第90話 治癒魔法

「「うおぉぉぉ!」」


前線は、兵士達の熱気と、血の臭いに満ち、足元には即死した兵士達の死体が転がっている。


戦闘に参加する前に、相手をひるませる狙いも込めて、シャルナ島で船に撃ち込んだ落光をお見舞いする。


描き上げた魔法陣が白く光り、真っ暗な上空に光が現れる。


ゴウッ!!


周囲を白く照らしながら垂直に落ちてくる光の柱。

戦場では上空にまで気を配っている者は少なく、落光の範囲内にいた神聖騎士団の兵士達は、一瞬にして蒸発し、跡形も無く消え去った。

しかし、付近にいた者や、即死しなかった者達は、徐々に体が回復し、また戦闘に戻って来る。兵士達が広場内に広がっているせいで、使った魔力に対して、敵に与える被害が少なすぎる。かといって、もっと広域に被害を与えられる魔法では、威力が落ち、即死させることが出来ない。

聖女…なんとも厄介な奴だ。


「ニル!頭を狙うぞ!」


「はい!」


アンティ達の援護をしつつ、俺とニルはいつもの様にツーマンセルで動く。魔法は威力が高く、中級以下の素早く使える物に限定した方が良いだろう。そんなことを考えている間に、神聖騎士団の連中が雄叫おたけびを戦場に響かせる。


「「「おおおぉぉぉぉぉ!」」」


「引くなぁ!全ては愛聖騎士様の為にぃ!」


金騎士ブライアンの声が響き、灰色の鎧を着た兵士達が、それぞれの武器を掲げ、血走った目で走って来る。


今まで、俺はそれなりの人数がいる軍隊と、まともに正面からぶつかった事が無かった。

これが戦場かと…緊張で口の中に出てきた唾液だえきを飲み込む。

目の前に映るのは、敵のみ。その全てが鎧を身に着け、武器を掲げている。張り詰めた緊張感で肌がピリピリとする。


「これが…戦場か…」


「ご主人様!来ます!」


ニルの声に、ほうけた自分の顔を横に振る。覚悟していた事だ。いつかはこうして戦場に立ち、神聖騎士団と戦う日が来ると。

目の前に広がる光景には絶句するが、むしろ、軍隊の敵兵数だけで言えば、数百人なんていうのは少ない方だろう。最初の戦場が、この程度で良かったと胸を撫で下ろすべきかもしれない。


「ニル!背中を頼むぞ!」


「はい!」


最前線の兵士達が、直剣を構えて突撃してくる。最初は槍兵や騎馬隊も居たが、アンティ達の奮戦ふんせんによって、そのほとんどが武器を破壊されて直剣に持ち替えている。


「来たかシンヤ!ニル!ぶわっはっは!」


「兄者!もう一回いくぞ!」


「おっしゃ!!」


初陣だというのに、巨人の四人は楽しんでいる様にさえ見える。全身に浅い切り傷が入っているのに、そんな細けぇことはどうでも良い!とでも言いそうだ。

俺達も盟友ならば、負けてはいられない。


「はぁぁ!」

ザシュッ!


俺の薄明刀は、あのワームすら易々やすやすと切り裂いたのだ。兵士達の身に着けている鉄製の鎧など、豆腐みたいなものだ。

先頭を走ってきた兵士に、薄明刀と垂直に振り下ろすと、鎧を含め全身を真っ二つにする。別れていく右半身と左半身。その中からどちゃどちゃと内包物が音を立てて落ちていく。


「どおおぉぉぉ」

ガシュッ!

「だぁぁぁ」

ブシュッ!


次々に襲ってくる兵士達の頭を、何度も何度も切り開く。左手で魔法陣を描くと、茶色に光り、周囲にいる兵士達の腰に石が巻き付き、動きを止める。


中級土魔法、ロックバインド。

見た目通り殺傷力は無いが、それなりに強固な拘束系魔法だ。


「カンティ!!」


「むん!!」


バキバキバキ!!


