第102話 さてと、大物は出てきますかね。

 テシテシ、テシテシ、ポンポン、、、。朝でございます。これだけ幸せな朝の目覚めを体験できるのは世界広しといえど、私だけでしょうな、ハッハッハッ! と、どうでもいい自慢は置いといて、今日もダンジョンの探索に勤しむとしましょうか。



 いつも通り水術で顔を洗ってサッパリとした後、守備兵さん達が用意してくれた食事を頂く。うん、なかなかの味ですな。守備兵さん達も料理の腕が上がっているようで何よりかな。で、いきなり料理の腕が上がった理由をそれとなく聞いてみると、原因は私達らしい。いや、直接の原因はアンジェリカさん達戦姫のようだけど、というのは、戦姫の3人がフロスト領へと行くようになり、その時には必ずこの砦で1泊していくそうで、少しでも良い意味で自分たちの存在をアピールしておきたいからだそうだ。



 で、毎回食事を出してくれるのを感謝してくれるそうだが、食事のたびに必ずフロスト領での食事の良さを話すそうで、守備兵の皆さんは羨ましく感じるのと同時に、そこまで褒められる料理と味が気になって仕方がなかったそうだ。で、今回私達が来て直接その料理を口にした途端、自分たちとの差を痛感して精進するようになったそうだ。さし当たっての目標は、戦姫の3人を料理で唸らせることだそうだ。・・・いや、君達は守備兵なんだから、頑張るのはそっちじゃないだろう? と突っ込みたかったけど、ここはトリトン帝国との国境線でもあるから、基本的に暇なんだよね。



 今までは、ここの守備隊というと左遷という意味合いが強かったそうだが、アンジェリカさん達がこまめにここを通るようになってからは、この場所への転属希望者が相次いだそうで、ここの担当の者達は逆に溜飲を下げているようだ。いや、気持ちはわかるけど、そんなにこまめに来たりしないでしょうに、、、。



 話はそれたけど、腕も上がってかなり美味しかったので、これからの期待も込めてワイバーンの肉を守備兵さん達に渡しておいた。もちろん、何の肉かは伝えないよ。受け取ってくれないと困るじゃん。



 いつも通り、砦を出発して人の気配がなくなったところでダンジョン入り口へと転送する。ダンジョンに入り、守衛室へと転送してオーク肉を調達しておく。オーク肉を手に入れた後は、そのまま地下5階へと移動してもいいのだけど、先に地下3階のダンマスの部屋へと転移した。少し報告しておこうと思ってね。



「やあ、今日も来てくれたんだね、ありがとう。」



「いや、気にしないで。ところで、ダンマスって肉とか食べるの?」



「そうだね、ダンジョンマスターって存在はね、魔物やら冒険者やらの死体から魔素などを吸収して活きている存在だから、基本的には何でも食べるとも言えるし、何も食べないとも言えるね。」



「昨日獲れたワイバーンの肉だけど、いる?」



「気持ちだけ受け取っておくよ。あ、そうそう、地下4階の魔物を倒してくれたんだね。もの凄い量の魔素を吸収できたよ。それだけでもこちらとしては十分だしね。」



「なるほど。で、私達はこれから地下5階へと行こうと思っているから、一応報告に来たんだけど。」



「わざわざありがとう。で、地下4階の敵はどうだった? あのクラスだとボクでも厳しいんだけど。」



「ん? あの程度なら、数こそ脅威だけど、大したことなかったよ。」



「は? あのクラスの魔物が大したことないって? 君達どんな存在なんだよ、、、。」



「私は普通の人族で、マーブルとジェミニとライムは普通にいる可愛い私の子達ですが何か?」



「・・・君達の普通って、いろいろおかしいよ、、、。」



「まあ、私達はともかくとして、普通の冒険者とかだと、やはり脅威といえるね。地下3階を楽勝で周回できるのは当たり前だけど、ゴーレム程度瞬殺できるレベルじゃないと無理だよね、実際。」



