第185話 さてと、出会い頭の遭遇です。

前回のあらすじ:いろいろな倒し方で魔物をたおしてみた。



 ルクレチ王国で今までに無い魔物との遭遇のしかた、及び戦闘環境を体験して納得できるようなできないような、そんな微妙な感覚を持った状態で次の日を迎えた。


 今日というより武術大会を迎えるまでは、馬車は封印することになった。使わないからね。で、今日のメンバーだけど、私とマーブル、ジェミニ、ライムといういつもの4人と戦姫の3人というこれまたいつもの構成である。というのも、ウサギ達と豆柴達で同行するメンバーのローテーションを話し合うということで今日はあの子達は一緒ではないのだ。


 今日は村での探索がメインのつもりなので、戦闘そのものはそれほどない、つもりである。いや、村に見所がなければさっさと見切りを付けて、国内観光としていきたいので、戦闘しながら進むこともあり得る。急ぎなら街道の上を歩けば魔物に襲われないので、そこは臨機応変に対応できるのだ。


 今回はいつものメンバーだけなので、領主館から直接転送してルクレチ王国へと移動、昨日設置してもらった転送ポイントに到着。状況を確認すると、魔物の気配はしているが、一向にこちらに向かってくる気配が感じられない。戦姫の斥候担当のセイラさんも何か違和感を感じたようだ。


「アイスさん、魔物の気配は感じるんだけど、何かこっちに向かってくる気配はないんだけど、、、。」


「セイラさんも感じましたか。恐らく移動をしないと襲ってこないようですね。」


「何か、縄張りに侵入したら襲ってくる、という感じでしょうか。ということは、こちらが移動しない限りは襲ってこないということですの?」


「ああ、なるほど。そういう事かもしれませんね。アンジェリカさん達は多くのダンジョンを探索されていると思いますが、エリア内に侵入しないと襲ってこない魔物達っていませんでした?」


「え? アイスさん達の方がダンジョン探索に慣れているのではなくて?」


「そんなことありませんよ。私達が潜ったダンジョンって、氷王の訓練場と恵みのダンジョン、それとあの場所くらいしかありませんからね。」


 そう、私達はダンジョンの経験はあの2つ、いや3つか。その3つ目というのは、前世(とある中年男性の転生冒険記をご参照ください。)で戦姫の3人と1度だけ一緒に行ったことのあるダンジョンである。前世は1年足らずという非常に短い期間だったので、ねぐらのある広大な森の他にはタンヌ王国、しかもタンバラの街近辺しか町というものを知らないのだ。今はそれなりの広さを移動できたりしているけど、一応領主なので探索優先という行動はとることができない状態である。


 ・・・他の領主と比べて好き勝手に移動したりしていることは否定しないよ、しないけど、正直、こんな身分をさっさと捨ててマーブル達とあちこち動き回りたいという気持ちは半分ある。今いる領民達との暮らしも非常に楽しいので、今のままでも別に良いかな、という気持ちが残りの半分である。


「ええっ!? って、そうでしたわね、、、。」


「そういうことです。氷王の訓練場については、以前いた世界での記憶の内容とほぼ一致していたので問題なく探索できておりましたが、それ以外はさっぱりですからねぇ。」


「アイスさん達って、マジックバッグみたいなものが初めっからあったから、ダンジョンとかでも苦労はしていないよね、、、。」


「まあ、それはおいておきまして、部屋型のダンジョンがそうでしたわね。そういったダンジョンでは、通路では魔物に遭遇しなかった記憶がありますわ。そんな感じのダンジョンだというつもりで臨めばいい、ということですの?」


「そういう認識で構わないと思います。まあ、ここで話をしているのもいいですが、とりあえず先に進んでみましょうか、ということで戦闘準備はできておりますか?」


「もちろん抜かりありませんわ!」


「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」「ピー!」


 戦姫の3人はもちろん、他の4人も、って4人!? ああ、オニキスか!! アンジェリカさんの肩の上に乗って短いけど、触手を出して応えていた。何これ!? 非常に可愛いんですけど、、、。


「みんな大丈夫なようですね。恐らくこの地域ですから、キラービーが相手となるでしょう。確証は全くないけどね。では、行きましょうか!」


 そう言って先に進むと、ずっとそこにとどまっていた魔物達が、一斉にこちらに向かって来た。数はそれでも5体か、って少なっ! って思っていた時期が私にもありました。・・・何これ? すっかり慣れた暗転の後、出てきたのは巨大なゴーレムでした、、、。しかも、それぞれ何かポーズを取っているんだけど、、、。


