第三話
秋になり、再び墓参りの時期がやってきた。
母の妹である麗子叔母夫婦もやってきて、その息子と娘二人もやってくる。私にとっての従兄妹たちだ。従兄妹の三兄弟とは年が近く仲が良かった。特に4歳上あった従兄・健太郎のことは「けんちゃん」と呼んで田村三姉妹で慕っていた。
健太郎は隠れん坊が得意で、いつも最後に皆で探す。怒られる数も一番多く、隠れん坊で納屋の屋根の上に隠れて怒られたり、自分の妹二人にちょっかいを出して怒られたりしていたが、私たちをとりまとめ、遊んでくれるムードメーカーだった。
私は健太郎の真似をよくした。私だけではない、私の妹たちも同じだった。
例年に違わず、私は祖父母と両親、叔母夫婦、従兄妹三人と妹二人と共に坂を登って墓参りに行く。墓参りと言えばしんみりしそうだが、この時ばかりは子供が多く、まるでお祭りのようにとにかく賑やかだった。墓参りが終われば、祖父母を囲んで皆で昼ご飯を取り、その後に子供たちだけで祖父母の広い家で遊びまくる。それが一番の楽しみだった。
祖父母が用意したお寿司を囲んで、皆でわいわいと話した。学校はどうだとか、幼稚園での仲の良い友達だとか、父や母の仕事のこと、子供たちに通わせ始めた習い事のこと、祖父母の田んぼや畑の様子、祖母が大事に育てているスイカ……それらを祖父はお酒で真っ赤になった顔を綻ばして聞いていく。
昼食が大体なくなると、まず一番年上の健太郎が立ち上がって、今回の遊びの提案をした。
「トランプをしよう」
私たちに異論はない。健太郎の提案することは何でもかんでも楽しかったからだ。母たちも「ならあっちの部屋にいっておいで」と私たちを見送る。これから大人だけでの話をするのだ。
一時間ほど居間で従兄妹たちとトランプをしていると、母と叔母が「楽しそうねえ」と言いながら入ってきた。父と叔父は祖父と共に男だけの話をしているらしかった。
「天気もいいし、外にでも行ってきたらいいんじゃない?」
母が言った。
「そういえばドングリの季節だね。お姉ちゃん、あそこ、今ならドングリいっぱい落ちてるんじゃない?」
麗子叔母がそういうと、母は嬉しそうに「いいね!」手をパンと叩いた。
健太郎やその妹たち、私やその妹たちが口々に「どんぐり」「どんぐりだって」と言い合い、顔を輝かせた。誰が一番大きくて立派なドングリを見つけられるかの競争の火蓋が切って落とされようとしていた。
「ドングリ拾いに行く人、この指とーまれ!」
私を含む、子供たち全員が母の人差し指に群がった。
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