vs死神②
「参りますぞ! ――《ガーディアン》!」
スケルトンの群れが、盾を構え大地を力強く踏み抜いたヒロアキに引き寄せられ、
「えいっ! ――《結界・破魔》!」
ヒロアキの目の前に展開された結界に入り込むと骨が徐々に崩れ始め、消滅する。
「フフン♪ いっくよー! ――ッ!?」
(笑止!)
メイが意気揚々と死神に突撃するが、闇の衝撃波に吹き飛ばされてしまう。
「メイねぇ!」
「ヒナタ! メイを回復だ!」
クロが吹き飛ばされたメイを庇うように飛び出し、盾を構える。
「いてて……リクみたいに上手くはいかないね……」
「慣れるまでは、遠距離攻撃でタイミングを計るんだ」
初見で階層主の攻撃を完璧に対処出来る者など存在しない。メイは先程の俺の動きを見て勘違いしたようだ。
「ごめん……できるだけ早く覚えるね」
メイは武器を蛇王戦輪に持ち替え、間合いを取った。
さてと、俺も攻撃に参加するか。
一対の短剣を構え、俺は死神に突撃する。
――《
放たれた闇の衝撃波を無効化し、背後から死神に短剣を突き立てる。
さぁ……来い! 来い!
《
ぐぬぬ……まぁ、これがあるべき形なのだが……
俺は《
這い出るスケルトンの群れはヒナタの結界に浄化され、ヒロアキは死神の攻撃を一手に受けているが、《結界・快》の回復により安定している。
クロは結界から漏れたスケルトンを斧で叩き潰し、メイは遠距離から蛇王戦輪で死神の体力を削り取る。
立ち回りが安定してきたな……と、油断した時――
死神の振り回した大鎌が俺へと迫ってきた。
――《
咄嗟に《
(む? ハッハッハ! 僥倖! 僥倖! ようやく羽虫の実体を捉えたか!)
「リクさん! ――《ヒール》!」
「リ、リク殿!」
「リク!」
「リクにぃ!」
吹き飛ばされた俺にヒナタが慌てて回復魔法をかけ、ヒロアキは俺を庇うように前へと飛び出す。
いてて……失敗した……。
一対一なら自分でコントロール出来るのでタイミングを掴めたが、複数の要因――仲間の行動が絡むとタイミングが掴み辛くなる。
ノーガードで受けたとは言え、一撃で体力の7割をもっていかれるのかよ……。《
タンクが攻撃を引き受け、ヒーラーが傷付いたタンクを癒し、アタッカーが攻撃をする。オーソドックスでありきたりな作戦だが、定番になるだけあって確実な作戦でもあった。
回避の快感に溺れて仲間に迷惑を掛けるとか……地雷プレイヤーかよ……。
俺は死神の射程範囲外に退避。気を引き締め直し、体勢を整えるのであった。
◆
死神との戦闘から一時間。
(我は甦る……何度でも……いつか……お前たちの魂を……刈り取る……その日まで……)
死神は怨嗟の言葉を残し消滅。
死神が消え去ると、そこには大きな宝箱が出現した。
「ふぃー……結構強かったね」
「死神を初見で倒せるプレイヤーの方が少ないにゃ」
「そうなのですか!?」
「先達者の――リクにぃの経験は偉大と言うことにゃ」
生産職という身でありながら、要所で完璧なフォローをしていたクロが、自分のことは言わず、俺を持ち上げる。
「
「わかんないよ! この宝箱から幽冥が出る可能性もあるんだからね!」
「ハッハッ! そうなるといいな。それじゃ、開けるぞ? それとも、メイが開けるか?」
「むむ……蛇王戦輪を出したときは……リクが開けてうちが引いたから……どうなんだろ? リクに開けてもらった方が縁起は……」
「おーい! メイ? どうする?」
「リクさんが開けちゃっていいんじゃないですか?」
「だな……。開けるか」
「わわっ! ちょ、ちょっと待って……」
慌てふためくメイを尻目に俺は宝箱を開放した。
「んー……目ぼしい装備品は死神の手袋くらいかな?」
死神が落とす装備品は多岐に渡るが……一番落とす装備品は死神シリーズの防具だった。武器は強力な種類が多かったが全てレアリティは高く、ドロップ率は低かった。
「私も死神の靴ってアイテムだけですね」
「ボクは死神のマントにゃ」
「私は死神の手袋なのでリク殿とお揃いですな!」
「うちは……死神のマントだ……」
「にゃはは……ボクとお揃いにゃ」
「武器のドロップは0か」
「そんな簡単には出ないにゃ」
死神産のレアアイテムは誰も入手していなかったようだ。
「まぁ、欲しいアイテムが出るまでマラソンだな」
「幽冥ならドロップ率は5%もあるので、そこまで絶望する確率じゃないにゃ」
「5%なのに……5%“も”なのですか!?」
「狙うプレイヤーはいにゃいけど、メイねぇの蛇王戦輪のドロップ率は0.1%未満。ヒナねぇが持っていた凶牛の戦斧もドロップ率は1%未満にゃ!」
「理論値で言えば、20回挑んだら一回落とすのなら……悪くはない確率だよな」
「はわわ……時々、リクさんたちの感覚が怖くなります……」
「うぅ……次こそは絶対に拾ってやる!」
「ハハッ! その意気、その意気!」
「当分は3日に一回は死神狩をするにゃ」
「とりあえず、第三一階層に向かうか」
俺たちは第三一階層へと続く階段へと向かうのであった。
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