「そうなんだよね。あのゴーレム達は、地下4階以降の魔物達と戦えるかどうかを試す門番的意味合いが強いから。」



「そこで提案なんだけど、あのゴーレム達から確実に逃走できるようにしてほしいんだ。」



「なるほど。そうしないと、いつまで経っても、地下4階にたどり着けない、ということだね?」



「うん、そういうこと。それと、地下4階の鍵を落とすようにして欲しいんだよね。できる?」



「一応可能だけど、それほど多くは作れないかな。」



「一度門を通った人物がいたら、鍵無しで通れるようにするとか。そうすれば、ある程度少ない量でも大丈夫なんじゃないかな? その他にも、確率を低くするとか、ね。」



「なるほど、それはいい手かもしれないね。早速試してみるよ。」



「頼むね。ただ、そこまでたどり着くのも少し時間がかかるかもしれないけどね。」



「そこは仕方ないかな。しばらくは君達に期待するしかないかな。」



「魔物の素材次第だね。私達は、上質な肉を要求する!!」



「・・・武器防具じゃなくて、そっちなんだ、、、。地下5階は肉の宝庫かもしれないよ、、、。」



「おお、それは良いことを聞いた。・・・ちなみに、その下の階層については?」



「地下6階は、特殊な武器防具かな。あとは貴重な鉱石があるはず。」



「金属で囲まれた地形で、貴重な鉱石?」



「うん、採掘ポイントがいくつかあるみたいだね。」



「一応、地下6階へと行ったら確認してみるよ。とりあえずは今日は地下5階を探索するから。」



「了解。じゃあ、無理しないようにね。」



 そう言って、ダンマスの部屋から出て、地下4階へと降りる。地下4階に降りると門が閉じてある状態だったので、鍵を差し込むと、鍵が消えて門が開いた。恐らく今後は私達については自動的に開くようになったのだろう。・・・開かなかったら、また貰いに行けばいいか。面倒だけど。



 地下4階の門を通って、地下4階の通路への転送装置へと向かう。転送装置から地下4階の通路へと転送した。相変わらず馬鹿みたいに長くて広い通路だった。地図は埋めたので、後は階段のある部屋へと移動するだけだが、素直に移動するのは時間がかかってしょうが無いので、昨日設置してもらったポイントへと転移魔法を使ってもらう。



 扉を開けたが、やはりこの部屋には魔物はおらず、だだっ広い空間と、お情け程度の小さい部屋があるだけだった。その小さい部屋こそ、地下5階へと続く階段である。



 地下5階に降りてから、地図を確認すると、最初の部屋まではしっかりと地図作ってあったっけ、、、。しかも転送ポイントつけてあったし、、、。気を取り直して、部屋の前で戦闘準備に入る。部屋の向こうには巨大な魔物の存在が確認できた。気配探知するまでもなく感じるこの気配はやばい。願わくば、上質なお肉を落とす魔物であることを期待して、扉を蹴り開けて中に入る。



 部屋に入った途端、大きな咆哮が部屋中に轟いた。うるせえなあ、と思いつつその姿を見ると、そこにいたのは紛れもなく恐竜の姿であった。これが実物のの恐竜なのかと少し感動を覚えた。と同時にこいつらじゃ肉落とさないよな、と少しがっかりしてしまった自分にも少し驚いた。マーブルとジェミニもこいつ肉落とさないやつだ、と言わんばかりに少しガッカリしているのがわかって少し笑えた。



 恐竜を鑑定したが、やはりティラノちゃんだった。数は3体。丁度いいので、私達で1体ずつ、ライムは回復要員で待機、いつものパターンである。対するティラノちゃん達も私達それぞれをターゲットにしており、それぞれ1対1の形となった。これは好都合である。



 私をターゲットにしたティラノちゃんは、こちらに向かって突っ込んできた。動きこそ緩慢であるが、巨大な分、その1歩1歩の距離がやばいので、高速でこちらに向かって来ているのと変わりがなかった。オニジョロウを構えて矢をつがえて迎撃の態勢に入る。今回は全部氷ではなく、しっかりと矢を用意して氷を纏わせている。鏃はドリル状にしてある。



 ティラノちゃんは途中で動きを止めて後ろを向こうとしていた。あ、これは尻尾の一撃か。相手の行動がわかったので、こちらの攻撃チャンスでもあった。当たらないように後ろに下がるのもアリだけど、敢えて近づく。尻尾こそ激しく動いてはいたけど、根元の方はそれほど動いておらず、逆に安地だったので、矢を放つ。



 矢は尻尾の付け根にしっかりと刺さり、ティラノちゃんはかなり効いたのか、その場で尻尾を激しく動かしていたが、安地にいた私には届くわけがなかったので、その隙にさらに数発矢を放っていく。今回は矢に氷を纏わないで、氷だけで作った矢で攻撃する。矢はしっかりと刺さり、ティラノちゃんはさらに激高するが、今度は尻尾ではなく足でこちらを踏みつぶそうとしたので、急いでティラノちゃんから距離を取る。



 ある程度距離が離れて、尻尾の当たりを見ると、しっかりと付け根にそれぞれ刺さっていたので、矢を爆破させると、かなり効いたらしく、痛みの余り頭を上に上げて首が無防備となったところに、追い打ちの矢を放つ。3本打ちの2セット、計6発の矢を長い首に当てると、深く刺さったので、躊躇うことなく爆破させるとかなりの威力だったのか、首が吹き飛び、ティラノちゃんは息を引き取った。



 マーブルとジェミニはそれぞれどうしていたかというと、終始圧倒している状況のようだったけど、ティラノちゃんが巨大過ぎて、決め手に欠けているようだった。ちなみにティラノちゃんは2体とも満身創痍の状態だった。こちらが援護射撃してトドメをさすのもいいけど、折角ここまで痛めつけたのだから、マーブル達だけでトドメは刺させてあげたい。ということで、向こうが頼んでこなければ、こちらは手出しするのを止めることにした。



