最弱デメリットパーティー、奮闘する!

彩りの招き猫

灼熱の町、エリーズ

第1話 失踪

――――――――6年前―――――――――


「なあ、あの暴れ散らかしてる女の人、お前の母ちゃんじゃね?」


 下校途中、突然友達が道端に寝転がる酔っぱらいを指差して聞いてきた。

 少し思考が止まるもうちのお母さんは競馬一発当ててから大人の男がたくさんいるお店へ入り浸っているはず。帰ってくるのも遅いのでこんな時間に見かけるはずもないのだ。


 だが内心そんなこと無いだろうと思っていても気になるものは気になる。

 若干ドキドキしながら友達の指差す方へ目を向けその迷惑そうな女の人を確認する。


「はは…そんなはずな――」


「まーそうだよな。流石にあれはないって」


「お母さん…」


 その場の空気が固まった。


 ……地面に埋まりたい。もはやそのまま埋め立ててくれてもかまわない。

 羞恥心と戸惑いがせめぎ合いもう友達の方を向くことが出来ない。


 いや、そもそも軽々口にした彼でさえ元々冗談のつもりだったらしく予想外な事に気まずいのかこちらを見る事を恐れている。


 そんな最悪の空気の中、俺はため息を吐くように言葉を漏らすのだった。



「ああ……自由になりたい」




✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦



 その後俺は結局友達と別れ、お母さんを背負って帰って来た訳だが……ずっと背中で「うぅ…プリンスのばかぁ…」などと唸っていた為何となく状況は理解出来る。

 しかしそんなお母さんを宥めながら帰って来ると、家ではお父さんがどこか忙しそうに荷物をバッグに詰めていた。


 ……寝袋、お金、衣類、剣。


 俺が呆然と立ち尽くしていることに気付いたらしくお父さんが近付いてくる。

 真剣な面立ちからして大事な話だと瞬時に予想出来るが……ああ、今までの逃げるような行動からこれから何を言われるのか大体分かってしまうのが本当に残念でならない。


「いいかワタル?お前はこの金で好きに生きろ。世界は広い!お前なら出来るはずだ」


 無理だが。


 そう言われポンッと渡されたのは薄汚れた1000ギル硬貨一枚。パンが一つ100ギルなのからして恐らくギリギリ4日生活するのが限界だろう。


「でも!お母さんがホストエルフに貢いでる今、お父さんがいなくなったら……!」


「大丈夫だ」


「最近では友達にお前の母ちゃんヤングオーク!ってからかわれてるんだよ!」


「大丈夫だ」


「お父さんは親が外で飲んだくれて寝ている様子を見ながら下校する僕の気持ちを考えたことはある!?」


「大丈……ぐふっ!」


 おい、あんた笑っちゃいかんだろ。


「とにかく!考え直してよ!」


 すると、お父さんは少し考える素振りをした後、いかにも赤子を諭すような笑顔でニッコリと告げてきた。


「俺は信じてるからな!お前が立派に成長することを!」


「お、お父さん……?」


「ワタル……!」


「だったらもっと金置いてけよおおおおおお!!!」

 

 こうして俺のお父さんはした。

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