第二九話 東京十長の二人
金髪モヒカンの
「あれぇ? 修っち、先月、誕生日じゃなかったかぁ?」
「あっしは気づいておったぞ」
「そりゃそうだろ……」
「だから煙草を吸うとるんよウホホ」
横に居たのは体格が良いと評判の
修が「ゴホッゴホッ! ゴホッ!」と煙草でむせると涙目になった。
「ウホホホ、まずい!」
「じゃあ、吸うんじゃねぇ」
「にしても風成殿、無事ならばいいのだが」
「瑠那っちのおかげで傷は治ったんだろ。なら無事なんじゃね? にしても風成っちが
連れてきたあの子なんなんだろぉな」
「厳しく問い詰めてはいけぬぞ」
「そんな事しねぇよヒャハ」
修と茂は夜中になるといつも倉庫前で談笑してた。年齢と入所時期が近い事もあり付き合いが良かった。もっとも彼らは能力者である以前に表向きは無職なので生活リズムが昼夜逆転を繰り返していた。
二人が話し混んでると突如、突風が吹き煙草の火が消えた。
「こんな突風、初めてなのだが」
修は手元にある灰皿代わりの空き缶に煙草を捨てながら言った。
茂が二人の人影が向かってくるのに気付く。周囲には倉庫が一定間隔に縦横無尽に建っており人が来るよう場所ではないので気になった。
「あ? なんだぁ? 人が来るなんておかしいな」
二人の人影は近づき、月夜に照らされて姿を現した。
「ぁ……あ!」
茂は驚きの余り声を漏らし、修は目を見開き狼狽えながら喋る。
「な、何故! こんな所におめぇさん達がおるのだ!」
「てめぇら東京
姿を現したの一人はロングコートを着てサングラスを身に着けている長身の男で厚底の高そうな黒ブーツに黒い皮手袋をしていた。もう一方は、赤みを帯びた髪色で耳より下の位置で短髪を結んで小さいツインテールを作っている女性だった。彼女はくるぶし丈の黒いフレアスカートにへそ出し仕様の半袖のTシャツを着ていた。
彼らは東京本部
茂は冷や汗を掻きながら、自分に言い聞かせる様に尋ねる。
「サングラスのてめぇ……
「いかにも」
奏義安。二〇歳。多くは語らない男である。能力は『前方に物理干渉完全無効の結界を展開』する事である。更に結界が展開出来る距離、時間、範囲については彼しか把握していない。
義安は横に居るツインテールの女性を見る。
「なにをしている」
「私が言うの? ま、いいけどさ」
「さっきの質問に答えてくれんか、おめぇさん達なにしにきたのだ」
修が口を挟んだ。ツンテールの女性は結んだ髪を撫でながら修を見る。ただ、見ているのではなく彼女は獰猛な動物が獲物を狙っている様な目で見ていた。
「そんな怖がらないでよ、お兄さん」
「くっ……
「ふふっ、どうかしら」
修は恐れていた。奏義安の能力も戦闘に置いては強力だが殺傷力という点では彼女の能力に軍配が上がる。
赤塚音流。一五歳。不敵な性格である。能力は『風力を生成し、操作』する事である。彼女が操る風は人体を切り裂くほどの威力を出せる。
義安は音流の行動を促す。
「赤塚」
「分かってる分かってるし、ねぇ、ホムンクルスの女の子頂戴」
「ホムンクルスだとぉ?」
「なにを言っておるのだ」
「お兄さんたち、何も知らないみたいね、ここに居るんでしょうこんぐらいの女の子が」
と音流が言うと地面から一三五センチ当たりの所で手のひらを下に向けた。
「「‼」」
修と茂は相手の狙いに気付く。十月風成が連れてきた女の子だという事に。
茂と修は抗議しようとした。風成が少女を巡って戦闘を行った事は明らかである為、敵意を持ってると判断する。
「てめぇらもあの女の子を追い掛け回してるのか! 能力開発部の
「大人しくするが良いぞ。東京本部はおめぇさん達の企みを時期に暴く事になるぞ」
義安と音流は動じなかった。ただセツが何者かに倒され、近くに『神戸特区能力所』ある事からセツは神戸特区の者と戦闘し、ホムンクルスの少女が奪われたと推察していた。たった今、茂と修の発言でホムンクルスの少女がここに居る事を確信する。
義安は右足を引き、中腰で今にも走り出しそうな体制になる。一方、音流は両手の指を組むと、上空に向けて腕を伸ばしてストレッチをした。
「話し合いは不要だ」
「さてと、一仕事するしかないみたいね」
茂と修は東京十長という強者相手に緊張が走る。
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