エピローグ① もう遅い
※飽きずにおっぱいの話をしたいです。
ミルシェと『ポミケ』運営の主張は平行線のままだった。
自分は正式な審査を受けたわけではなく、ましてやレシピの考案者ですらない事を理由に、ミルシェは優勝を辞退する旨を運営側に伝えた。
首を縦に振らなかったのは『ポミケ』運営の重鎮、例のベルバリオさんだった。
あの場で人々の為に行動し、また比類ない美味なポーションで力付けたのは紛れもない事実。誰かに対する慈しみと思いやりの心こそが、ポーションの原点である。
またミルシェの行動は、たとえ悪辣な襲撃を受けても『ポミケ』そのものは覆せないという象徴になった。その働きに報いないのでは、我々は商人足る資格がないとまで言った。
結局ミルシェは『美味しいポーション部門』の初代女王として、非公式ながら君臨する事になる。
ただし、優勝賞品は頑なに辞退した。
今回の襲撃で負傷者や死者が出た。ミルシェは彼らやその遺族の為に、また手伝ってくれた冒険者達の為に賞金などを使って欲しいと願い出たのだ。
その言葉にも深く感じ入ったらしいベルバリオは、必ずそうするとミルシェと約束する。
後ろで一匹狼の皆さんが男泣きしていたが、マジで彼らは誰だったんだ。
ミルシェがそういうのなら、俺も金を受け取る気にもなれない。
報酬として提示された金貨三万枚を、ミルシェと同様に今後に役立てて欲しいと伝えた。
会長さんはともかく、アメリアは不服顔だったが「お前の笑顔が最高の報酬なんだぜ?」と言ったら、顔を真っ赤にしてそれ以上なにも言ってこなかった。
冒険嬢達と秘書のジェシナさんは「うわぁ……」って顔をし、ミルシェ、メリーベルなどは凄い目で俺を睨んできた。
俺の味方は「うそ……格好いい……」と「モゥモーゥ!」言ってくれたリリミカとハナだけだった。
それで話が終わるかと思えばそうでもなかった。
ベルバリオさんは俺達全員をパーティへと招待したいと言った。
信賞必罰は世の真理。このまま君たちを手ぶらで帰したのでは、商会の沽券にも関わる。私を助けると思って、せめてそれだけは聞き入れて欲しいと懇願してきたのだ。
流石に今度はミルシェも断りかねたらしく、そこまで言うならと俺達はホテルにやって来たのだが、これが超ラグジュアリーで気圧されてしまった。ついに城に来たのかと思った。
其処は都内(王都の内部って事で都内。東京都とかじゃない)に【グランド・ポワトリア】という王国最高峰の宿屋だ。
思えばアメリアに出会った夜は雨風だけは凌げる安宿に泊まり、コレットと合流してからは普通の宿屋。そして今は、王都でも五本の指に入るという宿――というかほとんどホテル。
ホテルも松竹梅とパワーアップしてしまった。まあ松竹梅はめでたい物の象徴で、本来はランクなど無いというらしいけど。
清掃されつくしたエントランスを見て、無意識に靴を脱ごうとしてしまった事は、暫く笑いの種となるだろう。
ディミトラーシャ辺りは慣れたもので、ホテルマンのエスコートを優雅に受け取りチップまで渡していたが、メリーベルなどは借りてきた猫のようになっていた。
最初は彼女も、
「騎士としての勤めを果しだだけだから、礼を受け取る訳にはいかない」
――と固辞していたが、【ジェラフテイル商会】会長と現代表の護衛に第二騎士団をと、遂に押し切られてしまった。
「入場料は幾らだろうか……?」
と、不安そうに尋ねて来た時は涙がちょちょぎれそうだった。
俺達は一品一品が早口言葉みたいなディナーをご馳走になったり、来月に延期される『ポミケ』の特別審査員に勧誘されたり、楽しく過ごせたと思う。
(そういえばまだ、ミルシェとゆっくり話をしてなかったな……後で部屋に行ってみよう)
豪華なディナーに舌鼓を打ちつつ、そんなことを思った。
・右
「こんばんわムネヒト! 夜這いに来たわ!」
「やっほーオリくん! 夜這いのサポートに来たよ!」
「夜分遅くに失礼します旦那様。夜這いの記録に参りました」
風呂の後、俺はあてがわれた部屋に入ったのだが、どうにも落ち着かない。最上階をまるまる占領するスィートな部屋とか、身に余り過ぎる。世の大富豪は部屋の何処に体を置くのだろう。
じっとしていられず、ぼちぼちミルシェ達の部屋にでも行こうかと腰を上げたとき、いきなり来客が現れた。
アメリア、コレット、ジェシナさんの三人だ。
