第65話 ジャクソンカメレオン

第三者の声。それは全く想像しえない場所から聞こえてきた。


ライネル達の足元である。


この洞窟の中には石で出来た祭壇があり、その上で試練は行われていた。


試練には立会人が存在し、5分と言う制限時間を設けられてその縛りに従いライネルは身を削る思いで動き回っていた。


その光景を達観した眼差しで見つめる1つの石像。会話は出来るもののカタコトで話し口すら動く事はない。どの器官が発声しているのかすら謎だった。


しかし先程までは確実にこの石像が声を発していた。だが先程上がった笑い声の声色は間違いなくこの石像と同色のものである。


なぜ分かるのかと言うと石像の声と足元から聞こえてきた声が奇声とも呼べる甲高い特殊な声だったからである。


耳を不快にさせるその声の主を探すライネルはある違和感に気付く。


ある1部の床が歪んでいるではないか。


──そこか。


僕は腰帯剣をスルリと抜くと鞭の様にしならせ歪んでいる床に向け叩きつけた。


「ぎゃーーーーーー!」


床に当たる直前──床から甲高い特殊な声で断末魔の叫びが上がった。


「……えっ!?ライネル王。そこに誰かいるのですか?」


ライネルの突然の行動に驚きを隠せない様子で絶鬼が声を上げる。


「──うん。そのはずだよ。そこから声がしたからね。」


「……い、痛いじゃないか!」


そう聞こえると徐々にその声の主が明らかになっていく。


それは緑の体に下に向け丸まった尻尾。背中にはギザギザと背中を守る表皮があり、頭部には角が3本生えている。


そうそれは──巨大なジャクソンカメレオンだった。


通常ジャクソンカメレオンは通常緑色だか驚くと青色に変色したりする種類の擬態をする。しかしこのジャクソンカメレオンは特殊であり角すらも自らの赴くままに擬態することが可能なのだ。


「……で?君は誰?」


「僕はジャック。カメレオンさ!」


「まぁ……それは見ればわかるけどさ?なんのためにここにいて王の試練の邪魔をしてたの?」


「……げっ。気づいてたの?」


「ううん。今少し会話して気づいたんだ。君は王の試練の代行者でもなければ司会者でもない。ただの嘘つきカメレオンなんだってね。」


「……くっ……なんでバレたんだよ……僕達の計画は完璧なはずだったのに……」


「「計画?」」


「……はっ。しまった……」


ライネルに遅れながらも絶鬼と龍鬼は剣を抜きジャックに向け威嚇する。


「その計画とやらを話してもらおうか。」


「……それは……言えない。」


「……ふぅん。この状況が分かってないみたいだね。僕達にかかれば君なんてケツから口に向かって串をぶっ刺して丸焼きする事も簡単なんだよ?」


「あわわわ……それだけは……それだけは……」


「じゃあ話してくれるね?」


「……わ、分かりました。ですが決して僕から聞いたと言わないでおいてもらえますか?もしも…もしも僕が話したことがバレたらアイツらに皆殺しにされてしまう……」


身震いしたカメレオンは体の色を変化させながら怯えた様子を見せる。


「分かった。だがそれも君次第だよ?誠心誠意僕達に協力すると言うのなら誰にも口外しないと神に誓おう。」


「……分かったよ。だからお願いね?絶対だよ?ね?ね?」


どうやら本当に話す気になったのか絶対に口外しない事を条件に計画の内容について話す事に承諾してくれたジャックなのであった。


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