第99話 さてと、最下層? へと突入です。

前回のあらすじ:勝手知ったる道順だったため、いろいろと探索して回った。



 さて、今日も今日とてダンジョンの探索です。ここ連日、私達が嬉しそうに砦を出発する様子を見て守備兵のみなさんは不思議そうな表情をしている。その中の1人が恐る恐るではあるが、こちらを尋ねてきた。



「あ、あの、フロスト伯爵、何かご機嫌宜しい感じなのですが、何かあったのですか? ここ最近よくここを離れていますよね?」



「あ、任務ご苦労様です。いやあ、ウルヴ達がタンバラの街へと行っているでしょ? その間、私達はすることがないので、困っていたところなんですが、丁度暇つぶしというか、いい場所を見つけてね、そこに入り浸っているんですよ。」



「いい場所、ですか? それは一体?」



「今は言えませんが、そのうちわかると思いますよ。後日ではありますが、みんなも行けるようになると思うけど、その時を楽しみに待っててくれると嬉しい。」



「そうですか。私もその時を楽しみに待つとしましょう。くれぐれもお気を付けて!」



「ありがとう、では、行ってきます。」



 本来なら、こんなに好き勝手に出入りできないはずなんだけど、それはアンジェリカさんから言い含められているらしく、その命令というか言伝というか、そっちが優先されるらしい。やはり話のわかる協力者がいるというのは大事だね。まあ、無くてもどうにでもなるけど。



 守備兵のみなさんの見送りを受けて砦を出発する。人気のいないところに移動してから転送魔法でダンジョンへと移動する。ダンジョンへと入ったら、地下3階へと転送するが、不思議と転送前のところへと戻されてしまった。このダンジョンはそういう場所なのかも知れない。まあ、いきなり石の中にいる! なんて事態は避けられたから良しとしましょうかね。仕方なく地下2階の下り階段へと転送し直してもらい、そこから地下3階へと移動する。



 はい、ここ最近の定番である某ゲームの地下1階部分に到着しましたよっと。今日は勲章を使いましてさらに下層部分へと移動しようと思いますが、その前に、どうしても上質な肉が欲しくなりましたので、守衛室へと移動しました。地下3階部分は敵の配置というか分布が固定しているようで、幸いにもオークの集団だった。もう、勝手はわかっているので、アッサリとはいかないまでも、それなりに簡単に倒せました。



 守衛達の宝箱をカムイちゃんに罠解除してもらっていると、やはり硬直していたので、こちらで鑑定してみると、「セイジバスター」となっていた。ごめん、セイジについては突っ込むネタがないよ、、、。セイジって誰だよ? くらいが関の山ですね、ハイ。ただ、後で出てきた罠名が「警報装置」だったので、躊躇うことなく開けてみると、大きな音が鳴ったと思ったら、魔方陣が出現して新たな魔物が現れた。駆けつける感じじゃなかったのね、、、。



 現れたのは、そこはここの階層らしく、人型の魔物であり、私達の敵ではなかった。魔物達を倒すと箱が開いたままの状態であり、今回はいくつかの薬とやはりありましたよ、「暗殺者の指輪」が。アマさんが処理してくれるそうだから、これはアマさんに献上しようと思う。どうせ、オーク肉目当てでここにまた来る予定なので、次手に入れたらラヒラスに調べてもらおう。



 部屋の魔物を倒しつつ、勲章が手に入った部屋まで到着したが、流石に2個目は手に入らなかった、というか私がしっかりと持っているので出てくる気配がなかった。多分、私がいない状態でここに入れば手に入ると思うけど、リボンじゃなかったし、2つも3つも必要ない。少なくともマーブル達とは別行動でここに来ることは多分無い。カムイちゃんは別だけど、カムイちゃんに関しては、オークエンペラーを倒せる位まで成長しないと危ないからね。



 守衛室へ向かったのと逆方向に進むと、いくつか扉が続き、奥の部屋までたどり着くと、やはりありましたよ、ボタンが。4階層までの転送装置はA、B、C、Dだったのに対して、ここでは、甲、乙、丙、丁、戊、己になっていますが、何か? じゃなくて、これ読めないだろ、、、。まあ、他の人は勘やら配置の順番でどうにかしてもらいますかね。いや、これは私が説明すればいいのか。もちろん押すボタンは「己」一択に決まっております。途中用はないしね。



 さあ、やって参りました9階層です。ゲーム的にはたったの4歩で最下層という素晴らしい配置。さて、ここではどうなっているのやら。



 転送の部屋を出て、すぐ左にある扉を開けると、もちろん魔物がいましたよ。現れたのは赤い巨人と神官の格好をした魔物でした。チッ、ゴミしか落とさねぇメンバーじゃねぇか、、、。いやいや、ここではわかりませんね、ハイ。鑑定してみると、『炎の巨人』と『神官長』となってますね。名前はともかく、そのまんまやん、、、。



