第32話 リリアム討伐
クソっ…このままじゃまずい。リリアムに僕の攻撃は効かない。スプライトにしてもこのままじゃ無理だろう。とは言っても逃がしてもらえるとは思えないしな……どうしよう……
僕は悩んだ。しかし一向に妙案が浮かばない。
……どうしよう。聖なる攻撃か……。いや待てよ?天気予報ってそもそも何なんだ?
ニーニャ先生には天気予報ってスキルと言われたが…本当にそうなのだろうか?もしも間違って教えられているとするなら僕のスキルってどんなのだ?
天気天候に関するスキルという事は間違いなさそうだけど……予報って言う割には自分の思い通りに発生するんだよな……?………!?もしかして天気予報って全く違う意味だったりして……前世の記憶で天気予報は天気を予測して報告する人という認識だったがそれが間違っている可能性がある。……そうか。そういうことか。
……となると?僕は何が出来るんだ?
うーん………
もうここはダメ元でも当てずっぽうでもいい。何か考えて答えを導き出すんだ。正解でも不正解でも命をやり取りしているこの瞬間に最善の策を考える事が無理がある。苦肉の策で良いのだ。とりあえずここを乗り切るしかない。
天気予報……天気を操る事が出来る。これは決してイコールではない。となると……
天……天気?天候?気象?神様?………天神様?
気……そもそも漢字の《気》であってるのか?もしかして《姫》?《忌》って可能性もあるな……
天気……天姫ということに仮定するか。
そして予報……予め報告するみたいな意味合いだろう。
予……予知?予言?………付与!?付与なのか?
報……報告?方法………魔法……?法律……。最後がどうしても分からないな……予報というのは今までの経験上予め報告するではない事は明白だ。
しかし答えが直ぐに導き出せるものでも無さそうだ。
予報の予だって……もしかしたら《
兎も角この窮地を脱するしかないのだ。よし。一か八かだ。やるっきゃない!
「……天にまします我が主、
ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーー
突如現れた渦巻き状の巨大な入道雲。外から見ても分かるほど中には帯電しているようでバチバチと物凄い音がしている。
「な、な、なな、なんだ!?これは。流石にまずいわね……一旦撤退よ……」
リリアムは自らの姿を蝙蝠に変えて僕達の前から逃げようとした。しかし──
天から声が聞こえた。
──我が子ライネルよ。我の力存分に使うが良い。《
それは澄んだ女性の声だった。きっと《姫》なのだろう。姿は見えなかったけれどその美貌はとんでもないと思う。というか思いたい。
刹那。辺りは真っ白に染まり僕達の視界も奪った。しかしその光は暖かくとても雷の様に猛々しいものでは無かった。神の優しさに触れた瞬間とでも言おうか。そして白けた視界がぼんやり元に戻った時。リリアムの姿は白く輝く細い雷の槍に串刺しにされていた。
ぎ………ギヤァァァァァーーーー
それが彼女の断末魔だった。糸が切れたように動かなくなり蝙蝠も彼女の体の一部として姿を現し、バラバラ遺体となって凄惨な現場に早変わりだ。
「うげ……ライネル。もっと綺麗に出来ないの?」
アイリスがリリアムの死体を見て無茶を言う。ギリギリ勝てたと言う感じなのに何言ってんだこの犬っころは。
僕はアイリスの犬耳をつねった。
「いたたたたたたっ!ご、ごめんって。許してよぉ。言いすぎたのは謝るからぁ。」
「まぁまぁ。娘もこう言ってるし許してやってくれぬか?」
バルムス王に免じて許してやったが……冷静になって周囲を見たら物凄いことになっていた。
リリアムの死体が可愛く見えるほどだ。
メイクード王国の住民たちは全て殺され操られていたのだ。予めプログラミングされた行動を取るように命じられていたことは明白だったが結局誰がやっていたかって?それはリリアムだ。間違いはない。術士が死んだことで術が解けたのだ。まぁ黒い塊を上空に集めた時点で粗方の犯人は分かっていたのだが。
そして僕達はこの凄惨な大量殺人を犯したスプライト達魔族を討伐するために再度メイクード城を目指して街道を歩いた。
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