ロックバインドごと、拘束された兵士達を銀の戦鎚が薙ぎ払う。


「ぐわっはっは!どうだぁ!」


剛腕の名が輝く一撃だ。


背中側にはニルが戦う剣戟けんげきの音が聞こえ、魔法陣の光も見える。黒盾に仕込んだシャドウテンタクルで拘束してから頭を狙っているようだ。心配は要らないだろう。ニルも十分相手を圧倒出来る実力を身に付けている。次々と兵士達の額に蒼花火を突き刺しては、その頭部を蒼色の炎に包み込んでいく。


ここまでやっていても、飛び込んでくる事に一切の躊躇ちゅうちょが無い兵士達は、足を止める事無く近寄って来る。


今まで戦ってきた戦闘の数々で、ここまで統率が取れた部隊はいなかった。

神聖騎士団は一つの組織であり、よく分からないに命を賭けている。それについては疑う余地は無いが、それでも、末端の者達は、聖騎士や金騎士の様な確固かっこたる思いは見えない事が多かった。実際、好き勝手出来るから神聖騎士団にいるなんて奴も少なくはないはずだ。

しかし、ここにいる連中はそんな半端な者達とは全く違う。でも、それは訓練されているからという話ではない。汗と涎と血にまみれた顔の、ギラギラとした瞳の奥には…狂気きょうき的な何かが宿っているように見える。


ブシュッ!

「っ!おぉぉ!」


何人目だったか覚えていないが…兵士の頭では無く、腕を飛ばした時、痛みは感じているはずなのに、彼は自分の痛みより、俺達の事を殺す事を優先させ、斬りかかってくる。


ガシュッ!


かぶとの上から水平に男の顔を斬ると、前のめりに倒れていく。

それを見て、より一層兵士たちの異常な忠誠心を感じた。


「ワラワラと面倒な連中だなぁ!」


ドゴォォン!


イヴィバインドなどの拘束系魔法を駆使して数を減らしてはいるが、俺達の体力も、魔力も無限ではない。このまま戦い続けていれば、先に倒れるのは俺達だろう。

巨人達も、俺とニルも、全身が兵士達の血でベトベトになっている。おかげで嗅覚はほとんど利かない。


さっさと聖女を見つけ出して殺す。それがこの状況を打破する最善の策だが、どこにいるのか…後方だという事は予想が付くが、それらしき人物は見当たらない。


ガゴォォン!

「うあ゛ぁぁぁ!」


戦場の中に、多きな黒い岩が投げ込まれ、転がっていくと、神聖騎士団が下敷きになり赤い絨毯じゅうたんが敷かれていく。


「大変そうだな!俺達も手伝うぜ!」


大きな岩を投げ込んだのは、集落にいた巨人族の男性諸君しょくん


「お前達は手を出すなって言ってあっただろっ!」


アンティが大声で叫ぶ。


「負けたら俺達全員が危機になる戦いだろう!それなら俺達が手を出すのもおかしくはないだろう!」


「行くぞ!」


「おっしゃぁぁ!」


鉄製の戦鎚を握り締めた巨人達が次々と戦場に向かって来る。

確かに俺がアンティ達と約束したのは、これから先に起きるであろう神聖騎士団との全面戦争に対するもので、今回の事は含まれていない。

今回の戦闘が敗北で終われば、巨人達がどうなるか…考えるまでもないだろう。


狼狽うろたえるなぁ!我々は愛聖騎士様のご寵愛ちょうあいを受けている!恐れることは愛聖騎士様のご寵愛を疑う事と知れぇ!」


金騎士、ブライアンは戦いには参加していないが、兵士達の鼓舞こぶを絶え間なく続けている。その度に兵士達の瞳により深い狂気が刻まれ、勢いが増していく。


「アンティ!カンティ!俺とニルが聖女を探し出す!ここを任せるぞ!」


「ぶわっはっは!任せとけぇ!!」


「ぐわっはっは!まだまだ余裕だぁ!」


グシャッ!