このホテルのアメニティなのだろう、皆同じようなデザインのパジャマを着ていた。
派手ではないが、一目で上質な生地で作られたと分かる高級品だ。こういうホテルではアメニティも一流なのだと感心する。
「ちゃんとお風呂は入ったかしら? ……入ったみたいね。私達も入ったから大丈夫よ」
薄黄色の寝巻きに身を包んだアメリアは、半分湿った髪の俺を見て、薄く微笑んだ。
「スィートルームにはプールみたいに大きなお風呂付いてるんでしょ? 後で皆で入らない?」
薄オレンジ色のパジャマを着たコレットが、部屋を見渡しながら言う。
「賛成です。実は
薄水色のジェシナさんは部屋にある大きなベッドに歩みより、弾力を確かめていた。
「せっかくだし乾杯しましょうか? ジェシナ、グラスを用意して頂戴」
「かしこまりました。アメリア様には度数の低いカクテルをご用意いたいますが、お二人は如何なさいますか?」
「んー……私もカクテルが良いかも。あんまり酔いすぎると、記憶があやふやになるもの。オリくんも余り強いのはオススメしないわ。深酒は
「いやいやいやいや」
あれよあれよと話が進んでいく。
アメリアとコレットは長いソファに座り、ジェシナさんはテーブルの上に四人分のグラスをテキパキと並べていく。
「勝手に話を進めるな。お酒が飲みたいのなら、バーがあるフロアに行けば良いだろ。そもそも、どうやって入ってきたんだ」
非常に贅沢な話だが、一人で部屋を使っているのは俺だけだ。
俺やベルバリオさんを除くと、招かれた客のほとんどが女性だ。当然、異性が同室では問題がある。
ディミトラーシャやシンシアなどの冒険嬢が俺との同室を求めてきたが、頷くわけもない。
自惚れかもしれないが、夜中にコッソリやって来られでもしたら大変だ。俺の自制心は脆弱なのだ。
だというのに彼女達は、まるで手品のように現れた。いくら部屋が広いといっても、ノックやドアの開く気配に気づかない程に俺は鈍かったのだろうか。
「急に来てごめんなさい。『転移符』を使ったのよ」
「おい」
「もちろん、防犯上の理由から部屋から部屋への移動は不可能だけれど、ホテルには『マスター転移符』というものがあってね? お父様から支配人にお願いして貰って借りてきたのよ」
それで良いのかホテル。
つーか、ベルバリオさんもベルバリオさんだ。娘が若い男の部屋に行きたいと言って、マスターキー的なものを用意するかね普通。
「で、なんだっけ。酒でも飲みながら今日のお疲れ様会でもするって?」
「ムネヒト、人の話はちゃんと聞いておくものよ。夜這いと言ったじゃない」
「私も夜這い兼アメリアちゃんのお手伝い。素面じゃ恥ずかしいから、お酒の勢いでも借りて、わぁっ! って感じにしようかと」
「話した言葉を文字に起こす魔道具も用意いたしました。準備は万全です」
「皆さん、揃いも揃って夜這いを何か勘違いしてないか?」
酒などあまり飲んでないのに頭が痛くなってきた。
「……あまり若い男をからかうんじゃない。洒落が通じる相手ならまだしも、世には酷い――」
どん、と腹部あたりに衝撃を受けたと思った刹那には、俺はベッドに押し倒されていた。
「からかう気なんて最初から無いのだけれど」
天井方面から純金色の髪を足らし、アメリアは吐息を被せるように語りかけてきた。
彼女も酒など飲んでいないだろうに、熱っぽく唇を湿らせていた。魔力灯の影になっているというのに、その唇が酷く艶やかに見える。
「オリくん……悪いけど、もう遅いの」
コレットがベッドを揺らしながら近づいてきた。四つん這いのまま寄ってくるため、豊満なおっぱいがユサユサと揺れる。
「も、もう、おそいって、何が? 流行りの読み物?」
四つん這いおっぱいに目を奪われないように自己を戒め、何とか二人を諌めようと冷静な口調で尋ねたつもりだったが、アメリアもコレットも退こうとしない。
「『俺には他に好きな人が居るんだ』とか『俺よりもっと良い男を探してくれ』とか、そんな言葉でバイバイ出来る段階はとうに過ぎたの」
二人は座り直し、おもむろにパジャマのボタンに手をやった。
上から下に指が進むにつれ、露になっていく二人の雪肌。風呂上がりだからだろうか、既に薄くピンク色に染まり始めていた。
「ちょ、ちょっとちょっと!?」
マジで? 雑では? いやいやエロ本の読みすぎで、エロ展開を幻視するようになっちまったか?
