エピローグ 新しく産まれた日(四章最終話)
※誠に勝手ながら、先に四章の最終話だけさせて下さい。
途中のエロ話は、ボチボチ書いていく所存です。
後に『ポミケ動乱』と呼ばれる事件の首謀者として、ルーカスは王都守護騎士団に拘束された。
彼は行いの正当性を主張し自己を弁護したが、既に手遅れだった。
ジェシナが集めた証拠が既に騎士団の手中にあったからだ。
彼女から情報を受け取ったジョエルは更に手腕を発揮し、ルーカスと関係のあった貴族達をも拘束した。
というのも、全ての計画が破綻し狂乱に陥っていたルーカスは、ジョエルの尋問に――挑発にともいう――ベラベラと口を滑らせてしまったのだ。
裏付ける証拠は充分に揃っていたため、その日の内に騎士団が出動、繋がりのある貴族達はお縄となった。
ルーカスは留置所の中で幾度も神を呼び、また毛髪を何本も引き抜いたりしていた。
だが、頭部が
『女神』についての有益な情報は、未だ得られていない。
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「ここが私の男のハウスね!」
「突然なんだ」
のっけから聞いたことあるような台詞をお見舞いし、アメリアはB地区に現れた。
アメリアはツバの広い帽子と白いワンピースという、スーパーオーソドックスな美少女スタイルだ。
彼女の立場からすれば質素にも思える服装だが、完璧に似合っている。むしろ飾り気がない分、アメリアの稀な美貌を強く感じた。
「長閑で良いところですね。少々、王都との利便性が気になりますが……」
「良いじゃない。実は私、こういう場所で暮らしてみたかったのよ! ふふふ、この数日間で色んな願いがいっぺんに叶って本当に夢みたい!」
「――はい。実は私も、アメリア様とスローライフ的な生活を送るのが宿願だったのです」
「貴女ソレ気に入ったの?」
アメリアの後ろにはスーツを着こなしたジェシナが立っている。男性用のスーツの筈なのに、彼女に合わせて作らせたような似合いっぷりだ。
サラシは止めたのか、狂暴な胸部がパツーンと張り衣服を虐待していた。胸暴ですわ。
「今日から宜しくねムネヒト。私の部屋なら、貴方と同室か隣で良いわ」
彼女の後ろには荷台付きの高級馬車。今は逞しい男達がせっせと荷を下ろしている。
「やっぱり、そういうパターンかー……」
同じような事が今までに何度もあったから、俺だっていい加減なれっこだ。ここは穏便に……しかし有無を言わせずお帰り頂こう。
「なあ二人とも、此処は――」
「アメリアちゃん! ジェシナちゃん! 来たんだ! 待ってたよ!」
俺の言葉を遮り、土草にまみれたジャージに、作業用ズボンという格好をしたコレットが二人の前に飛び出した。
おっぱいも声も弾ませて、まさに抱き付かんばかりの勢いだ。
アメリアも顔を綻ばせ、友人との再会を喜んでいる。
「レティ早かったわね! いつ来たの?」
「つい昨日から。皆と一緒にね」
「皆……? ああ、そういえば、そういう話になったらしいわね。もしムネヒトが貴女達を不当にこき使われているなら私に言いなさい。本妻希望の愛人である私から注意してあげるから」
アメリアはくすりと笑い、俺とその後ろで仕事している者達へ視線を向ける。
俺たちがいま居る場所はB地区の端あたる。柵から先はC地区とかD地区とかがあるが、今は使われておらず雑草が伸び放題だ。
いや、伸び放題だった。
「うぇーん! ちゃんオリー! 疲れたよー、休みたいよー、草むしりはもうヤダよー!」
もう何度目かのシンシアからの泣き言が入った。
彼女はいつもの華やかなかつエロいドレスを脱ぎ捨て、今はコレットと同様にラフな格好――悪く言えばイモっぽい格好をしてた。
「30分前に休憩したばかりだろ。休むなとは言わないが、もちっと根性見せたらどうだ?」
「あーしらが魅せたいのはコンジョーなんかじゃねーし!」
不服そうな顔をするシンシアだったが、取り付く島なしと判断したらしく作業に戻った。
彼女だけではない。おっぱいギルド『クレセント・アルテミス』の冒険嬢が全員、牧場のメンテナンスに従事していた。
話はそう難しいモノではない。あの『ポミケ』から二日後、コレットが突然牧場を訪ねてきたのだ。