最初から戦っているアンティとカンティは、傷だらけで息も上がりつつあるのに、高らかに笑い、金銀の戦鎚を振り下ろす。

他の皆が来てくれた事で、俺とニルが抜けても、戦線を保つ事が可能になった。聖女を探して殺すタイミングは、今しかないだろう。


「ニル!」


「はい!」


後ろを守ってくれていたニルを見る為に振り返ると、美しい銀髪や、白い肌に血がこびり付き、酷い有様ありさまだ。

それでも、身なりを整えている場合ではない。


「行くぞ!」


「はい!」


一度戦線を離れ、戦場を大きく回り込み、端から最奥を目指す。巨人達が派手に戦ってくれているお陰で、こちらに向く目は少ない。


「死ねぇ!!」

ザシュッ!


「うおぉ!」

ガンッ!ザクッ!


俺が兵士を斬り捨てると、直ぐにニルが後ろから出てきて、相手の攻撃を受け止め、反撃を繰り出し、兵士の頭を燃やしていく。


「殺せなくてもいい!囲まれる前に一気に駆け抜けるぞ!」


「はい!」


派手な魔法は抑え、突破力の高いウィンドカッターや、アクアスピアを活用し、走りながら次々と兵士達を斬り伏せていく。

即死させられなくて治癒魔法で回復するとしても、暫くは動けないはずだ。その間に一気に抜ける!


ガシュッ!ザシュッ!


俺とニルに気が付いて集まってくる連中を斬りながら走っていると、やっと後方の、兵士の居ない領域が見えてくる。


「ニル!」


「はい!」


俺がニルに手を差し出すと、ニルが俺の手を取る。


「…オラァァァ!!」


ニルの手を握り、思い切っきり正面に


軽やかに宙を舞うニル。クルクルと体を回転させながら飛んでいくと、兵士のいない領域に着地する。


何度かニルとの訓練で試した技だ。相手を挟み込む為に使えるかもと考えていたが、半分あそびだった。本当に使う時が来るとは…なんでも試しておくものだ。


投げ飛ばした直後に俺が兵士達の中へと斬り込む。

ニルの華麗なジャンプ…?に目を取られていた連中を殺すのは、とても簡単だった。


ザシュッザシュッザシュッ!


「死ねぇ!」


俺から目を離さなかった男達が斬りかかって来るが、もう遅い。


「ご主人様!」


ニルが黒盾に仕込んでいた闇魔法が発動する。


ビュッ!


真っ直ぐに伸びてきたシャドウテンタクルが、兵士達の間を割って俺の腕に絡み付くと、グイッと力強く引っ張られる。


そのタイミングで地面を蹴ると、兵士達の頭上を大きく跳び越え、ニルの元へと引っ張られていく。


これも曲芸的な感覚で練習していたが、地上で魔法陣を描く暇が無い時に、無理矢理その時間を稼ぐ為の策の一つだ。


空中を飛んでいる間に、素早く魔法陣を描いていき、着地する頃には魔法陣が完成する。


「抜けられるなぁ!」

「殺せぇぇ!」


スガガガガガガガッ!


「ぬあっ!」

「いあぁぁっ!」


描いた魔法陣が茶色に光り、地面から棘が生えてくる。小人達と共闘した時に使った上級土魔法、荊棘けいきょくだ。即死を狙うのは難しい魔法だが、回復しても、棘だらけの地形では追って来るのも難しいだろう。体に突き刺さった棘も、拘束として役に立ってくれるはずだ。

まさか上級魔法を足止めの為だけに使う事になるとは思わなかったが…


「そこのお前!!何処に行くつもりだ!」


聞き覚えがあり、イライラさせてくる声が聞こえてくる。


全身金ピカのブライアン君だ。

空は曇っていて暗いはずなのに、金色の全身鎧は、やけにギラギラしている。光るという特性の魔具なのかと疑いたくなる鎧だ。

俺に向けている金の槍の柄には、人の手がいくつも巻き付いた様な装飾。

俺は芸術にうといが……これだけは持ちたくない。キモい。


「ご主人様。」


ニルが俺の前に立ち、ブライアンに向き合う。


「ここは私に任せて下さい。」


相手は金騎士。どれだけ頭のおかしな奴に見えても、そこらの兵士よりは実力がある。それに、このブライアンという男、今まで見てきた金騎士とは違い、ちゃんと訓練している様に見える。俺が相手をしてもいくらか時間が掛かる。そして、その分巨人の皆に掛かる負担が増えていく。


