第101話 さてと、引き続き探索探索。

前回のあらすじ:地下3階を攻略したら、ここのダンジョンマスターに会った。



 いつもより少し遅い時間の戻りとなってしまった。普段なら食事でくつろぐところを、砦の守備兵の皆さんに迷惑をかけてしまったな。



「フロスト伯爵! ご無事で何よりです!!」



「みんな、遅くなってゴメン。お詫びとして、これ、みんなで食べて。」



 そう言って、肉の塊を1人の守備兵に渡した。



「フロスト伯爵、こ、この肉は?」



「先程行ってきた狩りで手に入れたオークの肉だよ。そこそこ手強かったから、味もその分いいはずだから遠慮なくみんなで食べて。お詫びも兼ねてるから、その辺も察して、、、。」



「は、はは。ま、まあ、ご無事ならいいのですが、あまり我らにも心配をかけさせないで下さいよ。」



「ありがとう。遅くまで申し訳なかったね。任務ご苦労様。」



 そう言って、砦内の部屋へと戻る。カムイちゃんとの別れ際、カムイちゃんからこう言われた。



「アイスさん、明日もあの洞窟へと行くんだよね?」



「うん、そのつもりだけど。」



「ということは、明日は地下4階へと行くんだよね?」



「そういうことだね。」



「だったら、私は不参加で。正直、あのゴーレム達でも厳しいことがわかったから、これ以上強い魔物だと私だと逃げることも難しいから、、、。」



「なるほど。まあ、無理にとは言わないけど、お土産は期待しててね。」



「ハハッ、アイスさんらしいね。うん、じゃあ、お土産期待してるからね!」



 そう言ってカムイちゃんと別れた。正直、あの洞窟、いや、次の階層も正直宝箱が期待できそうだったので、カムイちゃんの不参加は痛い。魔物が素材落としてくれるかわからないし、その辺はどうなんだろうか。まあ、無理して連れて行くのも申し訳ない気持ちが強いから、とりあえず私達4人で探索してみて行けるかどうか確認する方がいいか。



 テシテシ、テシテシ、ポンポン。いつもの。



 朝食を終えて、私達は砦を出発した。守備兵さんには、遅くなってもいつも通りにしてくれればいいと伝えると、だったら時間以内に戻って下さいよと切り替えされてしまった。まあ、あちらが正しい。けど、言った通りにするとは誰も言っていない。人の気配がなくなったところで、いつもどおりあのダンジョンへと向かう。



 入り口に入り、マーブルの転送魔法なしで転送できるか確認してみる。試しに守衛のいる部屋の前へと転送してみると、問題なく転送できた。ダンマスGJ!!



 いつも通り守衛室にはオークの団体さんがいらっしゃったので、有り難くお肉に変化してもらい、宝箱はガン無視で次はダンマスの部屋へと転送する。



 ダンマスの部屋へと転送すると、ダンマスが驚いてこちらを見た。



「やあ、約束通りに下の階層へと討伐に向かうから。」



「いや、まさか、次の日に来るとは思わなかったよ、、、。」



「うん、あと数日間くらいは暇だから、ここに来させてもらうけど、それから先はわからないからね。」



「なるほど。じゃあ、頼んだよ。」



「ところでさ、私達が一々この部屋へと転送してたら落ち着かないでしょ? 階段別の所に置いたら?」



「ああ、その辺は大丈夫だよ。この部屋には君達しか入れないからね。」



「いや、私達としても、何度もいきなりこの部屋に転送するって結構気を遣うからね。」



「それもそうか。でも、安心して。地下4階に降りたら、そこにも転送できるようにしておいたから。ただ気をつけて欲しいのは、地下4階へは階段付近の場所にしか行けないから。まあ、このダンジョンの入り口へは地下4階だろうとどの場所からでも転送できるけどね。」



「なるほど。一旦地下4階へと降りればその辺は問題ない訳か。」



「そういうこと。あと、ゴーレムのいた部屋からも地下4階への下り階段を作っておいたから全く問題ないよ。」



「なるほどね、了解したよ。じゃあ、次からはそこから移動するかな。」



「いや、この部屋からは、ゴーレムの部屋には行けないからね。向こうの扉から入ることはできても、この部屋からは出ることができないから。」



「まあ、その辺は気にしなくても大丈夫。地下3階の最終部分には何度もお世話になると思うから。」



「なるほどね。でも、たまにはこっちにも顔を出して欲しいな。」



「了解。じゃあ、行ってきますか。」



 そう言って、ダンマスの部屋にある地下4階への階段を降りる。降りた先には何か人型にくりぬいた扉があり、そこには『エルフ 女 レベル5、、、、』などと色々と書かれていたが、あれを通り抜ける、あるいはあの扉を開くのに必要なものなのだろう。って、レベル5でここに来るの不可能でしょ、、、。