・
・
昨日の朝、コレットと『クレセント・アルテミス』のディミトラーシャが現れたときは、俺達は目を丸くした。
前者は質素なシャツとパンツ。後者は薄手のロングコートを着ており、両者とも露出は全くなかった。
コレットはともかく、ディミトラーシャの肌色無しの格好を見るのは初めてかもしれない。
「冒険嬢、辞めてきちゃった」
コレットの一言目がそれだった。
「誤解のないように言っておくけど『クレセント・アルテミス』を除籍になったワケじゃないよ? ただ
かつて俺がしていたように、雑用などの裏方に徹する事にしたらしい。
後ろにいたディミトラーシャに視線を向けると、彼女は浅い溜め息を吐き、困ったように微笑んだ。
「……コレットの引退は惜しいでありんすが、本人の希望なら仕方ないでありんす。裏方の人員が欲しかったのも事実でありんすしね」
「そうなのか……でも、急になんで?」
訊いてみると、コレットは怪しげな笑みを浮かべていきなり抱き付いてきた。
牧場の仕事で草だらけの俺に構わず両腕を背に回してくる。必然、Hカップおっぱいが大密着。
「それ、オリくんが訊いちゃう?」
タモモン、と潰れる彼女のおっぱいは今日も豊満で柔らかい。柔らかすぎると言って良い。
しかも俺は、コレットの生おっぱいを知っている。
知る前と知ってしまった後では、当然感じ方も変わる。
慣れた? まさか。むしろ、コレットのおっぱいをメチャクチャにした時を思い出して興奮した。
「身体も心もオリくんが忘れられないの……あんな風にされたら、他の男で妥協なんて無理よ。ねえ、また私とさ……」
おっぱいの温かさ、肌触り、色艶、香り、柔らかさ、舌触り、味などの記憶が雪崩込み、下腹部がズキンと意思を持つ。
俺の胸板で潰れているおっぱいを、もう百度は堪能したい。じっくり鑑賞して、隅々までむしゃぶりつきたかった。
「……ぬしら、妙に仲が良いでありんすねぇ……わっちは無視したクセに……」
ディミトラーシャの恨めしそうな声が無ければ、押し倒してブラジャーとか引きちぎって――え、コレットまたノーブラ? じゃあシャツを破いておっぱいに吸い付いていたかもしれない。
あの夜以降、ふとすれば性欲が逆流しそうでいかん。
「と、ところで皆さんは何しに此処へ?」
なんとかコレットを引き剥がし、ディミトラーシャに問うと彼女は待ってましたと微笑みを浮かべた。
「知れたこと。とうに準備は出来ていんすから」
その時、タイミングを見計らったのか、サンリッシュ牧場の緩やかな丘の下に続々と高級馬車が現れる。
いったい何処に隠れていたのか、それは述べ20台にも及んだ。
ポカンと見ていると、馬車の中からゾロゾロと見知った女性達……『クレセント・アルテミス』の冒険嬢が出てきて、ディミトラーシャの側に整列した。
唖然としたまま視線をギルドマスターに戻すと、彼女は艶かしい動きでロングコートを脱ぎ捨てる。
肌色係数が跳ね上がった。コートの下は、水着であっても公共ビーチではお断りされそうなレベルのドレスだった。
「約束通り、ぬしの奴隷になるべく参上しんした。何なりとお申し付けを、ギルドマスター」
何台もの高級馬車が連なり押し寄せる光景は、普段のサンリッシュ牧場を知っているだけに違和感が凄かった。
いや、それより凄かったのは冒険嬢達の格好だった。
誰もが渾身の一張羅(俺も何度か見せてもらった)を身に纏い、普段の接客の中でも稀な気合いの入った装いをしていた。
例の『四天乳』も集結し、艶やかな姿で俺へ視線を送ってくる。
特にディミトラーシャなど、おっぱいがほとんど溢れている。
アニメや漫画で見るような『それどうやって着てるの?』と疑いたくなるような過激なドレスは、最後の夜に彼女が着ていた例のブラックドレスだ。
相変わらず凄いセクシーさ。つーか結び目にデコピンするだけで脱げそう。乳輪とか、ちょっと見えてるじゃん。
唖然とした俺と、蠱惑的な笑みを浮かべる冒険嬢達。そして、ミルシェ、リリミカ、レスティア、メリーベル、ハナの形相が凄まじかったのを今でも覚えている。
約束などしていない、というのも最早手遅れ。
王国最高峰のおっぱい大遠征に、ムネヒト城は陥落寸前だった。