「な、何ですの、これ、、、。」


「き、筋肉アピール、、、?」


「・・・キモい。」


「ミ、ミャァ?」


「こんなゴーレムさんもいるですか、、、。」


 それぞれが驚きの感想を述べていたけど、ライムとオニキスは平常運転だった。とりあえず、鑑定だね。


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【スマッシャーズ】・・・見ての通り、ゴーレムのパーティじゃな。当人達は、森の平和を守る指名を持って行動しておるそうじゃが、周りから見たら迷惑そのものっぽいから、安心して戦って欲しい。ちなみに、ボスという存在はないから、全部倒す必要がありそうじゃの。それではメンバーの紹介じゃぞい。


【スマッシュ・レッド】・・・炎のゴーレムじゃ。リーダーじゃぞい。理由は赤いからじゃ。ちなみに赤いからといっても、他より3倍速いということは無いから安心するがよい。

【スマッシュ・ブルー】・・・氷のゴーレムじゃ。

【スマッシュ・ブラック】・・・闇属性のゴーレムじゃな、珍しいのぅ。

【スマッシュ・グリーン】・・・これまた珍しい、毒属性のゴーレムじゃ。

【スマッシュ・イエロー】・・・意外にも雷属性じゃぞい。

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 チーム組んでるのかよ、、、。しかも全員いろいろなポーズしているくせに、全く揃っていないわ、動きに統一性が感じられないわで、一体何をしたいのかさっぱりわかんねぇよ、、、。何で、一番重たそうな青いのが最も動きが激しいのか理解できん、、、。何かドヤ顔までしやがって、、、。


 この国で出現する魔物は、こちらが攻撃態勢に入らないと攻撃してこないので、幸いにも不意打ちは免れている。不意打ちアリでこんな連中に襲いかかられては、苦戦は免れないどころか、下手したら全滅もあり得るぞこれ。本当に遭遇したのがこの国でよかった、、、。


 とりあえず鑑定結果をみんなに伝えると、「チームだったんだ、、、。」という答えが返ってきた。そうだよね、あんなにバラバラでチームも何もないだろう。一応念のために、退却する? と聞いたけど、全員揃って首を横に振った。では倒しましょうか。


「少し悩みましたけど、こうします。赤いのは私が倒します。ジェミニ隊員、青いのをお願いします。黒いのは、アンジェリカさんとライムとオニキスで、緑はマーブルに頼むね。黄色いのはセイラさんとルカさんでお願いします。多分相性はこれでいいと思うので意外とあっさりと倒せると思います。」


 全員が敬礼で応えてくれたので、戦闘開始である。それぞれ担当するゴーレムの正面に移動して構えをとったので、ゴーレムもそれに対応して攻撃してきた。ある意味単純でよかったよ、、、。


 私はオニジョロウに氷の矢をつがえる。赤いやつは一旦距離を取り、何と口から火の玉を吐き出した。火の玉自体はデカいので、矢で射落としてみようと矢を放つと、狙い通りに火の玉に命中して迎撃成功。赤いやつはそれを見てニヤリとして連発してきたが、私もそれに対処するべく連発で迎撃する。何これ、楽しい! 幸いだったのが、命中すると相殺されて消えることだった。というのも、火と水ってぶつかると大量の水蒸気発生するじゃん? そうなると周りが見えなくなって困るんだよね。でも、今回それがない。ということで、射撃訓練としゃれ込みますか。


 他はというと、ほぼ圧勝の様子だった。青いゴーレムは、見た目通り重たかったようで、ジェミニが土魔法で一部をもの凄く軟らかい土に変えて待ち構えると、その場所に来た青いやつは、足を取られて動けなくなり、その隙を突いたジェミニは、一瞬で至近距離に近づいてあちこちを蹴りまくり、ある場所がコアに命中して一機撃墜。


 黒いやつは、ライムがオニキスに光魔法を纏わせ、そのオニキスをアンジェリカさんがバットを振る要領でオニキスというボールを打ち、光のボールとなったオニキスが黒いやつに突進。アッサリと黒いやつは撃墜された。


 緑のやつは、マーブルの放った風魔法で全身を覆われて、何もできずにアッサリ終わった模様。


 黄色のやつは、セイラさんとルカさんの合体技「サウザンドアロー」でこれまた瞬殺。この技は、セイラさんの乱射にルカさんの風魔法を乗せて、勢いを増した状態で敵に矢を当てていく技だそうだ。以前から極まれに使用していた合体技だそうだ。余り使わないのは、矢が勿体ないからだそうだ。そうだよね、ほぼ無制限に矢を生成できる私とは違って、普通の弓使いは矢も用意しないとならないからねぇ、、、。って、セイラさんの弓って、魔力込めたら矢って生成できたよね? って言うと、すっかり忘れていたと少し落ち込んでしまっていた。


 他の4体はみんながアッサリ倒していたのにもかかわらず、私は射撃訓練を楽しんでいた。他の4体を倒したことに気付いたのは、私が火を撃ち落とす度に、お見事とかそういった声が聞こえるようになったからだ。赤いやつも何か楽しそうに火を吐き出していたが、その声で周りに自分以外いないのに気付いたようだったけど、まあ、いいかと構わずに火を放ちまくっていたようだ。・・・チームじゃないんかい、、、。