 気を取り直して、倒すことにする。炎の巨人ということで、試したいことがあったので、神官長はマーブル達に任せることにして、複数の炎の巨人を私に任せてもらうことにした。といっても、ただ炎には氷でしょ、ということで最初の1体を心臓部めがけて矢を放つと、巨人とは思えない柔らかさで肉体を貫通してしまったのには驚いた。後で氷の巨人も出てくるだろうから試してみますかね。もう1体の方も氷の矢であっさりと瞬殺し、炎の巨人はこの階層に入って最もあっけなく倒してしまった、、、。マーブル達も瞬殺して終了。もちろん落としましたよ、宝箱。さあ、カムイちゃん出番だ。



 お宝ですが、こっちの世界でもショボかったです、ハイ。初級ポーションと刃の欠けまくった剣でしたよ。これらは、後ほど投擲に使うとしますかね。ただ捨てるの勿体ないし。ゲームではできなかったことを試すのも面白いかも知れない。



 というわけで、あっさりと来ました地下10階、いや、10階層部分。右側には転送装置が、左側にメッセージの書かれていた看板があった。看板には文字が書かれていたけど、よかった、こっちの世界の文字だった。内容は無視しましたよ、どうせゲームといっs、、いや、大したことは書かれていないから。この階層の通路は基本一本道なので何も考えずに進むことができるのでラクですね。



 とはいえ、曲がりなりにもこのゲーム、いや、このフロアの最下層部分、魔物も一筋縄ではいかない、と思う。ということで、張り切って参りましょう。



 最初の相手は誰かな? と期待しつつ扉を蹴り開けると、そこにはマーシィさんの群れが、、、、。思わず言ってしまいましたよ。



「何で、アンタがいるの、しかも複数、、、。」



「俺に言うなよ、、、。ま、どうせ俺を倒さないと先に進めないからな。じゃあ、いくぜ!」



 まあ、マーシィさんとはいえ、分裂体だから私達の相手になるわけがなくあっさりと昇天されましたよ。しかもライムの光魔法であっさりと倒されているし、、、。フロスト領に戻ったらライムの光魔法効くかどうか試してみようかな。



 お宝、しっかりと出ましたよ。カムイちゃんには警報装置以外は解除するように頼んであるけど、流石に数をこなしているので、罠もあっさりと解除完了。お金とこれはスクロールですか。鑑定すると、ファイアの巻物とありましたね。これで私も魔法使いの仲間入りかな? 魔力無いけどな、、、。まあ、これは戻ったら冒険者ギルドにでも回しましょうかね。いや、ラヒラスに1つは渡しておきますかね。その方が有効利用してくれそうだし。



 お宝を手に入れたら、右側には転送装置があるけど、あれってあるいみ出口で、その手前にはこの階層への初期位置へと転送するやつがあるんだよね。ということで、私は左側を選ぶぜ!



 さて、やってきました次の場所。天井付近に看板がありましたよ。もちろん、内容は読んでませんよ。見る必要もないでしょうし。道は一本道なので、迷わないで進めるところがいいね。ん? 何か気配探知に引っかかった。曲がり角で待ち伏せしているようだ。扉の先の魔物じゃないから、出ないんだよね、宝箱。囮で石ころ投げようかと思ったけど、この迷宮、ぼろそうに見えて、そういったもの一切ないんだよね、ある意味凄いところではある。



 仕方がないので、水術で氷の塊を用意して投げ込む。もちろん普通に投げたのでは面白くないので、反射して相手にぶつかるように角度を調整して思いっきりぶん投げる。最近は弓のおかげで出番が減っているが、今まで散々投擲術を使ってきたため技能レベルは高い。見事に命中し、待ち伏せていた連中は慌ててこちらにやってきた。奇襲成功。



 やってきた魔物を確認すると、『神官長』、『高司祭』、『頭目』と出てきた。でも数がそこそこ多かったけど、こんな狭い通路でそんなにいて何がしたかったんだろうか、と疑問に思う。ゲームだと核魔法ぶち込んで一掃だったけど、現実に考えるとやばいよね、それって、、、。



 では、今回はどうしたかというと、氷魔法で動きを固めて、その氷を粉砕して回りましたよ。主にマーブル達が。いや、私もいくつか粉砕したんですけどね、痛いんですよ、拳が。格闘術がいくら高くても、拳で倒して回ったわけじゃないから、そこまで鍛えられてないんですよ、拳は。というわけで、本邦初公開です。グラムのね。グラムは名前の通り1kg以下の重量ですから、軽い軽い。しかも壊れないから思いっきりぶん殴れるし。感想としては、これ、やばい、気分良すぎる。でも、使い方がほぼ粉砕棒みたいな使い方だから剣術はもちろん上達しない。させる気もないですけど、、、。