 一応、ダンマスからこの扉の鍵をもらったが、一体どうやって使うのだろうか。あと、試しにライムに通り抜けてもらったら、問題なく通ることができていた。マーブルやジェミニも同様だった。ちなみに私は無理でした、、、。



 そんな感じで扉と戯れること数十分、人型にくり抜かれている場所の下に鍵穴みたいなものが見つかったので、そこに昨日ダンマスからもらった鍵を差し込むと、扉が開いたので一安心。これで地下4階の探索ができるようになった。でも、これってここに後から来た人達も通れるようになるのだろうか。まあ、そこはその時に考えるとしますかね。



 地下4階は機械仕掛けっぽくなっているようで、回り一面が何かの金属で構成されており、移動するたびにカツカツという音がして、地味にうざい。これって演出じゃなくて本当にこんな音になるんだなとも思った。



 ちなみに、今いる場所は、地下4階の階段を降りてすぐの所だ。ここは大きな部屋となっていて、4隅にはそれぞれ何かの装置が置かれていた。いや、階段もその1つだから、装置は残り3カ所にそれぞれ置かれている、という方が正しいのだろう。3つの装置はそれぞれ、ダンジョンの入り口に戻る転送装置、強敵がいるであろう場所への転送装置、もう1つは体をリフレッシュしてくれる装置のようだ。どうやって区別しているかというと、どれも親切に「入り口へ」とか、「訓練所へ」とか、「回復施設」とか装置のところには親切にもそう書かれていたからだ。



 来たばかりの私達にはリフレッシュは必要ないので、早速、訓練所という名のやばそうな場所へと誘う装置へと行き、転送装置を起動させる。



 転送装置を起動させると、そこには長い通路が待っていた。やはりこの場所も見覚えがある。この記憶があるゲームは、地下3階層の地図構成をしていたゲームの別物語りで、そのゲームはひとまずエンディングを見ることだけなら難易度は低めであるが、その先にあるダンジョン、いわゆる「ドラゴンの洞窟」と呼ばれる場所は違った。ぶっちゃけ、ラスボスを瞬殺できる実力がないと、最初の魔物達すら満足に戦えない場所となっていて、この場所はそれにそっくりなのだ。これでは、流石のダンマスも手に負えないというのもわかる。



 この場所を見て、ここはやばいというのはすぐに理解できた。とはいえ、実際に戦ってみないとそれ以上のことはわからない。まあ、この3人が一緒なら、この階層は問題なく進めるだろうけど、まずは戦ってみないことにはね、、、。



 最初にすることは地図作成である。このダンジョンについては冒険者ギルドへと報告する予定なので、できるだけ有力な情報を得てから報告しておきたい。記憶通りであれば、部屋に入らなければここの場所は魔物と遭遇することはない。その確認の意味もあってのことだ。



 ・・・実際に移動してみて余計にわかるが、ハッキリ言おう、広すぎる!! どれだけ大変だったかというと、通路の作成だけで、昼食の時間となってしまったのである。まあ、正直歩き疲れたというのもあって、そこそこ空腹になっていたのは不幸中の幸いであった。また、スキルではこの階層は階段付近のの部分でしか転送では来ることができないようだが、マーブルの転送魔法ではどうなるかの実験をしてみると、こちらは問題なく転送できたので、各部屋の入り口に、それぞれ転送ポイントを設置してもらった。そうじゃないと、またあの馬鹿みたいな距離を移動するのは勘弁して欲しい。



 昼食を食べ終えて、一息ついたので、これからこの階層の魔物と戦うことにする。もちろん、今いるのは扉の前である。試しに気配探知をかけてみると、しっかりと魔物の気配を感じた。どうやら地下3階とは違って、地下4階は扉の向こうであっても探知できるようだ。いや、逆に、探知されても問題ないということでもあるのだろう。数も大きさも普通の冒険者では入ることすら躊躇われるほどの気配だ。



 さてと行ってみますかね。3人に確認してみると、特にマーブルとジェミニはワクワクしている様子だったのは笑えた。3人も問題無さそうだし、行ってみますかね。



 扉を蹴り開け、部屋の中に入り込むと、大型のものから小型のものまでかなりの集団で待ち構えていた。内訳は、ワイバーン7体の他には初見の魔物達ばかりだったので、軽く鑑定をかけると、やや小ぶりの2本足のトカゲは「ラプトル」が8体、あとは、何か大きな変な動く物体に乗っている首のないやつ「デュラハン」が3体だった。どれも厄介な魔物だろうことは想像に難くない、普通ならね。私が3人に目を向けると、3人ともどうすればいいかわかっており、一斉に頷いた。うんうん、流石は頼もしい自慢の猫達である。