……ニルもかなり強くなった。Sランクのモンスターと渡り合える程に。


ブライアンから目を離すことなく構えを取るニル。


「行ってください!」


今は何より戦場に掛けられている治癒魔法を解く事を優先するべきだ。ニルの言葉に従って、神聖騎士団が現れた山間の道へ足を向ける。


「行かせるかぁ!」


ガィンッ!


「あなたの相手は私です!」


俺は走り出し、後方を目指す。

突き出された槍を黒盾で弾くニル。防護魔法の反撃によって、ブライアンの鎧に傷が付く。


「キ…キサマ……奴隷の分際で…愛聖騎士様からたまわった…鎧に……傷…だと…?

身の程をわきまえろぉぉおおおおおお!!!」


山間の道に入る瞬間、振り返った俺が見たのは、キレたブライアンの姿だった。


ニルなら大丈夫。心配する事はない。むしろ、この先にいる奴の方が危険なはずだ。治癒魔法使いとか…冗談じゃない。皆の為に一秒でも早く何とかしたいが…


山間の道を駆け抜けていくと、大勢の話し声が聞こえてくる。


駆けていた足を止め、山肌から奥をうかがうと、小さめの広場、その中心にいくつかの天幕が見える。その周りに鎧を身に着けた兵士達が数十人うろうろしていて、敵襲に備えているようだ。


「ここが本陣か…」


問題の聖女とやらがどこにいるか分からないが、他に隠れる場所も無い為、恐らくはどこかの天幕の中だろう。

ここが本陣だという事は、ここにも治癒魔法の効果は掛けられているだろう。単身突撃してこの数を相手にするのは骨だが、配置されているのは恐らく全て一般兵。不可能な事ではない。しかし、馬鹿みたいに突撃するより、もう少し効率の良い方法を取りたい。


「何かいい手は…ん?」


どうしようか悩んでいると、最も大きな天幕の中から、紫色の鎧を着たウェーブの掛かった肩甲骨けんこうこつ辺りまである長いブロンズヘアの人物が出てくる。遠すぎて顔も見えないし、何か喋っているようだが、それも聞こえない。

しかし…


「この中にいる女性はあいつだけ…あれが聖女か。」


治癒魔法使いである聖女は女性だけ。その情報が正しければ、あれが聖女に間違いない。


何かを喋った後、その女は天幕の中に戻っていく。


「聖女の場所は分かった。後はどうやってあの天幕まで行くか…」


遠くから天幕に上級魔法でもぶち込むか…いや、聖女本人がどれだけの治癒力や戦闘能力を持っているか分からない。打ち込んで殺せなかったとしたら窮地きゅうちに立たされてしまう。魔力もそんなに残っていない。賭けが過ぎる。

神聖騎士団の鎧でも拝借はいしょくして…って、あの天幕に入るとなれば、確実に顔を見られるし、そんな簡単にはいかないだろう。


「適当に騒ぎを起こして、一気に突撃するか…」


腰袋に入れてある爆音と黒煙を同時に発生させる青緑色の玉を取り出す。

毒は治癒魔法で効かない可能性が高いし、爆発で死ぬとも思えない。聴覚と視覚のみを奪い、混乱しているうちに何人か数を減らし、天幕まで一気に侵入する。


「色々と懸念けねん材料はあるが…このままここでぶつくさ言っていても仕方ないか。」


ポンポンと何度か音煙玉を手の上で遊ばせた後、天幕の方へと投げる。


バァンバァンバァンッ!