 その後何故か、マーブル達もその射撃訓練に参加しだし、ゴーレムも楽しそうに火を噴きまくっていた。しかし、楽しいことはいつまでも続かない。終わりというものは唐突に起こるものだ。火をバカスカ撃っていたゴーレムだったが、突然倒れて消滅してしまった。いわゆる魔力切れだろう、、、。ありがとう、赤いゴーレム、楽しかったよ、と感謝の気持ちを込めながら消滅していくゴーレムを見ていた。


 ゴーレム達が全滅し、場面が暗転して戦闘開始した場所に戻った時には、そこには数えるのも嫌になるくらいの大量の魔石とインゴットが転がっており、その近くには大量の魔導具と覚しきものが5台ほど、後は何か巻物が一枚落ちていた。


 私のみならず、周りにいたメンバーもその数には唖然としていたが、気を取り直して鑑定しながら空間収納へとしまっていく。さっさとしまわないと、消えてしまう可能性が高かったからだ。何も考えずに拾ったものだから、久しぶりに検索をかけて数を確認する。


・魔石・・・火(中)×50、水(中)×50、風(中)×50、土(中)×50

・インゴット・・・赤魔鋼×30、青魔鋼×30、緑魔鋼×30、茶魔鋼×30


 ・・・もの凄い数だな、、、。ってか、何でこんなに数が均等なんだろうか? まあ、もらえるものはもらっておきましょうかね。では、残るはあのデカい魔導具と、巻物かな。


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【赤い彗星】・・・ほう、これはかなりデカい魔導コンロじゃのう。これでさらに大量の料理が作れるぞい。楽しみに待っておるからのう。

【青い宿命】・・・ふむ、これは氷を作ってくれる魔導具じゃな。暴走はせんから安心するがよいぞ。

【黒い連星】・・・ほう、これは黒い甘いものを生み出す魔導具じゃな。この装置を踏み台にしてはいかんぞ。

【緑川ライト】・・・むむむ。これは猛毒を生み出す魔導具じゃな。料理に入れるも良し、武器に塗るもよしの使い勝手の良い液体じゃな。「これであなたも一流の暗殺者!」じゃ。励めよ。

【メロウイエロー】・・・これは「ゴーレムコア」と呼ばれる魔導具じゃな。これを使ってゴーレムを作ることができるぞい。とはいえ、お主には無理そうじゃな。作れそうな者にあげるのも良いかもしれんの。

【マブダチの証】・・・お主、あのゴーレムに気に入られたようじゃな。ここに描かれている文言を読むとあやつらを召喚できるみたいじゃぞ。

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 ・・・何かツッコミどころ満載なんだけども、、、。しかも、名前と内容が全く一致してないし、さっぱり訳が分からん、、、。緑川ライトとかふざけんなよ! どう見ても人名じゃねぇか! 自爆するんか!? 何が一流の暗殺者だ! しかも励めよ、じゃねぇよ!! ・・・とりあえず緑川さんは封印だな。危なくてこんなモン使えねぇよ、、、。


 更に意味がわからんものが、この「マブダチの証」だ。気に入られる意味がさっぱりわからん。それとアイツら呼ぶ意味あるのか!? メンバー全員がドン引き+唖然としたんだぞ!? まあ、いいや。こいつも封印だね。焼却してもいいけど、こういうモノに限って焼却とか不可能なものって多い。そう、処分不可というものである。さっさと封印だ。


 それにしても、どこかのアニメの2つ名のような名が付いている魔導具は名前にさえ目をつぶればかなり有用なものであるのは間違いない。問題はどこからあの名前が付けられたのか、ということ位である。特に黒い連星という名の付いた魔導具はもの凄いと思う。恐らく予想が正しければ、黒い甘いものというのは恐らく黒砂糖だろう。しかも魔導具生成だから、かなり純度が高いそのままでもおやつとして成立するくらいの良質な黒砂糖のはず。


 また、ブルーデステ、じゃなかった、青い宿命についてもかなりヤバい代物である。何せ氷を作ることができるのだから。フロスト領、いや、フロストの町では、私の水術があるので冷たいものを食事や飲み物に出せるけど、他の場所では不可能ではないにしてもコストが非常にかかるものである。それをこいつは問題なく解決してくれる。


 これらのことを他のみんなにも説明して(もちろん、ツッコミどころ満載の部分には全く触れずに)、周りのテンションもある程度戻ってきたところで、改めて村へと向かうことになった。


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アマデウス教会での戦略会議中にて、、、。

トリトン陛下「!!」

ラヒラス「!!」

リトン宰相「陛下!? それにラヒラスまで!?」

トリトン陛下、ラヒラス「アイス(様)が!」

リトン宰相「はぁ、、、。」


重要案件中で白熱していた空気が一気に氷点下になった模様。

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