではなかったらしく、何か別の予期せぬ出来事が起きたみたいだった。とはいえ、お世話係の人達がいつも通りに過ごしていたので、悪いサプライズではなさそう。


 もうしばらくして、私が王城に呼び出しを受けることになった。何事!? と頭に「?」マークを出したまま案内されるままに王城内へと入ると、そこには少々機嫌の悪くなった戦姫と、フルボッコになっている参加者であろう人達の姿とオロオロしているだけのアリア姫だったか? と、呆然としている大臣と国王の姿が。


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ナイトホース「アンタらって、いつもあんな美味いもん食っているのか?」

レオ「ワシは毎日ではないが、そこそこ食べておるな。ここにいるジェミニは毎日食べておる、不公平じゃ。」

ジェミニ「ワタシはアイスさんの家族ですから、当然です!!」

ナイトホース「俺らも、アンタらのとこで世話になろうかな、、、。俺らなら役立てそうだし。」

レオ「・・・言っておくが、ワシらのところ、スレイプニルがおるぞ、、、。」

ナイトホース「ゲッ、そうかぁ、、、。」


泣く泣くあきらめた様子。

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