直ぐに広場の中に爆音が鳴り響き、黒煙が吹き出してくる。

爆音の音量が上がるようにグリーンモールドの量を調節したが、離れた場所にいる俺も耳鳴りがする程の音量だ。近くにいる者達は今、何も聞こえていないだろう。

常に薄暗い場所だが、黒煙が上がると、視界もほぼ無くなる。準備は出来た。


薄明刀を引き抜いて、天幕に向けて一気に走り寄る。


「なんだこれは?!耳がっ!」


「天幕を守れ!ゴホッゴホッ!」


互いすら見えない、聴覚が狂っている状況でも、数人は天幕を守らんと煙の中を、せながら動いている。


煙を吸わない様に、サラマンダーとの戦闘で使った魔具を起動させて煙の中へと入る。


「誰だっ?!」

ザシュッ!


「敵だ!敵!」

ガシュッ!


互いの声が聞こえていないのだから、連携を取ることは難しい。一人、また一人と天幕までの道程にいる兵士達の頭を斬り開いていく。


十人程切り伏せると、そのまま天幕の中へと走り込む。


バサッ!


天幕に掛けられた布地を払って中に入ると、奥で足を組み、ひじ掛けに肘を置き、頬杖ほおづえをついて座る紫色の鎧を着た人族の女。

顔に対し斜めに垂れ下がった前髪から透けて見える目には、長いまつ毛と黄金色の瞳。それが入って来た俺の目を見詰めている。赤く、れたトマトの様な瑞々みずみずしい唇と、白い肌。

一度見たら忘れられない…そんな、妖艶ようえんな顔をしている。

女が真っ赤な唇を舌で撫で回すと、ニヤリと笑う。聖女と言うにはイメージが違い過ぎるが…


「…んふっ…いらっしゃい…」


「っ?!」


想像以上に低い声が、聞こえてくる。


「私は愛聖騎士。ジェイクよ。初めまして…噂のシンヤ君。」


こいつがブライアンの言っていた愛聖騎士だと?!

巨人族は強大な力を持った種族だ…ブライアンの言っていた愛聖騎士も来ているとは予想していたが……だまされた…いや、騙す意図があったわけではないかもしれない。

俺が勝手に思い込んでしまった。

愛聖騎士という名前、神聖騎士団の連中が寵愛という言葉を使っていた事、部隊は男ばかりで全員が愛聖騎士に傾倒けいとうしていた事。


それらから、愛聖騎士が、だと。


酷く低い声。喉元に突出している喉仏のどぼとけ、そしてジェイクという名前。それらは全て、目の前にいる存在が、であることを示していた。


「そんなの反則だろ…」


見た目は完全に女性だ。鎧すら女性物なのだから、見ただけで、これが男性だと見抜くことは、まずできない。

そして、ここにいる愛聖騎士ジェイクが男性ならば、女性限定である聖女とは別人という事を示している。

恐らく別の天幕に居るのだろうが……こんなのさすがに読めないっての…

というか、ブライアン君…いや、外にいた奴ら…人の好みに口を出すつもりは無いが、このジェイクという男に傾倒けいとうしていたのか……?いや、知りたくない。これは開けてはならぬ扉だ。


「わざわざ敵陣を突破して、こんなところまで会いに来てくれるなんて、随分と熱烈に愛してくれるじゃないの。んふっ。」


頬杖を解き、立ち上がるジェイク。

身長は俺と同じ程度。女性にしては高い身長だが、男性なら普通だろう。


「いや…悪い。人違いでな……帰らせてもらっても良いかな…?」


「恥ずかしがっちゃって…可愛いわねぇ……んふっ…」


自分の頬に指をゆっくりと這わせ、上唇を一つ舐めるジェイク。違う意味で背筋が凍る。


ジャラッ……


ジェイクが腰の後ろに手を回して取り出したのは、金属の刃が連なる紫色の鞭。小さな金属製の刃は、一つ一つがハート型をしている。

長さは見ただけでは分からないが、四、五メートルはあるだろうか…

そんなヤバい物でする遊びなんて知りたくない!

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