魔術師の子供たち

宇土為 名

プロローグ

 私の祖父は魔術師だった。

 ひとりを好み生きていた。結婚しているはずの祖母とも、同じ家には住みたがらなかった。その祖母も私が幼い時に他界し、ふたりの娘であった私の母とは当たり前のように、次第に疎遠になっていったという。

 母もそのような祖父を求めなかったのだ。

 祖父もまた、自分の娘を求めなかった。

 他人同然の親子だった。

 母は固く私に祖父に会うことを禁じていた。

 だが、私は一度だけ祖父に会いに行ったことがある。

 何かの折に、禁止されていた祖父の住む家へと私は向かった。それが何だったのかは思い出せない。息を切らして着いた玄関先で、私はついに扉を開ける勇気を持たなかった。

 そもそも祖父は、私という孫が存在することさえも知らないのではないか──

 私は帰るに帰れず、生垣の中に蹲り、ひっそりと、家を伺った。

 やがて、縁側の障子を祖父が開けた。

 遠目に見た祖父は、驚くほどに若かったことを覚えている。

 それは遠い記憶だ。

 祖父は孤独の中で何を思っていたのだろう。

 今となっては誰も──何も、もう、知ることは出来ない。


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