知り合ってから半月にも満たない娘達がベッドで脱ぎ始めるとか、童貞力の妄想だとしても、もうちょっと段取りがあるはず。
「秘書! おい、秘書! 主人とその友人がご乱心だぞ! なんとかしてくれ!」
「はぁ……はぁ……恥ずかしそうにストリップするアメリア様が可愛すぎて生きてて良かった」
コイツが一番のご乱心だったわ。
「ムネヒト。貴方、私が用意した報酬も受け取らなかったじゃない。そう何度も拒まれると私も困るの。言いたくはないけれど、メンツというものがあるの」
「まさか礼やメンツの為にそんなコトする気か!? だったら――」
「でもそれは言い訳」
パサリと、アメリアはシャツを脱ぎ捨てた。俺に馬乗りのままだったので、彼女の脱いだパジャマは俺の膝あたりに掛かった。まだほんのり暖かい。
「本当はこのまま【ジェラフテイル商会】に連れていきたいのだけれど、それは難しいってコトくらい分かるわ」
「私もオリくんと一緒に『クレセント・アルテミス』に帰りたかったけど、来てくれないでしょ?」
アメリアは恥ずかしそうに、コレットは妖しく微笑みながら肉体をくねらせた。純金色の髪を指で弄る仕草とオレンジ色の髪を耳にかける仕草も、二人の内面が違うことの証明だっただろう。
ピンク色のCカップブラと、黒のHカップブラが二人の最後の防御。
口から溢れてしまうかと思うくらいに心臓がうるさい。
「貴方が誰を好きでも構わないわ。けれど、こんな気持ちのま別れるなんて、絶対にイヤ」
肉体というより精神的な要因で硬直していた俺へ、アメリアは再び天井方向から覆い被さった。
「恥を掻かせないで。私達は今夜、貴方に抱かれに来たの」
・左
「……」
「……」
目の前のミルシェから発せられるプレッシャーに、俺は押し潰されそうだった。
正直、チビりそう。
ミルシェはベッドの上に腰掛け、俺は床に正座している。部屋には俺達以外に誰も居ない。
食後、俺はミルシェの部屋を訪れていた。二週間ぶりに再会したが、まだゆっくり語り合っても居なかったし、互いの経緯についても話すべきだと思ったからだ。
『どういうワケでこういう事になったのか、一から十まで全部話してくださいね?』
もちろん、隠す気も誤魔化す気も起こらなかった。
騎士団の先輩に誘われエッチな店に遊びにいったこと、酔って冒険嬢達の乳首をこねくり回してきたこと、アメリア、コレットと出会って、おっぱい電話して事も、何もかも告白した。
ミルシェも何故『ポミケ』に参加する事になったかを話してくれた。
リリミカが『クレセント・アルテミス』にやって来たあと、ミルシェに俺が借金を抱えていることを話したらしい。それを聞いて、ミルシェも金を稼ぐために参加を決めたそうだ。
また『ポミケ』には俺も居るだろうと考えたという。
全て話し終えるまで彼女は何も言わずジっと俺を見てきた。
「――ムネヒトさん」
「は、はい!」
ディナーが消化不良を起こしそうだと俯いていると、不意に声をかけられた。
慌てて顔を上げた俺が見たものは、大きく手を振りかぶっているミルシェの姿だ。平手打ちが飛んで来ると予期し、反射的に目を瞑ってしまう。
「……あ?」
頬に痛みは到来しなかった。代わりに、もっと強烈な衝撃が俺の顔全体を覆う。
振りかぶったように見えたミルシェの腕は俺の後首に、逆の腕は背に巻かれていた。必然、俺の頭はミルシェの上半身に搭載された豊満な膨らみに埋没する。
言うまでもなく、おっぱいでござる。
ビンタか拳かを予期していた俺にとっては完全な不意打ちだった。ミルシェも風呂上りなのだろう、熱を帯びた石鹸の香りがシャツの隙間から漂ってきた。
金木犀のような香りがソレに混ざり、俺は全ての緊張を忘れて深い陶酔感に支配された。
思わず”ただいま”と言いたくなるほどの抗いがたい安心感。ミルシェにこうされると自然にそう感じてしまうほど、俺の精神と脳は刷り込まれてしまったらしい。
「みるしぇ?」
まどろみの淵でミルシェを呼ぶと、更に力を込めて俺を抱き締めてきた。
「知ってますよ」
予想外の行動に予想外の言葉。ミルシェの囁きには、労わりと慈しみが込められていた。
