クール・ビューティと熱血漢

Phantom Cat

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 私は昔からよく「クール・ビューティ」と言われていた。ぶっちゃけ、自分でも顔立ちやスタイルは悪くない、と思っている。


 だけど実のところ、私は未だに彼氏いない歴=年齢だ。どうも美人過ぎるとかえって男性は腰が引けるらしく、声を掛けられたことは一度もない。しかも私は口下手でコミュ障。それがさらに「冷たい」という印象を与えているようだ。


 だけどそんな事は私にとってどうでもよかった。それよりも私は自分のやりたい事に熱中していた。


 大学1年の必修科目でプログラミングに初めて触れた私は、その魅力に取り憑かれ、独学で技術を磨いてとうとう一つのシステムを作り上げた。


 Web小説サイト用音声投稿サービス、VoiceNovel 。音声認識を使い、口頭で話すとその内容がそのまま投稿できる。


 これが非常に好評で法人化の運びとなったのだが、会社経営に全く興味がなかった私は、技術顧問という形でかかわるだけにして経営は大学時代の友人に任せ、卒業後は都内の開発系企業に就職した。


 しかし。


 私はその会社をわずか1年で辞めざるを得なくなった。原因はストーカーだった。


 その男は部署の先輩で、「ニック」と呼ばれていた。名の通り外国人だが日本語はかなり流暢。私が一度彼に微笑みかけたというだけで、彼は私を執拗にデートに誘ってきた。いくら拒絶しても全く動じず、とうとう彼は私のアパートにまで押しかけてきた。


 上司に相談したが、どうもニックは海外の大口取引先の御曹司らしく、クビを切るのも転勤させるのも難しいとのこと。警察に相談してみても、具体的に何か害がなければ対処できない、と言われただけだった。


 こうして私は会社を辞めた。そんな時、例の友人から打診があったのだ。VoiceNovel の経営が順調なので役員報酬も十分出せる。取締役兼CTOにならないか、と。


 一も二もなくその話に飛びついた私は、大学時代を過ごした街に戻り、 VoiceNovel 開発チームのトップとして今日もコードを書いているのだった。


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