第47話 手合わせ

「実はこの心石は、ある程度の魔力を一気に流し込むと、大規模な破壊を招くのだ。」


「破壊?」


「周囲一キロを軽く吹き飛ばす程の威力がある。」


「っ?!」


確かに大規模な破壊だ。


「神聖騎士団はその破壊力を欲しがっているのだろうな。」


「怖い話だな…」


そんな物が大量に神聖騎士団の手に渡れば、街の一つや二つ消し飛ばされる。


「当然心臓に形成される物だから、取り上げられれば死んでしまう。我等はそうならないように抵抗している…という事だ。」


「神聖騎士団に狙われている理由は分かった。だが、今の状況を見るに、それ程苦戦しているとは思えないが…?」


「いや、そんな事は無い。我等アマゾネスは、魔法がほとんど使えなくてな。遠くからバンバン魔法を撃ち込まれると、かなり辛い。」


「魔法がほとんど使えない?」


「魔力が無いわけではないのだが、先程も言ったように、我等アマゾネスの体内には心石が入っている。下手に魔法を使って、心石が暴発したら…」


「なるほど…それは怖いな。」


誤爆で全員あの世行きなんて笑えない。


「だから、使えても初級の魔法程度なのだよ。それを神聖騎士団の連中は知っていてな。近付いて来ないからこの荒野を行ったり来たりしながら攻撃を回避しているところなのだ。」