「ムネヒトさんは困ってる女の子達の為、傷ついた女の子達の為に頑張ったんですよね?」
後ろの頭を撫でられる。前から後ろから、彼女の体温が伝わってきた。
あまりに優しいミルシェの存在に、骨の髄から全身が震えていくような心地がした。
「け、けど俺は――ミルシェを裏切って、ほ、他の女の子と……女の子の……」
「前にも言いませんでしたか?」
自分の胸で俺の口を塞ぐように、彼女は腕に力を込めた。
「全部、許してあげます。貴方の良いところ、悪いところ、ぜんぶぜんぶ、私は全部受け入れます。二週間、お疲れさまでしたムネヒトさん。貴方は――素敵な
「――」
……ルーカスがどんな女神を信奉していたのかは知らないし、特に興味もない。いつか会うかもしれないと警戒はしていても、個人的に女神とやらに用は無い。
その女神とやらが、ミルシェの大きさに及ぶとは到底思えなかった。
フワフワのおっぱいに抱かれ、頭を撫でられながら耳元で労いの言葉を与えられ続ける。
息をする度に、ミルシェの甘い香りが脳を溶かしていくようだった。
男を駄目にする最高の報酬だった。金貨何万枚積まれたとしても得られるものではないし、また売ってくれと言われても絶対に断るだろう。
「きゃっ……」
俺もミルシェの腰に腕を回し自分の方へ抱き寄せ、そのまましばらく彼女の温かさへ溺れる事にした。
鼻を船頭にし、深い深いおっぱいの谷間へ顔を埋めた。
一瞬小さな悲鳴を上げたミルシェだったが、仕方ないですね……と囁き、俺の頭を抱き寄せた。
全身を包む彼女の存在は、溜まっていた疲れや強張りなど根こそぎ持っていく。
今日はこのまま眠ってしまいたいと思うほど、ミルシェが愛しかった。
「――まあ、それはそれとして」
「……え?」
抱き心地、または抱かれ心地の良いポジションを探していると、ミルシェは不意に俺を離して、ベッドの上にモソモソと後ずさりしていく。
抱擁から捨てられた時の寂しさは、ちょっと筆舌にしがたい。
「ムネヒトさん? いったい何人の女の子のおっぱいを触ってきたんですか?」
「!?」
女神のような顔だったミルシェが魔王のように見えてきた。魔王ルーカスが逆に恋しくなるほどの強烈な怒気。
「あ、そ、その……! で、でも、ミルシェいま許してくれるって……」
「はい、言いました。必要なことだったんですよね? でも、理解と感情とは別です。ムネヒトさん、胸を触っているとき一切エッチな気分にならなかったと言えますか?」
一切言えなかった。見るも嬉しい触るも嬉しいおっぱいを間近に感じて、不動を守れるほど俺の心は強くなかった。
ミルシェの眉が急激に跳ね上がり、琥珀色の瞳に怒気が燃えた。
「正直にいうと面白くないんです! 私を放っておいて他の女の子とイチャイチャイチャイチャ! 何ですか愛人に奴隷って!? ムネヒトさんってば、なにか起こる度に女の子引っ掻けてこないと気が済まないんですか!」
「ひぃぃぃぃ! ご、ごめんなさい! 俺は決してそんなつもりじゃあ……!」
「分かってます! けど、分かってても面白くありません! バカ! ムネヒトさんのバカ!」
まったくもって否定のしようが無い。馬鹿といわれれば馬鹿だし、アホといわれればアホな俺。過去にも似たような事をしておきながら同じような事を繰り返す低能。そうです、俺がゴミ男です。
「なので! 罰を与えたいと思います!」
ミルシェは憤然としたまま、俺にそう宣言した。
ぎくりと身を硬くするが、正直ホっとした心地だった。ベルバリオさんも言ったように、信賞必罰は世の常。間違いを犯した俺に何の罰も無いのは変だ。
しかもその罰をミルシェが与えてくれるというのだから、此方としてはむしろ有り難い。どんな罰でも甘んじて受ける覚悟だ。
頭を丸めろと言われればツルツルに剃髪するし、ブロッコリーを食べろというのなら、サンリッシュ家のブロッコリーは全て俺が食おう。
「ムネヒトさん」
「はい……」
「今日はもう、私のおっぱいに触っては駄目です」
……アレ? もしかしてミルシェ、俺に死ねって言わなかった?
