第121話 さてと、これより出発です。

前回のあらすじ:メシをたかられました、、、。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン、つんつん、はい、恒例の朝起こしでございます。今回はコカトリスさんも参加しておりますね。ということで、気分良く目が覚めたと思ったら、何か大きめの球みたいなものが飛んできたので、思わずガードしてしまったが、しっかりとキャッチ成功した。一瞬何が起こったのか少し考えたのだけど、何ということはなかった。昨日より我が領の住民? となったゼラチンマスターのゼータがこちらに飛びついてきたのだった。あれ、ほぼ全てゼラチン質で構成されているから、案外硬いんだよね、、、。ライム並のぷよぷよ感が欲しいものだけど、ないものは仕方がない。



 目が覚めたところで、朝モフをしてから身支度を調える。昨日はいろいろとあって、精神的にもボロボロになっていたため、ねぐらで風呂や洗濯ができなかったので、いつもは顔を洗うだけなんだけど、今回は頭も一緒に洗ってしまおうということで。



 とりあえずサッパリしたので、朝食の準備を始める。準備を始める前にはコカトリスはいつも通り産みたて卵をくれたので、ありがたく頂いて調理に使わせてもらう。



 何だかんだ過ごしているうちに、用意しなければならない食事の量が増えていったことに気づいたのは今更だろうか、、、。最初こそ、私とマーブル達の分だけで済んでいた準備が、ここ最近はアンジェリカさん達も加わったことにより増えていた。で、ゼータも留守番要因とはいえ、普段の食事は私達と一緒に食べることにしているため、追加の形となっている。まあ、このメンバーならいいか、とか思っていたけど、そこに思わぬ乱入者がいるわけですよ、、、。



「おう、侯爵! 早速お世話になりに来たぜ!!」



「・・・何で、朝っぱらからいらっしゃりやがるんですか、、、。」



 ハイ、ご存じ我らが陛下ですね。ちゃっかりとリトン公爵夫妻もおいでですよ。



「陛下、朝食は町の屋台ということではなかったのですか?」



「おっと、そうだったな! ということで、侯爵、また夕食時にな!!」



「フロスト侯爵済まんな、、、。陛下が折角だから、フロストの町での味を知りたいと聞かなくってな。」



「そういうことでしたか。で、なぜリトン公爵夫妻までご一緒なんです?」



「いや、マリーがどうしてもって聞かなくてな。それと、フロストの町であれば、我らだけで移動しても問題ないからなあ、身分的にも安全的にも。」



「・・・まあ、そういった評価をして頂けるのは光栄ですけどね。」



「とりあえず、今は朝食を頂いたら勝手に戻るから、道中気をつけてな。」



「ありがとうございます。」



「では、また、夕食の時に。」



 あんたたちもかい、、、。今日は仕方ないにしても、今後どうするかはフェラー族長とカムドさんに相談だな。どちらにしても、朝食では邪魔も、いや、お客様はいないから、私達の分だけでいいかな。



 無事朝食を終えて、サムタン公国へと行く準備をするつもりだったけど、実際に準備してみると、それほど必要なものはなかった。というより、普段通りの準備で事足りた。というのも、道中は基本的に冒険者としてのんびりと移動するつもりだし、どうせならそっちで依頼を受けるのもアリだということで話し合いは済んでいたのもあるし、何よりも基本的には、夕食時にはフロスト領へと戻ることになっていたからである。



 夕食の度にフロスト領へと戻るのは、もちろん私の政務に影響が出ないようにするためというのが一番大きいのだけど、それ以上にサムタン公国の情勢面でかなり面倒そうな気がしたためである。というのも、サムタン公国では貴族の権力がもの凄いそうだ。トリトン帝国内もかなりひどいものだったけど、公国ではそれ以上らしい。また、ハングラー教とのつながりもかなり強いらしく、そういった意味で日中はともかく、日が暮れてまで、面倒毎につきあうのも勘弁して欲しいという気持ちも多分に含まれている。



 それと、向こうはメシが美味しくなさそう、というのもある。サムタンという名前といい、ハングラー教という名前といい、どこかの国を彷彿とさせる部分もかなり大きかったりする。ひょっとしたら、ただ辛いだけの料理を自信満々に出してきたり、本来は違う肉なのに、少し高そうな肉を焼いたのを郷土料理とか言いそうな気がするのだけど、気のせいだと思いたい。



 また、サムタン公国へのルートであるが、本来なら街道を進んで先日お世話になった国境砦を抜けて、タンバラの街を経由してタンヌ王国とサムタン公国の国境を通過するのが基本だけど、今回は思いっきりショートカットという意味で、元第2ねぐら、現在はフロスト領内にあるトリトン陛下の直轄地から一気に移動することにした。



 あの場所は、実は、サムタン公国へ移動する際の一番の近道らしく、タンヌ王国は経由しなければならないけど、すぐさまサムタン公国への国境へと移動できる。もちろんトリトン陛下にはそこから移動する許可をもらってあるので、大丈夫である。というのも、一応直轄地となってはいるが、水場である湖が無事であるならば好きにして構わないとまで言っていた。それを聞いたときは、直轄地なんだから、アンタがどうにかしなさいよ、みたいな気持ちになった。



 まあ、皇帝陛下とはいっても、実際は海神であるので、本性はそんなものかも知れない。それでもある程度自重して欲しいのは間違いない。何せ一番被害を受けているのは私なのだから、、、。