プリトヒュからの書簡が曖昧な内容だった理由はこれだったらしい。

アマゾネスの事を書いて、誰かに見られたりしたら、良からぬ企みをする可能性がある。だから種族の事までは書けなかった。

どこに居るかは、単純に分からなかった。移動し続けているとしたら、俺が着く頃にはその場に居ない可能性が高い。


「戦闘民族なら、攻めたりしないのか?」


「数が違い過ぎる。我等はせいぜい五十人。向こうは数百は居るからな。いくらアマゾネスが戦闘民族とはいえ、簡単に押し潰されてしまう。」


「ここでも多勢に無勢か……そうなると、俺とニルだけじゃ来ても意味が無いように思えるが…?」


「いや、そんな事は無い。聞いた話では、シンヤはポンポンと上級魔法を使うらしいではないか。」


「別にポンポン使うわけじゃないけどな。」


「ポンポンでなくても、魔法が使える者の手が借りたくて呼んだのだ。」


「それなら、魔法が得意な奴を数人連れて来た方が良かった気がするが…何故俺をわざわざ指名したんだ?」


「それは簡単な話だ。

我等アマゾネスと同等か、それよりも強い男でなければ、我々の戦闘にはついてこられないからだ。

先も言ったように、我々は魔法をほとんど使えない。戦いは常に刃と共にある。我々の戦闘についてこられない者が、魔法を放てた所で、あまり意味は無い。」


「近接戦闘についてしっかりと理解していて、魔法が使える者…ということか。そんな条件に合う奴なんて早々いないだろ?」


「だからシンヤを指名したのだ。情報を集めに行った者が直ぐにその名を掴んできたからな。冒険者のカイドーという者が暴れ狂っていると。

しかも、その名を出したら、獣人族王と繋がりがあると知ってな。指名させてもらったのだ。」


「別に暴れ狂ってはいないからな?!」


人を戦闘狂みたいに言わないでもらいたい…


「あっはっは!」


「それで?俺達は何をしたら良いんだ?」


「うむ。とりあえずは……ここにいる四人をぶちのめしてくれ。」


「………はぁ?」


耳がイカれたかと思って聞き返してしまう。


「アマゾネスは戦闘民族だ。強い雄の言う事ならば甘んじて聞くが、自分よりも弱い雄の言う事など聞かない。

我々と共に戦うという時に、シンヤの言葉に耳を貸さ無いとなれば色々と不都合が出る。」


「まさか……自分達より同等以上の強さを持った奴を選ぶ理由って……」


「せめてこの四人を倒せる奴じゃないと誰も話を聞いてくれないからだ!あっはっは!」


豪快に笑うヤナシリ。


「笑い事じゃねぇ?!」


「大丈夫大丈夫!シンヤの腕は見せてもらったからな!心配ない!ここの連中にも見せる為のデモンストレーションだと思ってくれ!」


「なんて野蛮な奴らだ…」


「それはアマゾネスにとっては褒め言葉だぞ?」


「くっ……」


やりにくい連中だ…


「あたいが最初にやるー!」


「ナナヒはさっき戦ったでしょ?!私が先よ!」


「…チクルはニルに勝ってから。」


「うぐっ…それは今関係無いでしょ?!アタニ!」


「…………」


「賛同していないのにどんどんと話が先に進んでいきやがる…」


「諦めろ!アマゾネスはこういう民族だからな!あっはっは!明日の昼から始めるぞ!」


「わーい!」


「あっ!ちょっと待ちなさいナナヒ!」


結局俺が何かを言う間も無く、話が決まってしまった。


「ご、ご主人様…」


「……寝よう。ニル。俺はもう逃げられないらしい…」


「あっはっは!」


一人笑いながら酒を飲むヤナシリを残し、テントを出る。ヤナシリが言っていた様に、アマゾネスは力を示さない限り、誰も話すらしてくれないらしい。チラチラと興味津々きょうみしんしんな目線は向けてくるものの、近寄ってさえ来ない。


それならそれで良いと、自分達でテントを張ってその中で寝る事にした。


そして問題の時は直ぐに来た。


「よーし!始めるぞー!」


ヤナシリが仕切り、テントからは少し離れた場所に全アマゾネスが集合する。


「完全に見せ物だな…」


「昨日は負けたけど!今日は負けないよー!」


「お、おい。まさか真剣でやるのか?!木剣とかは?!」


「そんなものは無い!真剣でなければ手合わせの意味が無いからな!あっはっは!」


「救援に来たのに、その相手と真剣で試合をするとはな…」


とんでもない種族だぜ…


「良いか?!それでは……始め!」


「行くよー!」


「やるしかないか!」


ナナヒが短剣を構えて走り出す。昨日とは違い、両手に短剣を構えている。


ヒュヒュン!


短剣特有の軽く速い攻撃。そして、体の小ささを利用した低い攻撃。ニルの盾を使った戦い方とはまた違ったものだ。どちらかと言うとダガーを使った戦い方に似ている。


「はぁぁ!」


ヒュン!ヒュヒュン!


何度も素早く振られる短剣。しかし、避けられないほどでは無い。


「こんな簡単に避けられるのは、最近じゃヤナシリ様以外で初めてだよ!」


またしても同じ様に突っ込んでくるナナヒ。


短剣を突き出し、体を捻って短剣を避ける。


「これなら!」


短剣を逆手に持ち変えて引き斬る様に走らせる。


カンッ!


刀の柄で短剣の腹を軽く突くと、軌道が変わり腹の前を通っていく。


「うっそ!?やばっ!」


がら空きになった腹に俺の掌が当たる。試合とはいえ、やはり拳でいくのは気が引ける。


「うぐっ!」


掌で打ったとはいえ、痛みはあるし、何よりナナヒの軽い体は簡単に後ろへと飛んでいく。


「まだ!」


空中で体を縦に回転させて、着地するナナヒ。


「えっ?!どこっ?!」


「勝負ありだな。」


「っ?!」


背後に回り込んだ俺はナナヒの頭をポンポンと叩き声を掛ける。


「嘘でしょ…」


「あのナナヒが子供扱いなんて…」


「抜刀すらしていないのに…?!」


見物に来ていたアマゾネス達からザワザワと声が上がる。


「あー!負けたー!悔しーー!」


「次は私よ!」


声をあげて出てきたのは、金髪ポニーテールのチクル。ニルに倒された直剣使いだ。


「昨日は油断しましたが、今日は本気でいきます!」


地面を蹴り一気に距離を縮めてくる。


ブンッ!ブンッ!


チクルの攻撃は力強い。

一撃一撃に力が入っていて、当たれば相手に致命傷を与える事が出来るだろう。だからこそ、速さが無く、ナナヒの刃より避け易い。


ブンッ!ブンッ!