「ムネヒトさん、どういうことですかぁ? 釣り上げた女の子は自宅で飼育なんですかぁ?」
「は? つーか、は? バスト平均サイズ上げて何? 戦争でもしようっての? いきなり私達とアンタらの溝はその谷間より深くなったぞコラ」
「ば、バンズは見てはいけません! あっちを向いていて下さい!」
「こ、こいつらまだ懲りていなかったのか……! ムネヒト! とっとと追い返せ!」
しかも敵は目の前だけじゃなく、後ろからとんでも無い殺気を飛ばしてくるミルシェ達もまた驚異だった。
前門のおっぱい。後門のおっぱいである。なるほど、此処が俺の死地みたい。
「さぁさぁ、誰から召し上がるでありんす? 一人ずつでも三人ずつでも、望みのままに仰ってくんなんし。本日より、わっちらの髪の一本、血の一滴、そして、
だというのに、ギルドマスターはどこ吹く風だ。
両手で持ち上げられたディミトラーシャのバストは、まるで軟体の大真珠。硬質かと思える白肌の質感と、矛盾する柔らかさ。より大きく露出する甘そうな桃色の乳輪。
先端がドレスに引っ掛かり、乳房の完全な露出を防いでいる。起立率が70%を越えていなければ、スルリと脱げていたに違いない。
冒険嬢の中にいるコレットだけは申し訳なさそうに微笑んでいるが「私だよね? 私のおっぱいが一番好きだよね? また、おかえりって迎えてくれるよね?」って目で言っている。
涎が出るが、冷や汗も脂汗も出る。興奮と恐怖で失神しそう。
今度こそ逃げ場など無かった。だって
――そうだ!
だが俺の乳色脳細胞は最適解を導きだした。適度(?)な緊張が、思考を活性化させる良い例だった。
「分かった。だったら全員だ。全員で
冒険嬢達からは黄色い歓声が、後ろからは悲鳴が聞こえた。
――数十分後には、それが逆になったが。
・
・
そういった経緯で、彼女達は昨日からCD地区で労働に勤しんでいた。俺の奴隷などと宣ったのだから、健全な労働力として活用させて貰っているワケだ。
それに、ケジメは重要だ。
俺には騙された自覚も怒りもないが、人を騙した事については見過ごせない。私憤ではなく公憤ってヤツ。
役割を分担し、雑草を抜き、土を耕して牧草の種を蒔き、また柵を新調させる。
流石に80人近いと作業もぐんぐん進み、見ていて気持ちが良い。人海戦術バンザイだ。
「ぐぅぅ、このわっちが……まさか草むしりななんて……! 駆け出し時代でも経験ないでありんす……!」
イモっぽいジャージを身に纏い、華やかだった冒険嬢達は雑草を抜く。なんとなく、校外学習で行った農家の仕事体験を思い出した。
使われていない牧草地もいつかは――と、バンズさんとも語らっていたので、冒険嬢達の労働力は渡りに船だ。
「ふん、荒地に開墾のメスを入れるべく、わっちらのような雌を利用するというワケでありんすか。洒落が効いているでありんすねぇ!」
「いや、別にそういったつもりはなかったけど……」
もしかしたらディミトラーシャは、世界一農作業の似合わない人種なのでは無かろうか。
長い水色の髪は括られ麦わら帽子の中。紫外線や草負けを防ぐための長袖長パンツ。首にはタオルが巻かれている。
ここまで似合わないのも逆に愉快だ。
「その生暖かい目はなんでありんすかオリオン、文句があるならベッドで聞いてやるでありんすよ?」
「疲れてるな。誘惑がだいぶ雑になってきたぞ?」
「ぐ、オリオンのクセに……いッ――! もう、雑草までわっちを愚弄するでありんすか!」
硬い草を乱暴に掴んでしまったのだろう、見れば指に浅くない傷が出来ている。
俺は血潮を拭おうとしたディミトラーシャの手を掴み、反対の手で肩に手を置く。この程度なら、おっぱいに触るまでもない。
図らずも向き合う形になり、ディミトラーシャが頬を赤くするが、俺の用は一瞬で終わる。
「――よし治った。中には悪い草もあるから気を付けて。少しでも怪我したら直ぐに呼べよ?」
こき使うとはいっても怪我は捨てておけない。
皆がB地区から帰るときは、前以上に綺麗になって帰って貰いたい物だ。立つ鳥乳を濁さず……とはちょっと違うけど。
ディミトラーシャは「……あんな単純な飴と鞭に、このわっちが……!」などと顔を赤くしたまま俯いていた。もしや熱中症の前触れか?
