第4話 義理の妹の命令。

 義理の妹沙羅に土下座後、一階のリビングでポップコーンを食べた。午後六時になると父さん抜きの三人で晩御飯。会話は無くお通夜状態。


 晩御飯後風呂に入り、今は自分の部屋にいる。時刻は午後八時。父さんはまだ帰ってきていない。


「可愛いなぁ。ふへへ」


 俺は推しの◯イチューバーの歌枠生配信を視聴中。癒されりゅ。


 ——コンコン。


 ……ん?


 部屋の扉からノックの音が聞こえた気がする。


 ——ドンッドンッ!


 力強く扉を叩く音。


「はっ、はい!」


 俺は慌てて扉を開けた。義理の妹沙羅がいた。


「な、何?」


 沙羅は俺を睨みつけている。美少女が台無しだ。


「あのさぁ、扉開けるの遅いんだけど? ブタだから? このノロマ!」


「ご、ごめん」


 沙羅の怒声。可愛い声が勿体ない。


「ちょっと」


「何?」


「もう少し下がってくれる? 近いんだけど」


 俺は言われるがままに後ろに下がった。沙羅は部屋に入らず廊下にいる。


「情けない……」


 沙羅の顔が一瞬切ない顔になった。


「あのさぁ。もうすぐ夏休みだけど、あんた夏休みの間おじいちゃんの家に行ってくれない?」


「え? どうして?」


「夏休みさぁ、友達が泊まりに来るんだけど、あんたは邪魔なんだよね」


 邪魔……か……そっか。俺がいると気を使うよな。


「別にいいけど、じいちゃんも予定有るかもだから断られるかも……」


「何言ってるの?」


「はい?」


「あんたにはって選択肢しかないの」


 沙羅の目がマジだ。どうしよう……。


「わ、分かった。明日——」


「今すぐ話つけてこいっ。パパも帰ってきてるし。絶対に行けよ」


 沙羅は吐き捨てるように言って自分の部屋に入っていった。


 俺は一階に降りリビングで寛いでいる父と母に夏休みの間じいちゃんの家に行っていいか聞いてみた。


 二人は了承してくれた。じいちゃんに電話して聞いてみたら『来ていい』と言ってくれた。嬉しそうだった。


 両親は察していた。


 じいちゃんとの電話が終わると父さんが、『少し距離を置くのも良いかもな』と言った。


 母さんも『ごめんね』と申し訳なさそうに言った。


 俺は『ごめん……』とだけ言って二階へ戻った。


 ◇◆◇


 沙羅の部屋の扉をノックした。


『どうだった?』


 扉越しの会話。


「……行くことになったよ」


『そう。分かった。じゃ』


 何故だろう、とても冷たく感じた……。


 ああ。そっか……俺……嫌われてるんだな……。


 気付いてしまった……。


 気付きたくなかった……。


 違う。


 知っていた。沙羅が心の底から俺を嫌っていたこと。


 認めたくなかった。


 俺は部屋に戻りベットに潜った。


 大丈夫だ。明日になればいつものお馬鹿な俺に戻れるさ。


 だから——


 今だけ情けなく泣かせてくれ……。


 俺は枕に顔をうずめた。

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