 通路にいた魔物を倒したあとに、死体が消えて金貨が落ちていた。有り難く頂戴した後、改めて扉を蹴り開けて魔物と対峙しては倒し、お宝を頂戴しては、次の場所へ向かう、この繰り返しである。



 こうして進むこと数回、記憶ではこの次のポイントにこの階層のボスがいるはずである。とはいえ、それほど私達は体力も時間もそれほど消耗していない。昼食もまだの時間なのである。というわけで、ここを周回するべく先に進まずに、転送装置のあるポイントを目指して移動する。転送ポイントに入ってしまうと、ダンジョンの入り口か、地下2階の下り階段へと転送されると予想できる。正直、また一々ここに来るのが面倒なのだ。ということで、試しに転送装置には入らずに、また通路を進んでみる。魔物が再び沸いていたらいいなという期待を込めて。沸いていなければあきらめて、一旦ダンジョンを入り直すとしますか。



 再び戻ってきた最初の部分の扉を蹴り開けると、いましたよ、魔物が。しかし、ここで喜んではいけない。ランダムエンカウントかもしれないのだ。気を引き締めて魔物を倒すと、そこには宝箱が置かれていた。よっしゃーーー! これで、一々潜り直さなくて済む。



 ということで、私達はしばらくこの階層を周回することにした。マーブル達は喜んで賛成してくれた。カムイちゃんも賛成してくれたので、周回決定。



 こうして周回すること幾たび、様々な種類の魔物と戦っては、お宝を頂いた。流石に地下3階とはいえ、一応この階層の最終階層である。そこそこいい武器防具が手に入ったと思う。これで領民達の装備もいいものにできるかな。まだ専属の鍛冶師がいないから、余った分は予備として確保しておきますかね。



 いい武器防具が手に入った反面、それ以上にゴミのようなアイテムも手に入ったが、それは宝箱の中に放置する。だってさ、腐った革鎧とか必要? 肥料にもならない代物だよ? カスみたいな武器も投擲用にとは最初こそ考えたけど、実際戦ってみると、それほど投擲する機会がなく、数回、試してみたけど、手間の割に効果がなかった、、、。



 変なアイテムはあったかといえば、ありましたよ。刀が手に入ったんですよね。私は剣道の心得はないので刀の正しい使い方はわからない。で、このゲームにおける唯一の刀といえば、そう、アレですよ、アレ。最初に見つけたときはキターーーーーーー!! とか思ったんだけどね、鑑定してみるとね。「妖刀ムラマツ」とかね、、、。ムラマツって、おい! バッタモンにしてはネーミングが安直すぎてもうね。ちなみにバッタモンはそれだけではありませんでした。刀も一種類だけじゃなくて、他にも「マサカズ」とかね。他にもいろんな名前が付いてましたね。いや、珍しいものに違いはないですから一応持って帰りますけど、何だろうな、このコレジャナイ感、、、。



 変なものといえば、こんなのもありましたよ。手裏剣です。手裏剣は別に変じゃないだろ、と思うかもしれないけど、やはり、名前がね、、、。手裏剣は手裏剣だよな、と思いつつ鑑定したんですよ。そのときのアマさんのコメントがこちらです。



------------------------------------


『しるけん』・・・手裏剣かと思ったかの? 残念。いや、一応手裏剣としても使えるぞい。だだのう、これは実は武器として使うものじゃないんじゃ、、、。武器に見えるかもしれんが、まあ、実際には武器なのじゃが、これは鍋に入れて煮込むと汁ができる優れものじゃ。ちなみに、こいつは魚介系の出汁がとれるぞい。他にも海藻系の出汁とか、野菜系の出汁とかが採れる種類があるから、いろいろ集めてみるのも面白いかもしれんのう。言うまでもないと思うが、これで採った出汁を使った料理、待っておるからの。


------------------------------------



 はい? 「しるけん」ですか。小さい子供が手裏剣を言い間違えるような名前でございますね。って、これで出汁とれるんかい! これがあれば、食材探し回る手間省けるし、この世界の食文化進まないんじゃないのかな、、、。いや、いろんな配分があるから、しっかりと出汁となるものも探さないといけないな。



 ちなみに、この「しるけん」ですが、この魚介系だけでなく、海藻系、豚骨系、牛骨系、鶏骨系、とそれなりに揃っております。野菜系は残念ながらないけどね。イタリアン用として野菜系は欲しいところだけど、まあそれはおいおい、ということで。



 かなり周回して、その間に昼食もしっかりと摂り、いい時間となったので、そろそろこの10階層、いや、地下3階のボスを倒すことにして、いつも戻るポイントを進まずに、先に進むポイントへと足を運ぶ。ここも一本道であり、道中野良の魔物に遭うことなく扉の前へと到着した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る