「全然当たらない……っ!!」


剣を振り抜いたタイミングで、足を払う。


両足が地面から離れて宙に浮いたチクル。


「まだです!」


宙に浮いたまま直剣を振り抜くが、地に足が着いていない状態での斬撃は威力もスピードも無く恐怖感はほとんど無い。簡単に避けられる。


攻撃を繰り出したせいでチクルは受身を取る姿勢に無い。振り抜かれた手を掴み、引いてやると、ほとんど衝撃もなく地面に接地する。


「……ま、参りました。」


素直に自分の負けを認めるチクル。悔しそうな顔はしているが、醜態しゅうたいを晒す様な真似はしない。


「チクルまで…」


「また抜刀もしないで倒しちゃったわ…」


「……次は私。」


青髪ボンボンのアタニ。もう一人の直剣使いだ。


「負けない……」


「…………」


ナナヒ、チクルとは異なり、慎重な立ち上がりだ。

俺を観察し、飛び込む隙を伺っている。


「……はぁっ!」


ブンッ!


鋭く速い一撃。チクルとは正反対とも言えるスタイルだ。


「はぁっ!」


ブンッ!


「やぁっ!」


ブンッブンッ!


ステータスの高さも感じる鋭い攻撃が続く。なるべく自分に隙が生まれないように気を付けていて、引くところは引いている。


「……はぁっ!」


暫く攻撃を避けていたが、剣を振りかぶった瞬間に昨日と同じ様に一気に肉迫する。


「っ?!」


振り下ろそうとした剣の柄を掌底しょうていで強く突き上げる。振り下ろそうとしていたのに、振り上げた格好のままで動けなくなったアタニから直剣を捻って取り上げる。


「あっ!」


取り上げた直剣を手渡す。


「……参りました……悔しい。」


「アタニまで?!」


「あの男強過ぎない?!」


「…………」


最後に出てきたのは黒髪のイナヤ。ニルを捕まえた曲剣使い。


「…………」


「……………」


イナヤからは鋭い、切れるような気配を感じる。


「はっ!」


ギンッ!


「やっ!」


ガキンッ!


ナナヒとチクルはタイプは違うが大体同等の実力、それより少し上にアタニといったイメージだったが……イナヤはその上を行っている。

クルクルと回りながら、踊る様に曲剣を振っている。

鋭く力強い。刀を抜かずに対処するのは難しい。


ガンッギンッ!


「はっ!」


ガキンッ!


流れる様な動きで剣を振り続けるイナヤ。ニルが捕らえられたのも納得出来る。


「はぁっ!」


ブンッ!


「っ?!」


今まで受け続けていた刃を、スルリと避けると、イナヤが驚きの顔を見せる。


「まだっ!」


ガキンッ!


近寄って来る俺を止めようと、切り返した刃は、俺の刀に阻まれる。


トンッ…


がら空きになった腹に拳を軽く触れさせる。


「っ………参りました……」


「イナヤまで……」


「そんな……」


「あっはっは!勝負ありだな!」


「っ……」


「手合わせした四人に聞こう!もう一度やってシンヤに勝てるか?」


ヤナシリは四人に対して、嬉しそうに聞く。


「多分あたいじゃ無理。」


「私も無理だと思います。」


「………多分無理。」


「………無理。」


「あっはっは!これで決まりだな!シンヤはこの四人より強い!つまり、ここにいる誰よりも強いという事だ!」


「はぁ…やっと終わった。」


アマゾネスの女性達は確かに強い。対面した時は緊張感もあるし、二度とやりたくない。

何より、服装が……目のやり場に困るし、一本取るためとはいえ素肌に触れるのは、複雑な心境になる。


「よーし!後は我だけだな!」


「………は?!」


何言ってんのこいつ?!