「ん……?」
ふと顔色が良くない者をもう一人見つけた。おっとり巨乳女教師系お姉さん、コレットだ。
「コレット。ここは良いから、ちょっと休んで来たらどうだ?」
最も真面目に働いている彼女だったが、その表情は何処と無く暗い。
少し草を抜いては立ち上がり、または座り込み、溜め息を繰り返していた。
「……うん、ありがと。ちょっとお腹と頭が痛くて……お手洗い借りてもいい?」
「無理すんなよ。冷蔵庫の中に牛乳や麦茶があるから、それでも飲んでゆっくりしてるといい」
俺が頷くと、コレットはお腹を押さえたままビーチク・ビギンズへ歩いていった。
顔も赤かったし、いわゆるお腹から来る風邪かもしれない。
「ひーきひーき! あーしらも休ませろー!」
見ていたシンシアが抗議の声を上げると、回りの冒険嬢達もそうだ、そうだー! と続く。
コレットの姿が見えなくなってから喚くのには好感を持てるが、本当に疲れてるのかな?
「マジで具合が悪いなら休ませてやる。何処かが悪いのか?」
「性欲! メッチャ溜まってんだし! いやもうマジでギンギンムラムラで草むしりドコロじゃねーの! ちゃんオリも一緒にサボらね? 雑草じゃなくて、違うものヌいてやるし?」
にんまり笑って、イモジャーシンシアは手をスコスコと高速パントマイムする。
「そんなに抜きたいなら、今日はE地区の雑草まで行くか!」
「オニ! 悪魔! 童貞!」
「バカ! アホ! 童貞!」
「外道! 非道! 童貞!」
「三分の一ずつ不都合な真実を混ぜるんじゃない!」
怒りで我が身が温暖化だぜ!
「ムネくん、ムネくん、冒険嬢達とジャレているところ申し訳ありませんが、彼女達は良いのですか?」
レスティアに言われて気付く。先ほどまでソコに居たアメリアとジェシナ、そしてミルシェ、リリミカ、メリーベルの姿が見えない。
「あっ、あんな所に……」
視線を巡らせると、彼女達は木陰の下に集まって何事かを話し込んでいた。
・
ムネヒトが冒険嬢達とジャレているのを幸いに、アメリアは先輩住人達と顔を突き合わせていた。
いずれも、かつての自分なら気圧されるか嫉妬するかしただろう程の美少女達だ。
一人目。
栗毛に琥珀色の目をしている彼女が、ミルシェという少女だろう。あどけない顔立ちに、凶悪過ぎるバスト。乳房のサイズはコレットもジェシナすら凌駕している。
間違いなく、アメリアの人生の中で最大のおっぱいだ。
愛らしい容貌をしているが、何処か底知れなさを感じる。
二人目。
亜麻色の髪に青い瞳。なるほど、彼女が次期クノリ家当主リリミカ・フォン・クノリに違いない。小柄な身体つきだが、貧弱とはとても思えない。一秒後には宙に舞い上がりそうな活気を秘めている。
三人目。
彼女の顔はとうに知っている。第二騎士団副団長、メリーベル・ファイエルグレイだ。
赤い髪に赤い瞳、凛々しくつり上がった眉と目尻は、そのまま彼女の意思の強さを示している。まさに『炎鉄のシンデレラ』に相応しい雰囲気だ。
よくもまあこんなに人脈や美少女を集めたものだと感心する。
「アメリア・ジェラフテイル、ムネヒトの愛人よ。今日からお世話になるわ」
タイプの違う美少女達が自分の先輩住民であり、一人の男を追うライバルだ。
そして、きっとこの中にムネヒトの想い人がいる。
愛人でもアメリアは良いと思っている。しかし、それは決して一番の座を諦めたというワケでは無い。
手に入らないと思っていた
細々した自己紹介は後で良い。今はただ傲慢に、自分という女をアメリアは見せつけたかった。
「……貴女達の中で、誰がムネヒトが一番かは知らないし興味も無いわ。けれど、これだけは覚えていて頂戴」
自分が世界一の美女なのだというつもりで、アメリアは不敵に笑った。自分はまだ産まれたばかりの未熟者。だから、手加減なんてしないし出来ない。
最も新しい挑戦者として胸を張るだけだ。
「ハイヤ・ムネヒトを最も愛している女はこの私だから。そのあたり宜しく」
恋する乙女は無敵らしいから、これくらいの台詞は言っても良いでしょ?
