第61話 鬼核石は誰が?
「それで…その石ってどうするの?」
ライネルは目の前に出された巨大な鬼核石の処遇が気になった。この鬼核石という物は鬼の胆力の源であり鬼にとっては必要不可欠な存在。それを目の前に出してしまった天鬼自体大丈夫なのか?と疑問に思ったのだ。無論それはライネル自身にも影響を及ぼす可能性があるからだ。
「あぁ……問題ない。ライネルの中にはもっと巨大な鬼核石があるからの。通常眷属ならば我の7分の1の鬼核を持っておるはずじゃ。しかしもう我の眷属は淵鬼とライネルだけ。さすれば我の力を2分した特大の鬼核石がそなたの胆力の源となっておるのじゃ。お主のスキルが強力なのもあるがそれ以上に核石の影響が大きいんじゃ。この鬼核石は我の力の残りカスみたいなもんじゃ。」
「は?この大きさで残りカス?人の頭1つ分は優にあるしとてもじゃないけど体に入りそうに無くない……?」
「あぁ……ライネルは分からぬよな。鬼核石は体に入ると圧縮されるのじゃ。そうじゃな……そなたの核石の大きさを憶測するならあの山 ひとつ分は優にあるじゃろうな。」
………え?山1つ分?それってヤバくね?
「ん?はて?それにしてもおかしいのぉ。淵鬼の鬼核石はそなた程大きくは無かった。特殊な色をしておったが……。それはライネルも同じか……まぁ難しい事を考えるのは辞めようかの。ははは。」
思考を辞めてしまった天鬼にすっかりと存在を忘れてしまっていたが鬼達が驚愕している。
「──では要約するとライネル様が王となることで我々は救われるという事で……よろしいのですね?」
「あぁ。間違ってはおらぬな。しかし今のままでは王にはなれぬ事は皆の周知の通りじゃ。」
え?王になれって言ったりなれないって言ったりどういう事?
「はい………。王の試練ですね。」
絶鬼が声を発した。
「うむ。王たる者の人格。強さ。そして……存在力。それを神に示さねばならぬ。」
「……王の試練ってやつを受けないといけないってこと?」
「あぁ。そうじゃ。試練は一族に伝わる儀式に則って厳かに行われる。明日からは忙しくなるぞぃ。」
そしてこの時僕はすっかり忘れてしまっていたのだ。天鬼の鬼核石がどうなったのかを。
──あれから数日が経った。
「ライネル様。準備はもうよろしいので?」
「うん。もう一度確認だけど龍鬼と絶鬼はついてくるんだよね?」
「はい。勿論です。」と2人が声を揃えて頷く。
どうやらこの王の試練はどこか別の場所でやる儀式らしい。それも2人の従者を従えての挑戦……所謂3人パーティでの挑戦が認められているとのこと。王となる者の人格や存在力を測るのに仲間は必要不可欠であり単身での挑戦は不可なのだ。
僕達は挑戦前の本日。元鬼の集落の住民たちにある場所へと連れていかれた。そこには豪勢な料理が所狭しと並べられ女性の鬼が12名程扇状に待ち構えていた。それを見た炉鬼、羅鬼、無鬼が頬をぷくっと膨らませて不満げにしていたが僕の視線は1つの料理に独占されていた。
──あれは……見覚えがあるぞ?
確か……あの物体は……中身が違うかも知れないが……あの丸く美しいフォルムは……
そう──たこ焼きである。
僕は前前世の記憶……日本の記憶をまた少しばかり思い出したのだった。
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