 魔物達は私達が4人しかいないと確認すると、ほぼ一斉に襲いかかってきた。私はデュラハンに、マーブルはワイバーンに、ジェミニはラプトルに、ライムは私達の誰かが死角から襲われても大丈夫なように防衛の構えをとる。いつもの4人の行動だ。



 私はデュラハンに向かっているが、あのデュラハンが厄介なのは、恐らく乗っている物体が巨大な上に案外素早い動きで移動しているからだろう。上に乗っている本体はそれほどでもなさそうだ。もちろん狙うのは本体である。弓に氷の矢をつがえて向かって行くと、デュラハン達はこちらに3方向から向かってきた。まずは正面にいるやつめがけて放つ。ここで大事なのは撃つのは1本ではなく2本ということだ。1本しか撃っていないように見せかけるのがポイント。目に見える1本は大きな物体に当たり、上手く貫いているが、物体は平然とこちらに向かってくる。しかし、隠れている2本目が上にいる本体に命中し、正面の1体は動きが止まりそのまま消滅した。残りの2体については、大きな物体の動きを躱しつつ側面に回って、上にいる本体に矢を放ち、それぞれアッサリと倒れた。



 デュラハンは倒されると消滅して、その後には魔石しか残っていなかった、、、。あの物体が何でできているのか不明だったが、何か他にも落とせよ、ケチだな、とは思った。



 さてと、マーブルとジェミニはどうなっているかな? と周りを確認する。地図を作っているときにも思っていたことだが、とにかく部屋が広い。まあ、ワイバーンやらラプトルやらが大量に出てくるわ、挙げ句の果てにはデュラハンみたいなものがいたりするのだ。広くない訳がないのだけど、それは今更かな。



 ワイバーンについてだけど、マーブルはものともせずに風魔法でワイバーンの首を落としていた。ジェミニについてもラプトルという魔物相手に、これまたスパスパ首をはねていた。全く相手になっていなかったね。ワイバーンについては、倒されると肉と皮と牙が残り、ラプトルは皮と牙をそれぞれ落としていった。特にワイバーンが肉を落としたというのは非常に大きかった。マーブル達も喜んでいたのは言うまでもない。



 また、この地下4階でも大量の魔物の素材の他に、宝箱が1つ置いてあった。念のために鑑定すると、地下3階における罠の種類とは少々異なるようで、こちらの方が少しえげつない感じはするので、宝箱は無視することに決定した。何せ、私自身が武器防具を必要としていないし、マーブル達については言うに及ばずである。



 ここでの戦闘が終わったので、次の転送ポイントへと転送してもらう。地図作成時に扉の前に転送ポイントを設置しておいてよかった。地図さえできれば、足下に水術を施して高速移動は可能だけど、それでも距離が距離なので面倒だからだ。



 こうして、扉を開けては魔物を倒して周り、多くの魔物と素材を手に入れることが出来た。特に興味があったのは肉関係だけど、ワイバーンの他に、グリーンドラゴンという毒を吐くやや小ぶりの龍がいた。グリーンドラゴンであるが、こいつだけは死体のまま残ったので、みんなで解体すると、小ぶりとはいえ、やはりそこはドラゴンだった。肉や内臓などの可食部位はもちろんのこと、皮や牙、それと内臓部分には毒袋があって、しっかりと素材として頂くことにした。残念ながら鱗はそこまで使い途がなさそうだった。まあ、小ぶりなやつだから、そこまで期待してしまうのは贅沢すぎるだろう。特に肉や内臓はどんな味がするのか楽しみではあるので、早速夕食で調理するとしますかね。



 地下4階だけど、基本的にはどの部屋についても、扉を開けると大量の魔物が待ち構えているのだけど、1つだけ魔物が出現しない部屋があった。そこは更に下へ行く階段があった。ここから地下5階へと行けるのだろう。ひょっとしたら、地下3階と同じく同じ階層内で転移するやつかもしれないけど、それについては正直どちらでもいい。ということで、地下4階の階段を降りる。



 地下4階から地下5階へと降りると、すぐ近くに地下5階の下り階段が見つかったが、少し地下5階の探索を進めていくつもりだったので、下り階段は今のところスルーの方向で。通路は何か迷路的な感じになっており、扉を見つけたので、念のために転送ポイントを設置してもらって別方向に向かう。地下4階とは違って曲がりくねっているので、それほど広いという印象は受けないが、ここも部屋は間違いなく広いはず。それも地下4階よりも。



 一通り回ってみたが、これ以上は扉を抜けないと先に進めなさそうなので、今日はここまでにして砦へと戻ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る