・
「あはははははははははははははははははははははは。アメリアさんって、面白い方なんですねー」
「ホントホント。そんな事普通は言えないわよー。ムネっちも罪作りよねー。なははははははははははははは」
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、確かに中々ユーモアがある。ジョエルさんよりギャグのセンスがあるぞ?」
「あら、ありがと。仲良くできそうで何よりだわ。諦めたくなったらいつでも言って頂戴。将来有望な若い男性を探してあげるから。ね、ジェシナ」
「はい、お任せください。【ジェラフテイル商会】の人脈を駆使してでも見繕って御覧にいれます。皆様なら、きっと選り取りみどりでしょう。どうか、気兼ねなくお申し付け下さいませ。それこそ――今からでも――」
皆の笑い声がここまで聞こえてくる。
……良かった、仲良くしてるみたいだ。最近、修羅場続きだったから気になっていたが、なんの心配も要らないっぽい。
「いやはや、乙女達が集まって楽しげに笑いあっているってだけで癒されるなぁ。眼福、眼福」
「…………ムネくん。もしかして、頭と目がダメなんですか?」
ダメとは何だよ。
「ところで良いんですか? あのままでは、なし崩し的に住人が二人ほど増えますが」
ハッ! そうだった!
「アメリア、ジェシナ、盛り上がって無いで、まずは俺の話を――」
「オリくーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
「――聴いて……あ? お、わぁっぶェ!?」
走り寄ろうとした俺より早く、ビーチク・ビギンズより飛び出して来たコレットが勢いよく抱き付いてきた。
柔らかなおっぱいとはいえ、かなりの速度で
コレットが絶叫しながら走ってきたので、仲良く談話に耽っていたミルシェ達も冒険嬢達も何事かとこちらを向く。
「ぇほっ、ぇほっ、ど、どうしたコレット……風邪っぽいワリには随分元気……」
「オリくん、私……私……! わ、わだ、じぃ……ぅ、ぇぇぇん……!」
「えぇぇぇ!?」
元気どころか泣いてるじゃん!? そんなに具合が悪かったのか!? 『乳治癒』する!?
肩を揺すってみても、彼女はきつく抱き付いたまま俺を離そうとしない。ひっくひっくと嗚咽に震わせて、涙を俺のシャツに染み込ませるだけだった。
「オリくん――!」
俺も他の皆も当惑していると、コレットは涙に塗れた――しかし、花のように咲き誇る笑顔を勢いよく向けてきた。
あっ、何か嫌な予感がする。
コレット絶対変なコト言うわ。最近サボり気味だった俺の童貞の勘が囁くわ。
「な、なぁ、ここは人の目があるし、もっと落ち着いた場所で茶でも飲みながら――」
だが全ては手遅れだったらしい。
流行り風に言うなら『俺の童貞の勘が危険だと囁くけど、もう遅い。コレットちゃんは止まりません』だね。うん。
「私、オリくんの赤ちゃん、いっぱい産むね!!」
産まれたのは、新たな誤解でした――。
・
視界の隅で、コレットとアメリアは抱き合って喜びあっているのが見えた。
コレットは最初からだが、何故かアメリアも大粒の涙を流して、我が事のように歓喜している。
何かとても良い事があったらしい。嬉し涙を流せる出来事が彼女達に訪れたことを俺も嬉しく思う。
誰だって涙を流して流す。泣いたことのない人など、きっと居ないだろう。
ただその涙のうち、何%かを嬉し涙に変えられるような人生を歩みたいし、歩ませたい。
だから、そんな良いっぽい事を考えている神様を助けて欲しい。コレットにもアメリアにも、そろそろ事情を説明して貰いたい。
俺の嬉し涙以外の割合が増えちゃいそうだから、なるはやでお願いします。
・
・
ディミトラーシャは預言者では無い。
しかし夜の百戦錬磨である彼女は、自分に抱かれた男がどのような将来に至るか、ある程度の予想を立てる事ができた。