「当然、我とも戦うべきだろう?シンヤの強さを肌で感じ無ければ分からないからな!」


「あんた族王だろう?!」


「族王だからこそだ。それに、アマゾネスで最も強いのは我だ。この髪飾り。これの数がそのまま強さの段階になっている。私は十。つまり、イナヤの倍は強いという事だ。」


「その髪飾りにそんな意味があったのか…ってそんな事はどうでもいい!なんで族王が出てくるんだよ?!」


「他が全部やられているのに、最も強い我が黙って見ているわけがないだろう?」


横に居たアマゾネスの女性がヤナシリに武器を持ってくる。


剣…と呼ぶには抵抗がある様な代物だ。分厚く普通の剣より五割増で長い。分厚い鉄板を研いで片刃を付けただけの様な無骨な武器で、先端の方は大きく反り返っている。一応分類としては曲剣なのだろうか…?


ブンッ!


「さて。始めるか。シンヤ。」


片手で柄を持って構えるヤナシリ。剣先はピタリと止まって動いていない。完全に使いこなしている証拠だ。


「断斬刀が可愛く見えるとはな…」


「行くぞ!」


地面を蹴ったヤナシリが高速で接近してくる。


ガギンッ!


横薙ぎの一閃を受け止めると、ヤナシリの足が腹に向かって来る。


ガンッ!


俺も足を使ってその蹴りを止めるが、完全には止めきれず、体が浮き始める。


「馬鹿力かよ!」


ヤナシリの蹴りを止めていた足を伸ばし、勢いで後ろへと飛ぶ。


ガリガリッ!


着地点に合わせてヤナシリが走り込んできて、地面を抉りながら切り上げの一閃が振るわれる。


「はぁっ!」

ガギッ!


刀で受け止めたが、体はもう一度宙へと投げ出される。しかし、後方でなんとか着地する。


「やっぱりヤナシリ様は強い!」


「私達の族王なんだもの!当然よ!」


周りが騒ぎ始める。


「…………」


「さてさて、どうしたものか…」


「シンヤ!!」


突然険しい顔付きになり、俺を睨み付けてくるヤナシリ。大声に周りのザワつきもシンと静まり返る。


「な、なんだ?」


「……我を侮辱ぶじょくする気か?!」


「………へ?」


「剣を交えた今なら分かる。わざと手を抜いて負けようとしているだろう。」


「っ?!」


そりゃ族王をぶちのめしたら大問題だろう。ここは上手く手を抜いて負ける。それが一番良い選択だ。

今から共闘しようという相手の族王に、一対一で勝ったりしたら、お互いに色々とやりにくい。

だが、それについてヤナシリが憤っている。戦闘民族の礼儀に近いものなのだろう。考え方が騎士とか侍とか…そんな感じだ。


「シンヤの考えは分からなくはない。だが、我々は戦闘民族。わざと負けられたりしたら、それこそ恨むぞ。」


「……はぁ…分かった。真剣勝負で手を抜くのは確かに失礼だったな。謝るよ。

ここからは俺も本気で行く。負けても文句言うなよ。」


「我はそんなに小さな女ではない!魔法でもなんでも使うと良い!」


「いや。こいつ一本で勝つ。」


断斬刀をヤナシリに向ける。


「あっはっは!そうこなくてはな!」


構えを取り合った俺とヤナシリの間に張り詰めた空気が流れる。

緊張感が伝わったのか、アマゾネス達は拳を作って一言も発せずに俺達のことを見ている。


「…………」


「……………」


「「……はぁっ!」」


ガンッギンッガキンッ!


同時に飛び出した俺とヤナシリ。互いの刃が触れ合う度に金属音と火花が飛ぶ。


「す、凄い…」


「ヤナシリ様と互角に打ち合っているわ!」


「ヤナシリ様!そこだ!」


「男の方も良いわよ!」


周りが刃を交える度に大きく湧き上がる。断斬刀はヤナシリの武器程では無いがそれなりに重い。シンヤのステータスが高いおかげで、なんとかヤナシリの攻撃と打ち合えている状況だ。


ギンッ!ガンッ!


「あっはっは!こんなに激しく打ち合ったのは久しぶりだ!」


ガキンッ!


「そいつは光栄だな!」


ギンッ!


「だが、我の勝ちだ!」


ガギィン!


