「じぃちゃんばあちゃん、スマホ壊れた」
佐藤すべからく
第一章
第1話
電車を降りると、貧相なは駅に足を踏み入れる。これから乗り換えて地元につく。大変だ。面倒くさい。そんな時には俺は本を読む。本を読むと浮足立って、人生明るく生きれる。
人は沈んでいるより浮いているほうがいい。風船のようにぷかりぷかりできるから。
親水公園は中央に芝生があってその周りを道が囲んでいる。すっかり人と犬の交流の場になっている。踏切側にある入口から中に進むと屋根付きの浮島が池に囲まれている。それなりに古い床下を走り抜けて二台あるうちの手前の二人掛けベンチへ腰を掛けた。
「じいちゃんばあちゃん、スマホ壊れた」
俺は純粋に笑ってくれると思っていた。だがその顔が心配な色に変わった時、なぜか嬉しかった。
「なんでよ」
老犬のパピヨン、ハッピーのお母さんは顔をしかめて言った。
「昨日、親と喧嘩してよ、腹が立って投げたらぶっこわれてさ。これじゃ何もできねえよ」
ハッピーのお母さんは言った。茶色い髪が風になびいていた。
「そりゃそうだ」と、あおい野球帽をかぶったじいちゃんはがやっと笑ってくれた。背の高いじいちゃんだ。隣にはニット帽を被ったじいちゃんが立っていた。俺は言った。
「なあに、スマホなんかなくったってこまりゃあしないさ」
「こまりゃあしないって、今どきスマホがなけりゃあ何もできないっていうじゃないか」
それを言ったのはニット帽のじいちゃんだった。俺はますます嬉しくなった。嬉しくなっちゃいけねえ、これじゃあ不幸ものだ。心の中ではそう思っていた。
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