セックスを覚えてからは、毎晩のように男を抱いた。
冒険者、貴族、大商会幹部、若い老いに関わらず、様々な男を食い散らかした。時には女も抱いた。
やがて自分が世の男にとって垂涎の魅力を持つと知り、彼女と過ごす時間は、砂金で造られた砂時計のごとき価値を持つようになる。
天井知らずのディミトラーシャではあるが、彼女にしても1日24時間は変わらない。
必然、彼女を求める男達は渋滞しパンクする。やがてディミトラーシャは、より良い男を選ぶ必要に迫られた。
故に、彼女の男を見る目は日に日に研ぎ澄まされていった。
いつからか、王都では『ディミトラーシャと夜を過ごした者は大成する』という噂が流れた。
それは真ではあるが、間違いとも言える。
ディミトラーシャは磨き抜かれた審美眼により、大成する男、超一流に至る男にのみ身体を晒したからだ。
今は貧しくとも、数年後には大人物になるであろう若者に自慢の乳房を吸わせ、一晩の夢と男としての自信を与えた。
また逆に、金も権力もあるが酷い愚か者や、女を穴としか見ていない人格破綻者は全て無視した。
左の乳房を失う直前の彼女は、そうやって男を選んだ。また、そんな男に選ばれる女で在りたいと自分磨きを怠らなかった。
そんな彼女をしても、ムネヒトがどんな人物かを図る事は出来ない。
王者の器? 否。
英雄の器? 否。
勇者の器? 否。
どこからどう見ても普通の青年、ただのおっぱい王国民だ。
なのに何故か、何かを成し遂げるような気がする。やらかすとも言うが。
ディミトラーシャは預言者では無い。それでも確信する。
――自分を含め、この場にいるほとんどの女がムネヒトの子を産む。
揺るぎない自信は、確定した未来を引き寄せる。
それは10年後かも知れないし、今夜
ディミトラーシャは微笑み、その確信を自慢のバストの奥に隠した。
今は今すべき事をしよう。
自分の番を1日でも早く迎えられるような、努力ってヤツを。たまには、追う側の女になってみるのも良い。
誰のどんな言動で、一秒先が変化するか知れないのだし。
何故なら――。
「くふふふっ! なぁんだ、コレットと既にそういう関係だったんでありんすか。なら、わっちを夜伽に招いても良いでありをしょう?」
「あ、ちょっ、脱ぐな! ぬぉー!? ジャージの下はノーブラ汗透けTシャツだとー!?」
「コレットばっかズッチーし! やっぱ雑草なんか抜いてる場合じゃねーべ!」
「ば、コラ! ベルト離せコラ! あたたたた!? 意外に力強いなお前!」
「私も居るよ! このストローでオリオンくんのアレ、イジめてあげるんだから!」
「君はストローの君(Gカップ)! そ、そのストローで何を……あー! ら、らめぇぇぇ! 『不壊乳膜』がまたバグるぅぅ!」
「ムネヒトさんの馬鹿! 今日からまた3日はおっぱい抜きですからね!」
「ひぃっ、そんなぁ……! 誤解なんだぁ、これには理由がぁ……!」
「てめぇムネっち! 人の気も知らないで何おっぱい食い散らかしてんのよ! ちょっと私にも分けなさいよ!」
「別に食い散らかしてるワケじゃ――」
「ムネヒトそこに直れッ! スピキュールの錆にしてやる!」
「『錆付き男』は勘弁してぇ!」
「貴女達いい加減にしなさい! ムネヒト様とミルシェ様を煩わせるのなら、このハナが承知致しません! あぁ、なんて不憫なムネヒト様……こんなお乳平坦族などは放っておき、ハナのお乳をしゃぶって喉と心を癒して下さいませ……」
「「「誰だお前!?」」」
「ハナ、全部出てる! 人間の形態も声もおっぱいも全部出てるから! せめてどれか1つは隠せー!」
未来ってヤツは、きっとこの状況よりも混沌と自由に満ちているのだから。
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