第3話 宿
レックスさんと出会ってから1時間。馬車に揺られ、しばらくすると、バンバ町に到着した。
町に入る前に町の門番らしき兵士にいくつかの質問をされた。質問は意外にもすぐ終わり、早々と町に入ることが出来た。
兵士たちは終始レックスさんの機嫌をとっていた。どうやら、レックスさんは有名な人らしい。
この場でレックスさんとは別れるはずだったが、町の宿まで連れて行こうと言われお言葉に甘えた。
町中を馬車で進んで行く。町に建築されている建物は俺が元いた世界(日本)と似ていた。
「さあ、降りてくれ。ここが、この町唯一の宿屋「銀鷲」だ」
馬車が止まりレックスさんに言われるがままに俺は馬車を降りた。宿屋の看板には銀色の鷲が描かれていた。宿屋の看板を見ているとある事に気付いた。
「・・・・・・・・・文字が読めない」
看板の文字が読めない。これはこの世界で生きていく中でとてもまずいことだろう。言葉は話せるが文字が読めないとは思いもしなかった。まぁ、言葉が話せる分誰にかに教わればいい話だが。
「そう言えば、君はお金を持っているのか?」
「実はここに来るまでポケットに入れていた財布を落としてしまったらしくって・・・・・・」
「そうか・・・・・・。では、これを受け取りなさい」
宿に入ろうとするとレックスさんが白い巾着を渡してきた。中身を確認すると中には金色の硬貨(金貨?)が15枚入っていた。
「いいんですか?金貨15枚って結構高額な金額ですよね?」
「受け取ってくれ、君は私の命の恩人なんだから」
「・・・・・・分かりました。有難く受け取ります」
この世界のお金の基準はよくわからないが、恐らく金貨15枚は高額な金額だろう。
しかし、レックスさんは笑顔で「受け取ってくれ」と言ってくれた。何とも懐の深い人だろう。
「じゃ、私はこれで」
「はい、色々とありがとうございましたレックスさん」
レックスさんはそう言うと馬車に乗り、再び町中を進んで行った。
宿屋の両開きの扉をくぐると、酒場のような食堂とカウンター、2階に上がる階段が見えた。
「いらっしゃい!!!食事ですか?泊まりですか?」
カウンターにいたお姉さんが元気よく声をかけてきた。黒髪をポニーテールにまとめた、活発そうな人だった。年齢は恐らく20代後半だろう。
「取り敢えず、何泊か泊まりたいんですが、1泊いくらですか?」
「ウチは食事付きで銅貨2枚だよ。因みに代金は前払いね」
1泊食事付きで銅貨2枚らしいだが、高いのか安いのかが分からない。一応銅貨は金貨より安いと思うが。取り敢えず巾着の中から1枚の金貨を取り出し、カウンターに置いた。
「金貨1枚で何泊できますか?」
「そりゃ、30泊でしょ」
「そんなに!!」
どうやら、金貨1枚は銅貨60枚ということだ。手持ちには金貨15枚あるから、450日泊まれることになる。こう考えるとレックスさんは結構なお金持ちなんじゃないだろうか。
「じゃ、ひと月お願いします」
「はいよ!ひと月ね。最近もうけが少なかったら有難いわ」
結局ひと月この宿に泊まることにし、金貨1枚を受付のお姉さんに渡した。
金貨1枚を受け取ったお姉さんは、1度奥に行き宿帳らしきものとインクがついた羽のペンを持ってきて、差し出してきた。
「じゃ、ここにサインをお願いしますね」
「えっ、あっ、すいません。俺文字書けなくって・・・・・・」
「そうなの?じゃ、私が代わりに代筆するわね。貴方の名前は?」
「音無。音無春馬」
「オトナシ?珍しい名前ね。もしかして、名前と家名が逆なの?」
「えぇ、そうですね」
「じゃ、極極東の生まれなのね」
「え・・・・・・えぇ、そうです」
極極東とはどこのことか分からないが、名前からして極東つまり日本のことを指しているのだろう。ここは、極極東の生まれにしておこう。
「はい、これが君の部屋の鍵ね。無くすと大変だから無くさないようにね。因みに部屋の場所は2階の1番奥よ。それと、トイレと浴場は3階。食事はここ1階でね」
「はい、分かりました」
「あと、何か食べる?今なら昼の残りものがあるけど?」
「いえ、大丈夫です。今お腹は減っていないので」
「そう、それならいいわ。もし、お腹が減ったら言ってね軽いものなら直ぐに出せるから」
「はい、分かりました」
部屋の鍵をお姉さん(アヤさん)から受け取ると、2階の奥の部屋の扉を開けた。部屋の大きさは五畳半。家具はベット、机、椅子、クローゼットが置いてあった。
換気をするために正面の窓を開けた。窓から外をのぞくと外はとても人混みでにぎあっていた。大人たちはお店で買い物をしていたり、子どもたちは元気に走り回っていた。
しばらく、ベットの上で横になったあと、この町の様子を見るために1度外に出ることにした。まず、窓を閉め、部屋の鍵を掛け、階段を下りた。
「アヤさん、少し外に出て行きます」
「そう、気を付けてね。最近見境のない冒険者が増えてるから」
「はい、分かりました」
受付にいるアヤさんに一声かけ、外に出た。
異世界の町であるため、珍しい物ばかりで、全ての物に興味を引かれた。キョロキョロと視線を視線を彷徨させていると、通りかかった女の人に冷たい目で見られてしまった。
こうやって、町を歩いているとある事に気が付いた。町のほとんどの人が防具を身につけ何かしらの武器を携帯していた。どうやら、この世界では武器を携帯するのは常識のようだ。
俺も錬金で銃を何丁か作って携帯した方がいいのだろうか。
「まずは、お金を何とかしないとな。お金を稼ぐと言ったら冒険者になってクエストとかを達成するのがいいだろう」
まず、お金を稼ぐために冒険者になることを考えた。冒険者になりクエストなどを達成すれば結構な収入になるだろう。
そうと決まれば、冒険者ギルドを見つけないとな。
「ん?」
何か言い争っている声が聞こえてきた。どうやら、路地裏からのようだ。
「一応、行ってみるかな」
こうして、俺は言い争っている声が聞こえてきた路地裏に向かって行った。
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