第三六話 最悪の相性『レイvs回廻』

 六々堂ろくろくどう回廻かいねはレイ・ヴィスタンスに対して不敵な笑みを浮かべる。


「あっはは! 警戒してるね!」

「気味が悪すぎるぜ」

本条啓子ほんじょうけいこも、ちみも素体としては魅力的だぁ」

「ふっ……そんなにオレが魅力的か」

「あ、あれ? ちみ、ひょっとして案外、ずれてるのかね」

「オマエに言われたくない」

「あっははは」


 レイは回廻の言動が不快に感じ、さっさとこいつを片付けようと思い半身で構える。一方、回廻を向き合ったまま動かず余裕をかましていた。レイはまず、相手の出方を見る為に搦め手に出る。


「【雷線らいせん】」


 レイは人差し指から一筋の電撃を放って回廻の体の中心を狙う。


 バチッ!


 と回廻は微動だもせずに電撃を受ける。着ていた白衣のみぞおち辺りは電撃を浴びると焦げて破ける。


「ふむふむ、さすがだね」

「なんだと! なぜ平気でいられる!」


 レイは全くダメージを受けていない回廻を見て動揺する。


「これならどうだ 【五球電撃ごきゅうでんげき】!」


 右手の各指の先から直径一センチの球状の電撃が飛び出すと回廻の顔に向かった。しかし、相手は微動にしなかった。


「なぜ、避けない!」


 回廻の顔に五球の電撃が当たった瞬間、電気が迸る。


「⁉」


 レイは驚愕した。回廻は少し顔仰け反らせただけで顔には電気的傷害の痕跡が一切無かったのである。


『いやね、一番の良さそうな君が残ってくれて助かってるんだよ』


 という回廻の言葉が頭の中で木霊する。


 回廻はそんなレイの様子を見て愉快そうに口を開く。


「考えてるね~物凄く考えてるようだね~」


 回廻は焦げて破けている白衣を脱ぎ捨てる。白衣の下から現れたコンバッドシャツとコンバットパンツには所々、六角形の膨らみがあった。それを見てレイは服の下に電撃を凌ぐ仕掛けがあると判断するが直ぐに服から鋼鉄の左腕に目を移す。


「オマエの左腕、義手か」

「素直に言うと思ってるのかね」

「それもそうだな」

「ふふ、楽しみだね。日本で唯一の米国人能力者を手に入れる時がね」

「…………」

「君は何故、この国に居て、能力者になっているのか興味がある。米国はこの国みたいに

能力者が居るのかね?」

「オマエに教える事は何一つないぜ、オレが東京本部の牢獄にぶち込んでやる!」

「あっっは!」


 レイは全身の生体電流を増幅させ身体能力を向上させる。近接戦闘で回廻の服の下にあるかもしれない仕掛けを破壊しようと試みる。


「いくぜ! 【電撃連拳でんげきれんけん】」


 両拳を電撃に包ませると回廻に前まで走り、相手の顔、上半身に向かって両拳を連打するが、


「だららららららっ! なぜ! なぜだ!」


 回廻は難なくレイの繰り出した拳を右手のひらと鋼鉄の左手のひらで受け止め続ける。


「ほっ! ほっ! ほっ!」

「この速さに追いつけるはずがない」

「どうしたのかね」


 電撃が効かない上にレイの速さに回廻は追いついていた。レイは正体の掴めない相手の能力に精神的に追い詰めらる。回廻はレイの拳を受け止め続けている最中、レイの腕の振りが大きくなった瞬間を見逃さなかった。


「あっは!」

「ぐぁ!」


 回廻はレイの腕の振りが大きくなった瞬間、鋼鉄の左腕を額に向かって真っすぐ放った。レイは後方に倒れそうになるが、倒れる勢いを利用して後転し、立ち上がる。


(信じられん、ここまで歯が立たないのか。肉体強化で速くなっている? だが電撃が効かない理由が分からない……リスクは伴うがやるしかない! でなければ前に進まないぜ!)


 レイは上空に両手を上げて右拳を握り左手で右手首を握る。


 バチバチッ!


 とレイの右拳に電気が蓄積されると広範囲に電気が迸る。


 回廻はレイが大技を放とうとしているのが分かった。


「何をしているのだ。無駄だという事が分からないのかね」

「かもな……それでも、オレはやるぜ」


 レイは冷や汗を掻きながら電気の蓄積を完了させると、


「【大電撃砲だいでんげきほう】‼」


 レイは両腕をそのまま下ろし右手の拳を開いて直径二メートルの電撃を放つ。

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