第184話 さてと、この国の戦闘は少し異なるようです。
前回のあらすじ:面倒だけど謁見したら、来るのが早いと怒られた。
私達はこの国の魔物と戦って見るべく街道ではなく、街道沿いを進むことにした、というのも、何故かわからないけど、街道の上を歩いている限りは魔物が襲ってこないのだ。ということで、試しに街道を離れて歩いてみようということで今は街道に沿った草の上の部分を歩いている。もちろん全員戦闘モードに切り替わっており、戦姫の3人は冒険者の格好に戻っており、馬車を引いていた5体のウサギ達も今は馬車は空間収納にしまってあるため自由に動くことができる。
少し歩くと、森の中でじっとしていた魔物達が一斉に襲いかかってきた。よし、迎撃の前に鑑定だ、とか思っていると、視界が少し暗転し、暗転はすぐに治まったが、先程とは全く違った景色がそこには広がっていた。すぐ側に街道はなく、辺り一面の草原である。
「アイスさん、一体ここは?」
「恐らく、戦闘空間みたいなところに飛ばされたんでしょうね。」
最初こそ驚いていたけど、この国はそういう場所なのだと思い直した。これでほぼはっきりした。まんまあの世界やん!! こんなところまで忠実に再現されているのかよ!! しかも、床をよく見ると、一面の草原ではあるけれど、何か草のタイル? みたいな感じで互いに色違いのタイルで敷き詰められている感じ、いや、同じ規格だけど、作った会社が違う状態のの人工芝を並べた感じの方がわかりやすいのか? とにかくそんな状況だった。とはいえ、やることは変わらない。まずは鑑定だ。アマさん、よろ。
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【ストライクドッグ】・・・この国では標準的な魔物のようじゃな。集団戦を得意としておるので油断は禁物じゃぞ。で、集団にはボスがおり、そのボスを倒すと一気に瓦解するようじゃな。ボスじゃが、見た目で判断しやすいから見落とすことはないと思うぞい。
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あれ? 食える食えないの表示がない、、、。何でだろうか? まあ、いいや。ボスを倒すと瓦解するのは所謂「ブレイクダウン」となるんだろうな。ってことは、ボスを最後に倒さないと報酬無しか? 最初はボスを最後に倒して確かめてみるか。数も30体と腕試しには丁度いいかな。
「・・・アイスさん? 何か我らが普段戦っている魔物とは少し違う感じがするのですが、、、。」
「うん、何か仕掛けてこないのが不思議、、、。」
「恐らく、退却したければどうぞ、ということなんでしょう。退却してみます?」
「我が主よ、折角だから倒したいぞ!」
私が試しに退却してみるか聞くと、レオが即座に否定した。やっぱりうずうずしてたのね、、、。ウサギ達も戦いたいようで、レオの言葉に頷いていた。いや、マーブル達もか、、、。じゃあ、戦いますかね。
「レオ達が戦いたいようなので、戦うことにしますが、ボスは最後に倒すようにして。少し試したいことがあるから。」
私がボスを最後に倒して欲しいことを伝えると、みんなが頷いた。
「じゃあ、レオ達ウサギ部隊と戦姫の3人は3体ずつ頼みます。マーブルとジェミニは2体ずつね。ライムとオニキスは護衛とサポートよろしく。私は雑魚1体とボス1体を倒すことにします。」
みんなが敬礼で応えた。マーブル達は言うまでもないけど、ウサギ達の敬礼も破壊力抜群だ。戦姫はサマになっていてかっこよかった。
「では、戦闘開始!!」
私の合図に、メンバーのみならず、魔物達も攻撃してきた。ここではそういうものなのだろう。たまにはこういう戦闘もいいものだと思いながら、オニジョロウを取りだし水術で氷の矢を作りだし、弓につがえて狙いを定める。私の狙いは雑魚1体とボスである。幸いにもボスの側に控えるのは1体のみだった。よし、あれを狙いますか。少し距離はあるけど、何とかなるよね。
私は雑魚の方に狙いをつけて、いつもより少し大きく引き絞る。とりあえず弦が顔に当たらないように気をつけないと。使い慣れてきたのと、矢の重さもあって、凄い速さで一直線にターゲットに向かい、狙い通りに頭部を貫いた。雑魚はボンっと消えた。・・・ありゃ、倒すと消えるのか、、、。あとは私の担当はボスだけになるけど、まだ雑魚は残っているのでしばらく待機だ。
周りを見ると、マーブルとルカさんは火魔法で燃やして倒していた。何だか2人が嬉しそうに燃やしていたのは気のせいだろうか、、、。セイラさんは弓ではなく、短剣で戦っており、ストライクドッグの体当たりを上手く躱して首筋に一撃を加えて仕留めていた。