「触るのも勿論、直接見るのも駄目ですから」
遠まわしに息するなって言われてるわコレ。
「それだけは何卒ご勘弁を! この二週間、俺はミルシェが恋しくて恋しくて仕方なかったんだ! この通りです! 俺はミルシェが必要なんです!」
「ッ! そ、そんな風に言っても駄目ですから! 二週間の間、他のコとたくさんイチャイチャしてきた罰です! わがまま言うなら明日も駄目にしますよ!?」
「もしかして吸ったりするのも駄目!?」
「当たり前です! むしろ何で許されると思ったんですか!」
「頭の上に乗せて重さを確認するのも!?」
「往生際が悪すぎます!」
な、なんてこった……! ただでさえミルシェのおっぱいをお預けされていたのに、此処へ来て更に延長だと……!? しかしここでミルシェの機嫌を損ねるのはもっと良くない……!
「ぅぎぎぎ……分がりまじだ……」
苦渋の決断だった。これほど意志力を使ったのは、日本に居た頃を合わせても記憶に無い。
血の味が滲むほど奥歯を噛み締め、ミルシェの罰を受け入れる覚悟を決めた。悪いのは全て俺だ。
「……ん?」
顔を上げると、ミルシェはベッドの上に座ったまま俺の方を見ていた。
今はもう怒気は薄れ、迷うような、からかうような表情をしている。
「だから……ムネヒトさんは、今から見てるだけですからね……?」
「……ミルシェ? 何を――」
俺の言葉は途中で掠れて消えた。
ベッドの上に居るミルシェが、自分のおっぱいを持ち上げて見せたのだ。
「ん…………」
重そうな乳房を下から上に、ある程度まで行ったら手を離す。それだけで、Mカップという巨大なバストは風を起こしてしまいそうだ。
支配者が腕力から重力に戻ると、おっぱいはタパンと弾んで元の位置に戻った。余韻で小さく揺れるのも待たず、栗毛の少女は再び乳房を持ち上げた。
「ん、んん……ッ」
俺の視線があるにも関わらず、ミルシェはおっぱいを持ち上げたり、左右に揺らしたり、また指を沈ませたりした。
唐突に淫靡な独り遊びを見せられ、俺は喉を鳴らした。
下腹が轟と血潮を猛らせた。
あの柔らかそうなおっぱいを揉みたい。衣服を剥ぎ取って生乳を拝みたい。叱られるまで乳首を捏ね回したり、吸い付いていたい。
「……ダメですよ?」
無意識に立ち上がろうとしていた俺は、ミルシェの一言で身体の制御を取り戻した。
取り戻した後にあるのは凶悪な飢餓感。
一間ほどの空間が全てガラスになってしまったかのように、身も心もミルシェに近づけない。
俺の戸惑いを無視して、ミルシェは自分のおっぱいを弄び続ける。
「ぁ……は、ぁぁ……ふぅッ……」
熱を帯びていくミルシェの吐息を、何故かすぐ近くで感じる。なのに、彼女は遠い。
「だから、ダメ、ですよ?」
絶えず自分の乳肉をほぐしながら、楽しむように、からかうように、ミルシェはトロンとした目付きで囁く。
「今日のムネヒトさんは……私が、私のおっぱいを、
嘘だと言ってよ、ミルシェ。
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