 どうするのか楽しみにしていると、マーブルとジェミニは頷き合って、ライムの方を見る。ライムはそれに気付くと、光魔法を唱え始める。それと同じくらいに、マーブルは風魔法で風の弾を、ジェミニは土魔法で土の塊を、いや、出したのは金属か、ライムはジェミニが出した金属に光魔法を込める。光魔法が籠もった塊をジェミニが後ろ足で蹴り出す。ジェミニが蹴飛ばした光の塊は、マーブルの風の弾に入り込み、そこからもの凄い速度でティラノちゃんへと向かって行く。そう、3人の合体技であるレールガン改である。ティラノちゃん達は反応する間もなく頭を吹き飛ばされて試合終了。



 ティラノちゃんの死体が消えると、そこに残っていたのは巨大な魔石と爪と牙だった。やはり肉は落とさなかったか、残念。爪と牙は大きさもそうだけど、硬さもやばかった。魔石についても同様で、バレーボール3つ分くらいの大きさがあった。逆にあの大きさでこれだけの大きさしかなかったともいえるけど、、、。



「マーブルとジェミニとライム。お疲れ様、特に最後のレールガンは見事だったね。」



「ミャア!!」



「体が大きくて大変でしたから、一気に仕留めることにしたです! あのままでも普通に倒せたですけど、どれだけ時間がかかるかわからなかったですから、、、。」



「ボクもみんなのやくにたてたー!!」



「ライムがいて、いざというときに護ってくれるのをわかっているから、ライムがいるというだけでも役に立っているよ。」



 そう言うと、ライムは嬉しそうにその場を跳ねまくっていた。



「合体技に頼るのもよくないと思ったから、個人戦でいったけど、あれだけ大きいと逆に面倒だから一気にあれで倒すものアリだね。」



「いえ、アイスさんはそのまま個人戦でもかまわないと思うですよ。ワタシ達は時間がかかるから合体技に切り替えたですけど。」



「それもそうだね。じゃあ、私は1人で倒すけど、みんなは合体技でガンガン倒してくれて構わないから。」



「ミャア!!」



「了解です!!」



「わかったー!!」



 3人が敬礼で応える。うん、やはりいつ見ても眼福ですな。親馬鹿? 大いに結構です!



 最初の部屋を出ると、やはりここは迷路のようになっており、しっかりと地図を作成しながら先を進んでいき、次の部屋への扉にたどり着く。戦闘態勢を取って、扉を蹴り開けて部屋に入ると、ここでも巨大な魔物が待ち構えていた。今回の魔物は、デュラハンナイトとボーンキングという組み合わせだった。デュラハンナイトはデュラハンを2周りほど大きくした感じで、正面には変な顔の模様をした巨大な盾みたいなものと、突進用の尖角がついた乗り物に本体が乗っていた。本体はもちろん首無しですが何か? 一方のボーンキングは両手が鎌のような形状をしており、スケルトンとは一線を画す姿であった。これも強力な魔物なんだろうな。



 ボーンキングは言うまでもないが、デュラハンナイトも実はアンデッドだったらしく、ライムの光魔法付与がもの凄い効果的で、私の矢はもちろんのこと、ジェミニ自身に光魔法を纏わせてから、体当たりや牙による攻撃が面白いようにダメージが入るらしく、かなりあっさりした結果となった。、マーブルはというと、重力魔法で強引に押しつぶしてたね、ボーンキングを。ってか、マーブルさん、あなた魔法でごり押し可能なんだね。今更ながら凄い魔力だね。それについては、ジェミニの通訳を通じて聞いたのだけど、あのホネホネ程度でないと、あの階層の敵は無理だそう。それでも凄いんだけどね、、、。



 ボーンキングからは、いくつかの骨が、デュラハンナイトからは、あの変な顔の模様をした盾がドロップしたのだけど、一体、これらをどうしろと?



 その後、この階層の探索を進めつつ、魔物を討伐していったが、3つ目の部屋でようやくドラゴンが出てきてくれたのは嬉しかった。私はオニジョロウで、マーブル達は合体技でそれぞれドラゴンたちを倒していったが、種類によっては肉だけを落として死体が消えたり、死体が消えずに解体が必要だったりと、ドラゴンの種類によって違いがあった。



 とりあえず言えたことは、ドラゴンの肉がたくさん手に入って超ご機嫌ということである。



 流石に広い分探索に時間はかかったものの、何とか地下5階を1周できたので、満足して砦へと戻っていった。明日は地下6階を探索ですな。というか、明後日にはウルヴ達も戻ってくるから、明日1日でできるだけ探索しておかないとね。

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