刃先の湾曲した部分に上手く断斬刀を絡ませて上へと巻き上げるヤナシリ。


「っ?!」


がら空きになった胴に峰打ち、横薙ぎで分厚い剣が振るわれる。死にはしないだろうが、当たれば骨の数本は覚悟しなければならない。


「終わりだ!」


トンッ!


「……は?!」


地面を蹴って逆さになった俺は、振るわれた剣の腹に手を置いて、逆立ちの状態になる。

そのままくるりと剣の反対側に着地し、断斬刀の刃をヤナシリの首の前に持っていく。


「…………」


「俺の勝ちだな!」


「………嘘でしょ…ヤナシリ様が…」


「負けた…?!」


「くく………あっはっはっはっはっは!なんだそれは!そんなもの予測出来るわけないだろう!あっはっは!」


「大爆笑だな?!」


「負けた負けた!私の負けだ!」


「ほとんど互角だったろ。」


「いやいや、何度やってもシンヤには勝てんわ!そんな細い刀でバンバン打ち返されたのだ!ぐうの音も出ない!あっはっは!」


超楽しそうだな……


「なんで楽しそうなんだよ……」


「ご主人様!お怪我はありませんか?!」


ニルが直ぐに駆け寄ってくる。


「ニル。大丈夫だ。」


「良かった…」


「ねぇ!君!名前はシンヤって言うんだよね?!」


「どこから来たの?!」


「…へ?」


さっきまで観戦していたアマゾネス達が、一気にゾロゾロと周りに集まってくる。


「な、なんだ?!」


「昨日話をしただろう。我等アマゾネスは外の雄から子種を貰うと。戦闘民族ならば、当然強い雄の子種を欲しがる。我に勝った雄はシンヤが初めてだからな!こうなるのも当然の流れだな!あっはっは!」


「笑い事じゃねぇ!」


俺は踵を返して全速力で走り出す。


「あっ!逃げたわ!」


「追って!捕まえるのよ!」


「ご、ご主人様は私が死守します!あっ…」


意気込んだニルは秒でアマゾネスの波に飲まれていった。


「ヤナシリ!助けろ!」


「アマゾネスの本能だからな!無理だ!諦めて体を差し出せ!あっはっは!」


助ける気ゼロ。


「冗談じゃねぇ!」


しつこ過ぎるアマゾネス達の追跡により、それから数時間に渡り荒地を走り回る羽目になった。


「はぁ……はぁ……試合より…疲れたぁ……」


土山の上に避難した事で、なんとかアマゾネス達から身を隠す事に成功した。


「ニルは大丈夫だろうか……女性だし大丈夫だとは思うが……」


「シンヤ見ーーっけ!」


「っ?!」


後ろを振り向くと、そこにはナナヒ。試合で戦った他の三人も立っている。


「しつこ過ぎるって……」


「あたい達は捕まえに来たわけじゃないから安心して!」


「??」


「別にシンヤが襲いたいなら襲ってくれても良いけどね?」


腰をクネらせるナナヒ。


「断固拒否する。」


「そんなにハッキリ言われるとちょっと傷付くなぁ…」


「う…す、すまん。」


「あはは!冗談だからそんな顔しないでよ!」


「女性の冗談は心臓に悪い……それで?俺を捕まえに来たんじゃなければ何しに来たんだ?」


「シンヤにお願いがあってきたんだ!」


「お願い?」


「シンヤとニルって、毎日朝に剣の練習してるよね?」


「一応日課にしているが…」


「私達も参加させてほしいの!」


「朝の稽古けいこにか?」


「うん!」


「私達、もっと強くなりたいのです。」


「……私達にも稽古を付けて欲しい。」


「……………」


全員、かなり本気の顔をしている。


「何かわけがありそうだな?」


「………」


四人はピタリと口を閉じる。


「言いたくなければ別に話さなくても良いが…」


「言いたくないわけじゃないよ!ただ…ちょっと話しにくいってだけ。」


「稽古を付けてもらうのですし、理由はお話しておくべきですね。」


「……聞いて欲しい。」


「分かった。」


四人は俺の前に座り、少しだけ暗い顔をする。

そして、ポツポツと話を始めた。

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