一方、ウサギ達だったが、ホーンラビットの2体は凄い速さで突進して、自分たちの10倍もの大きさであるストライクドッグの胴体を串刺しにして一撃で仕留めており、ジェミニやレオはもちろん、ファーラビットやベリーラビットまでも、カウンターでストライクドッグの頭部を蹴りつけ一撃でしとめていた。
全く危なげないどころか、一方的に蹂躙していた光景に今更ながら驚いた。まあ、何だかんだ言って、ドラゴンだのグリフォンだの倒しているからねぇ、、、。
他のメンバーが雑魚を全員仕留めたのを確認して、私も最後の1体となったボスに矢を放ってこちらもヘッドショットを決めて戦闘終了。不思議なことに、魔物を全員仕留めると再び軽い暗転の後、襲撃される前の場所に戻ってきた。ありゃ、戦利品は? とか思っていると、近くに先程のストライクドッグのものと覚しき毛皮が5枚くらい、牙が15本落ちていた。肉は落とすかと思っていたけど、落ちなかった。犬肉って食べたことないから抵抗があったので、手に入らなかったことに正直安堵していた。マーブル達は逆に、肉を落とさなかったことにガッカリしてたけど、、、。ゴメン、私は無理だから、、、。
「しかし、不思議ですね。魔物を倒しても消えただけで、全滅させて何か素材が出てきましたけど。」
「ですわね。アイスさん、試したいことがあるって仰いましたよね? 教えてくださるかしら?」
「試したいことですか? ああ、簡単なことです。ボスを最後に倒すのと、ボスを最初に倒すのを何度か試してみようかと思いまして。」
「ボスを最初に倒すのと、最後に倒すのとでは違うのですか?」
「はい、実は先程鑑定したのですが、どうも、ここの敵って、ボスがいる集団に関しては、ボスを倒した時点で戦闘が終了するんですよ。」
「そうなのですか!? でしたら、さっさとボスを倒す方が楽ではありませんの?」
「まあ、普通に考えるとそうなんですけどね、ただ、そうしてしまうと、魔物の素材が全く手に入らないとか、手に入ったとしても最低限になってしまうのではと。」
「なるほど。確かに、苦労して倒しても何も手に入らないのは悲しいですわね。」
「そうなんですよ。でもねぇ、、、。」
「ええ、仰りたいことはわかりますわ。面倒な魔物の場合ですと、割に合わない、ということですわよね?」
「その通りです。何か、この国の魔物って、他の国とは違う感じがしますしね。」
「ですわね。先程の戦闘もそうでしたが、倒した瞬間に消えてしまいましたわね。」
「・・・ひょっとして、この場所ってダンジョン?」
ルカさんが呟いた一言で、アンジェリカさんが反応した。
「確かに! ダンジョンでしたら、このような不可思議なことが起きても納得できますわ!」
うわぁ、ダンジョン、何でもアリなんだなぁ、、、。まあ、フロスト領にあるダンジョンもある意味何でもアリの世界だったし、仕方ないか。
「だとすると、街道の上はセーフティゾーンになるのかな?」
「そうかもしれませんね。まあ、あくまで推測の域を出ませんが、、、。」
私達でこの辺りの考察をしていると、レオが我慢しきれないのか、体当たりで催促をしてきた。もちろん、ペットモードの状態の体当たりである。全力で来られたら防げないし、下手したら死ぬ。いや、死ぬのは構わないけど、こんな間抜けな死に方は勘弁して欲しいかな、、、。
レオの体当たりを合図に、ウサギ達はもちろんのこと、マーブルやジェミニまで参戦、モフモフ地獄、いや、この場合だとモフモフヘヴンと言った方が正しいかな。もみくちゃにされた。困惑半分幸せ半分といったところだろうか。君達、離れてくれないと、先に進めないんだよ、、、。別にこっちはモフモフに囲まれて幸せの状態だからいいけど、、、。と思ったら、アンジェリカさんが「次、行きますわよ!」と声をかけて、モフモフ達は一斉に散開した。ああ、モフモフがぁ、と少しは思ったけど、埒が明かないからねぇ。
気を取り直して進軍再開した。少し歩くと50メートル位先からいきなり魔物の気配を探知した状態になり、その気配は一斉にこちらに向かってくる。いきなり沸いてでるということは、ほぼダンジョンで間違いないようだ。そうなると、どこからどこまでがダンジョンであるか非常に気になるところだけど、恐らく魔物の沸きかたで判断できそうだから、これについては放っておくとするか。
今回の魔物もストライクドッグの群れだったので、先程と同じように倒して、毛皮と牙を手に入れた。それを何度か繰り返し、今度はボスから倒してみると、毛皮と牙は良くても1つずつ、全く手に入らないということさえあった。ついでなので、雑魚を3分の1とか、半分とか、3分の2とか倒してからボスを倒すという方法も試してみたが、結果はいきなりボスを倒した場合と同じであった。つまり、ここで魔物素材を手に入れたければ、雑魚を全て倒してからボスを倒す必要があるということがわかった。