 私の方は準備ができているけど、戦姫はというともう少し時間がかかるとのことだったので、マーブル達がゼータと遊んでいるのをホッコリしながら見つつ、フェラー族長とカムドさんと皇帝陛下達の襲撃、もとい、夕食会の料理人について話しながら待つことにした。屋台などの食べ物を食べてもらい、好みに合った人達をメインにしてもらう予定だ。一応週に最低でも2日くらいは私が担当しないとまずいだろう、という話にはなっているけど、できれば全部領民の誰かに当番制という形でお願いしたいのが本音だ。まあ、無理だった場合は最悪、新作という名の実験台にでもなってもらいましょうか。とはいえ、美味しくないものを出すつもりはないけどね。



 そうこうしているうちに、戦姫達の準備もできたようで、こちらにやってきた。



「アイスさん達、お待たせして申し訳ありません。」



「いえ、それほど待っておりません、むしろ思った以上に早かったな、と。」



「そうですの? まあ、野営の準備などはあまり必要ありませんでしたから。念のためにと最低限は準備してありますが。」



「流石ですね。では、早速参りましょか。フェラー族長、それにカムドさん、留守中はお願いしますね。」



 フェラー族長とカムドさんが頷いたのを確認して、マーブルに視線を送ると、マーブルはいつも通りに可愛い鳴き声を出すと、足下から魔方陣が出現して私達は元第2ねぐらへと転送された。



 第2ねぐらの辺りはほどんど見向きもされていない地域であるため、一応国境は設定されているが、国境警備などはもちろんない。というのも、それほど険しくないとはいえ山地な上、トリトン帝国は国力がかなり乏しく、タンヌ王国とも交流がほとんどない状態な上、今でこそフロスト領として開発は進んでいるが、私がここで開発をしなければ特に何も無い地域だったためだ。



 それともう1つ理由がある。この国境地域には比較的強力な魔物が生息しているが、街道沿いを進んでいる限りは安全らしいが、逆をいうと、国境地域に踏み込んでしまうと、その強力な魔物と遭遇してしまうということでもある。ただ、いくら強力な魔物とはいえ、このメンバーには戦姫の3人もいれば、マーブル達もいるため、私達にとっては脅威どころかむしろ役不足な感が強い。



 もちろん、私はこの地域には来たことも無いし、戦姫も1度来たくらいだそうで、実際にどうなのかは知らないようだ。ちなみに情報源は冒険者ギルドであるため、間違いはなさそうだ。



 道中を進んでいるけど、魔物が出現する気配がない、、、。念のため気配探知をかけているが、その探知にすら引っかかっていない。マーブルにも聞いてみたが、マーブルの探知にすらかかっていないようだ。未知なる素材に少し期待したけど、ムリそうかな。



 また、道中の山道だけど、森や林ではないけれどもはげ山というわけではなく、所々に木が生えていたり、植物がぽつぽつと生えていた。魔物に期待せずに新たな植物に期待しましょうかね、、、と、思っていた時期が私にもありました。ちょこちょこ鑑定にかけてるけど、まあ、食べられないものばかりでしたよ、ええ。



 魔物に遭遇しないわ、食べられない植物ばかりだわ、と少しガッカリしながら山道を越えてタンヌ王国側の街道まで進んだ。街道からはサムタン公国へと道沿いに進んでいった。



 途中で昼食の時間になったので、休憩を兼ねて昼食を摂ることにした。途中で旅人か誰かに遭遇するかなと思っていたけど、全くそういったことはなかった。何も遭遇せず進んでいく切なさを感じつつ昼食も終わって道中を進んでいく。まあ、先日に戦いがあったので致し方ない部分もあるか。



 そんなこんなで国境に到着。もちろん警備隊に呼び止められる。



「身分証があれば出してもらおう。」



 外交的な訪問ではあるが、一冒険者として入国するつもりだったので、冒険者証を提示する。



「ふむ、Cランクの冒険者か、ほう、テイマーとな? で、そこにいるのがお前の従魔か? ふーむ、見たところフォレストキャットにファーラビットにスライムか、そんな従魔でCランク冒険者なのか、、、。トリトン帝国の冒険者レベルは低いようだな、、、。」



 守備兵はそう言いながら含み笑いを浮かべていた。まあ、マーブル達の本来の姿を知らなければこういう反応になるわな。しかし、アンジェリカさん達の冒険者カードを確認してから、その表情は一変した。



「な、何と、戦姫の方達でしたか! こ、これは失礼しました!! サムタン公国へとようこそおいでくださいました! 名高き戦姫の方達を、こうしてお会いできるなんて感激です!!」



 いやあ、素晴らしいほどの掌返し、ここまで凄いと逆に尊敬するね。それにしても、見た目とランクでしか判断できないとは、この国は大したことないな。まあ、ボンクラ揃いの方が対処がラクだからそっちの方がいいか。



 戦姫にデレデレしていたかと思ったら、こちらには上から目線で言ってきた。



「戦姫と一緒に来たようだから、特別に入国許可は出してやるが、あまり騒ぎは起こすなよ。」



 そんな感じではあったけど、一応入国許可は取れたので、これでようやくサムタン公国へと入国した。このまま街道沿いに進めばサムイの町へと到着すると、守備兵が言ってたな。戦姫にはデレデレしながら聞かれたことを答えつつ、私には嫉妬であろうか、憎悪の視線を向けていた。これもいつも通りの展開だね。



 ある程度進んで人気の少なそうな場所を見つけたので、とりあえず一旦フロストの町に戻りましょうかね。マーブルに頼んで転送ポイントを設置してからフロストの町へと戻ることにした。別に急ぎの旅でもないからゆっくりと進むとしますか。


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トリトン陛下「おっ、この串焼き美味ぇな。」


リトン宰相「ですな。流石はフロスト領。」


マリー夫人「これからもこまめに通いましょうね。」



アイス「何か嫌な予感が、、、。」


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