スキル練習①

「結構時間掛かったな」

「はい。熟練度は中々上がらないですよね」

「うぅ……うちが5になるのはかなり先だよ」

「《カウンターアブソーブ》なるスキル覚えましたぞ」


 奇しくも、俺とヒロアキは同じタイミングで熟練度が5へと成長した。


「まずは、俺から試してもいいか?」

「はい!」

「何かすることはございますかな?」

「うぅ……うちは手裏剣を作ってる!」

「メイは蛇王戦輪があるから、手裏剣よりも苦内か撒菱か煙玉の方が使い道あると思うぞ」


 手裏剣は使い捨ての投擲武器だ。


 本来であれば、蛇王戦輪のような超レアアイテムは所有していないので有用な武器であったが、メイには無用の長物だった。


「苦内も一緒じゃないの?」

「苦内は手軽に使えるから、釣りとか妨害に使える」

「了解ー」

「んで、ヒナは念のため俺の近くに《結界・快》を展開、ヒロはいつでもタウントを使えるように準備してくれると助かる」

「え? 危ないことするのですか?」

「むむ? 危険な行為なら私が代わりますぞ」

「危険と言うか……タイミングがかなりシビアだから一発で成功するか不明なんだよ。だから、二人は失敗に備えてくれると助かる」


 俺は二人に万が一の保険を託し、実験台となる敵へと向かう。


 今回の実験台は剣を構えた白骨――スケルトンナイトだ。


 いきなり複数体を相手出来る自信はないので、1匹で彷徨くスケルトンナイトを《索敵》で見つけていた。


 さてさて、成功するかな……。


 俺は一対の短剣を構えてスケルトンナイトと対峙する。


 スケルトンナイトはカタカタっと骨を小刻みに鳴らしながら、こちらの動向を伺っている。


 動かないか……仕方ないな。


「――《ショウミー》!」


 俺は人差し指でクイクイっとスケルトンナイトを招き寄せ、声を発しないと発動しないスキル――《ショウミー》を使用した。


 カタカタカタカタッ


 スケルトンナイトが刻む骨の振動が速くなると、剣を振り上げてこちらへ向かって来た。


 俺は大きく息を吸い込みスケルトンナイトが剣を振り下ろしたタイミングに合わせてスキルを発動する。


 《フィク――


 ――ッ!?


 タイミングを見誤ったか……。


 剣で斬られた箇所に鋭い痛みが走る。


 ――《ストーム》!


 一対の短剣――風塵刀と風縛剣を交差させ強風を引き起こしスケルトンナイトを吹き飛ばすと、俺は即座にヒナタの展開した結界の中へと転がり込む。


「――!? リ、リク殿!」


 ヒロアキが慌てて俺の前へと飛び出し盾を打ち鳴らす。


「リクさん! 大丈夫ですか!」


 ヒナタも俺へと慌てて回復魔法を施した。


「大丈夫だ。結界にヒールは流石にオーバーだぞ」

「で、でも……リクさんがまともに攻撃を受けたの見たのは初めてなので……」

「ユリリィィィイイン!」


 俺を心配するヒナタをそよに、ユリコーンは俺ではなくスケルトンナイトを受け止めているヒロアキに補助魔法をかける。


 まともに攻撃を受けたのはいつ以来だ……? リクになってからは初めてか?


 俺は久しぶりに――ソラの頃以来となるダメージの感覚に懐かしさを覚える。


 スケルトンナイト相手に……これだけの痛みを感じるとは……リクのVITは相当な低さだな。


 余りの脆さに、自虐的な笑みが溢れてしまう。


「ヒロ! スイッチだ!」

「む? 了解しました!」


 スケルトンの攻撃を盾で受け止めているヒロアキが後退し、前進する俺とすれ違う。


「来いよ……――《ショウミー》!」


 俺は再びスケルトンナイトを人差し指で招き寄せる。


 カタカタカタッ


 スケルトンナイトが骨を小刻みに鳴らしながら、こちらへ突進して来る。


 さっきはタイミングが遅かった……。


 ほんの少しタイミングを早くすれば……、


 ――《虚構フィクション》!


 1秒に遠く満たないほんの僅かな瞬間、全身に浮遊感が駆け巡り、


 ――ッ!?


 遅れて、剣で斬られた鋭い痛みが走る。


「クソッ!」


 悪態を付きながら転倒すると、ヒロアキがすかさず盾を打ち鳴らしてスケルトンナイトの行動を阻害する。


 タイミングがシビアだとは聞いていたが……効果があるのは何フレームだ?


 4フレーム? 3フレーム?


 どちらにせよ0.1秒にも満たないシビアなタイミングだ。


 俺はその後も仲間の支援に甘えながら《虚構》を何度も練習する。


 そして迎えた7回目となる実験で――


 ――《虚構フィクション》!


 スケルトンナイトが振り下ろした剣は虚構となった俺の実体をすり抜け、役目を終えた虚構の実体が霧散する。


「――!? リ、リク殿!」

「――! リクさん!」


 ヒロアキとヒナタの悲鳴が響き渡る中、スケルトンナイトの背後に現れた俺は風塵刀をスケルトンナイトの首筋に突き落とすと、致命の一撃を受けたスケルトンナイトはバラバラの骨になって崩れ落ちた。


「ふぅ……想像以上にタイミングがシビアだな」

「リク殿!」

「リクさん!」


 額の汗を拭う俺にヒロアキとヒナタが駆け寄って来るのであった。



――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


いつも本作(トプセカ)をお読み頂きありがとうございますm(_ _)m


本作品は1フレームを1/60秒としています!


VR(現実?)の世界でこの単位が合っているのかは不明ですが……(汗

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