それらがわかったところで、村の入り口近くまで進んだけど、レオ達がまだ戦いたそうにしていたので、もうしばらく付き合うことにした。まあ、何だかんだ言っても、私もマーブル達もそうだけど、戦姫の3人も楽しんでいるので問題ない。
とはいえ、流石にストライクドッグの群れは少し飽きた気がしたので、別の魔物を求めて移動を開始した。というのも、街道沿いに出てきたのはストライクドッグの群れ以外にはおらず、しかも結構頻繁に出てきていたのだ。飽きるなという方が無理だと思う。数もまばらで、10体程度のときもあれば、50体とかとんでもない数のときもあり、しかも、手に入るのが毛皮と牙だけなので、テンションも下がるというもの。毛皮自体は悪くないけど、恵みのダンジョンで手に入れている羊毛を加工した品々に慣れている身としては、少々物足りないのも事実だったりする。
そんな訳で、森の中に入ってみたりとか、いろいろな場所で魔物狩りを敢行してみると、やはり場所によって出てくる魔物の種類が異なることがわかったので、できるだけいろいろな場所へ行って魔物狩りをしていこうと決まった。レオ達は大はしゃぎだった。
「主よ、これは毎日が楽しみじゃ!!」
「いや、レオ、明日は豆柴達の番だからね。」
「な、何じゃと!? あの交代はこの国に来るまでという話では!?」
「うん、そうなると、レオ達も明日からお役御免になるからね。」
「な!?」
「同じ領民なんだから、そこは平等にしていかないと。わかった?」
「ぐ、ぐぅ、、、。わ、わかったのじゃ。それなら我慢して、1日おきにするのじゃ。」
「あ、あと、レオ。族長権限を使って、ウサギ族の担当の日だからって、自分だけ必ずねじ込まないようにね。」
「な、何故分かったのじゃ!?」
「いや、レオ、わからないと思った?」
レオは少し落ち込んでしまう。それを見たアンジェリカさんが、
「アイスさん、レオちゃんが落ち込んでますが、一体どうなさいましたの?」
私が理由を説明すると、みんなで笑い、その笑いが治まると、
「アイスさん、どうでしょう? 確かに約束ですと、ウサギ族のみんなと豆柴ちゃん達は1日おきということでしたが、狩りについては少し変更してみては?」
アンジェリカさんがそう言うと、セイラさんやルカさんだけでなく、マーブル達も同意していた。
「みんなにそう言われると、変更せざるを得ませんね。わかりました。じゃあ、レオ、ウサギ族と豆柴達でしっかりと話し合って決めてね。」
「わかったのだ! 主、ありがとう!!」
そう言ってレオが飛びついて来たので、抱き留めてモフモフを少し堪能する。
「レオ、言いだしたのはアンジェリカさんだから、アンジェリカさんにお礼を言わないと。」
「た、確かにそうじゃな。アンジェリカの嬢ちゃん、ありがとうな!!」
そう言って、レオはアンジェリカさんに飛びついた。まあ、アンジェリカさんはウサギ語がわからないので、傍目では可愛いウサギが「ピー!!」とか言って飛びついてる位にしか見えないけど。アンジェリカさんはアンジェリカさんで、「そんなに嬉しかったのね。」とモフモフを堪能している様子。ルカさんが「羨ましい、、、。」と呟いていたのを聞いたのか、他のウサギ達が気を遣ってルカさんに次々と飛びついてしまい、流石のルカさんもトリップ状態となってしまったので、治まるまで少し時間がかかってしまった。
何とか落ち着いたので探索を開始し、魔物と戦って回った。戦利品だけど、キラービーの集団からはハチミツと毒針を。ちなみにハチミツの品質だけど、我が領のハニービーには劣るとはいえ、かなりの質であり、領内でも十分ご馳走として扱える良品だった。他には魔草やら毒消し草といった植物や、様々な食べ物を手に入れることができたが、残念ながら領内でも食べられる種類のものだったので、これは交換用だな。
とはいえ、戦果は十分あったと思う。今日のところはフロストの町に戻って、改めて明日村へと行こうということで、人の来そうもない且つ村に結構近い場所に転送ポイントを設置してもらいフロストの町へと転送してこの日は解散した。
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リトン宰相「陛下、今日は大人しいですな。」
トリトン陛下「ああ、今日は新しいものは期待できないからなぁ。」
リトン宰相「フロスト侯爵の件ですか?」
トリトン陛下「それ以外に何がある?」
・・・やはり鼻が利く皇帝陛下だった。
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