第二章 砂漠の語り部 《ガンラバラ編》

第70話 拝啓、

 拝啓 どこにいるのか分からないアストライア様へ我が女神へ


 向暑こうしょの候、いかがお過ごしでしょうか。


 私は不肖ながらも、一人の冒険者として生きることに決めました。

 とはいえ、私はこの現世うつしよでは貴女様から授けられた使命をきちんとこなしている所存でございます。

 今はある森で出会いました、少女、マイアナ・ヨナという少女と共に旅をしております。

 他にも先のガルラガンダの戦いにて、出会いましたマディソン・ヴィクトリアという麗しき騎士と出会いましたが、彼女は王国の中枢と関わりがあるために監視の代わりとして私についてきた可能性があります。ですがきちんと中立・中性的な思考を持ち、対応していく所存でございます。


 現在、私はMis.カエロナのリュシュテンの街を抜けまして、西へと向かっている最中でございます。

 この現世での西の国に行く際も、どの世でも一緒で風景が綺麗に変わっていくようです。

 具体的に言えば、辺りが徐々に黄色く染まり、空気も乾きます。

 草木が無くなり、水がとても珍しいものに変わります。かわりに砂が増え、辺り一面に砂原と荒野が目に映ります。見ているだけでも口の中が乾き、風に吹かれる砂が舞い、口の中に入ってきます。


 ですがそんな風景が私には綺麗だと思えます。

 この現世もまた、生きている。必死に住んでいるとも思えてしょうがありません。

 長くなりましたが、ここまでにしたいと思います。

 神様も、体調を崩されないようお気をつけてくださいませ。


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「ふふっ、そんなことを書かなくても別にいいのですのに」


 白紙の世界。

 その中で、アストライヤに向けられた手紙を読んでいた女性がいた。

 アストライヤであり、アストライヤではない。

 私たちギリシャ神群の中にいながらも、私たちローマ神群にも属し、両方面から疎まれ、中立と正義を示していた私がいた。


 手の中にある私宛てに書かれた手紙を見ながらも、私は頬を崩す。

 私が送り出した善性でありながら、自身のことを卑下にし、自らにナイフを突き立てるような人物

 けれどもその中身は、私のような絶対的な中立的で正義を持つ考えではなく、私に裁かれようとする悪でいようとする人物。

 そんな彼に私は資格を示した。


 なのに、彼は律義にも神である私に手紙を送る生真面目さに少し笑ってしまう。

 どこにいるかわからない神様……確かにどこにいるのかわからないですが、どこにいるのかわからない私に対し、手紙を書くという行為は可笑しくてしょうがない。

 けど、人の子と言うものは可愛らしいと思う。

 健気で真面目で、人としての在り方に正直な人の子と言うものは可愛らしく感じる。当然、可愛がるということは愛でるだけでは無い。親が子を持つというものは時に厳しく優しく接しなければいけない。

 だからこそ、私はこれ以上、何も言わない。

 

 ただ、彼の魂を拾ってよかった。

 そんな神様わたしらしくない考えを持っていた。



「さて、仕事に取り掛かりましょう」

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