31.真実なんて知りたくありません☆
あれよこれよとしている間に、私はさっき国王陛下たちと話をした場所のあたりに戻ってきていた。さっきまた明日と別れたはずの陛下たちと顔を突きあわせることになるなんて、ついてないなぁ。
なんでこんなことになってるんですかねぇ……――って、きっかけはあのアンクレットだっけ。もういいや。なるようになれ。
どうせジェイドさんの目の前で『厄除け』使ってるんだし、いずれはばれてもおかしくないんだから。
エリックさんが手配したらしい大きな部屋には現在九人いる。
国王陛下とニコラス殿下の親子、宰相さんとユリウスさん、騎士団長としてレオンさん、そしてエリックさんと彼によく似た壮年の男性……――って、すんげぇメンバーに囲まれてますねぇ。唯一の救いはジェイドさんがそばに寄り添ってくれていることか。
なぜかアイリーンとミミィがいないけれど、まあ、説明できるものならば、あとで説明しよう。
護衛の人が部屋から出ていったのを確認した後、一番端にいた黒髪の男性が最初に口を開いた。
「ミコ・ダルミアン、お前はいったい何者だ」
その人は身辺書片手に私に問いかける。じっと見つめる視線は言い逃れを許さない迫力があった。でも、私はこう答えるしかない。
「私はビリウの村で育ったただの武器職人の娘ですけれど」
「そんなはずがないだろう。先ほど、息子が測った魔力量はとんでもないものだったぞ」
私の答えにすかさず重ねて質問してくる男性。
うーん、この世界で転生者がどういう扱いをされるかわからないから、素直には言えないなぁ。ただ私は、とんでもない量とは?とだけ、質問を返した。
すると、まさか私から質問返しされると思ていなかったんだろう。
渋い顔をした男性は実情を語ってくれた。
「この世界の人間としてはおかしい量だ。比較的魔力を持っていると言われている
なるほどねぇ。
そりゃあ不審に思うわ。でも、やっぱりそれじゃあ判断材料には足りない。
「もちろん特異的に魔力を持って産まれる者もいるが、それでも本当に奇跡な話だ。どうだね?」
男性の圧力に覚悟を決めた。
多分、この人たちはなに言っても
無理して言わなくてもいいぞと隣にいるジェイドさんは手をぎゅっと握ってくれたけれど、データがない以上、実証してみるべきだと思った。
「………一つだけ先にお願いしたいのですが」
「なんだ」
私は目を細めた。
これをも守ってもらわない限り、話すことはできない。
「今から抱えている秘密をお話ししますが、それを
私の要求はただ一つ。“だれにも話さない”。滅茶苦茶簡単でしょ?
それでもこの場にいる全員、目を瞠る。
「それは『ラテテイ』メンバーに対してもか」
そう。このお願いの肝はそこ。
私はしっかりと頷く。
アイリーンならば気づいているかもしれないし、ミミィも信頼してくれている。それでも言うわけにはいかなかった。
「わかった」
私のお願いに悲鳴を上げたのは先ほどの男性だった。
「陛下! 虫が良すぎまするぞ!!」
「ミデュア侯爵に同意です。彼女の秘密は全員で共有すべきかと」
ユリウスさんも同意するが、国王陛下はごく冷静に私に向かって尋ねる。
「お前はその秘密とやらがなにか混乱を招くかもしれないと思うのだな」
そうですね。
この世界への転生事情を知らないのでなんとも言えないが、隠しておいた方が無難だろう。
「そこまで言うのならば、ここにいる者たちのものだけが共有することにしよう。お前たち、いいな。もし、この決定に逆らいたいのならば、ここから出ていけ」
返答に満足したらしい国王陛下は私とジェイドさんを囲んでいる人に言うが、だれも出ていかない。そこまでしても知りたかったのだろうか。
「ならば、絶対に口外してはならぬぞ」
陛下がにやりと笑って言うと、エリックさんがすかさず魔道具を出す。
ふむ、なんだろうかと思って見ていると、そこから出てきた紙に全員がサインしていく。なるほど。契約魔術を応用させた魔道具なのか。
先ほど陛下に黒髪の男性はエリックさんののしたたかさに苦笑いする。
全員が署名し終わったのを見て、私は口を開いた。
「私は前世があります――――そうですね、わかりやすく言うと、こことは違う世界で生きてたんですよね。あるとき事故に遭って死に、魂だけがこちらの世界に迷いこんだみたいです」
私の“秘密”に興味津々の全員。ジェイドさんも目を瞠っていることから、彼も私の秘密には気づいていなかったんだろうね。
「彷徨った魂は自称神様に駄賃代わりに《普通》の娘としての命をもらいました。私の魔力が多いのはもしかしたらそのせいかもしれません」
全員、驚いているけれど、否定はしない。
信ぴょう性があるのだろう。
それとも、もしかしてすでに予想されていたのだろうか。
「その前世でなにかを守ってたりしていたか?」
私の話を聞き終わった面々のうち、エリックさんが最初に現実に戻ってきたようだ。私に前世での職業を尋ねてくる。
ふむ。どうやって答えようか。
一概に“巫女”と言っても、多分、住んでいる場所によって役割や身分が違う。だから、どちらかというと万国共通の“神官”の意味合いで説明しよう。
「守る――――少し意味合いが違うかもしれませんが、地域の安全や人の健康を祈ってましたね」
私の説明で十分だったのか、だからかとエリックさんは納得の表情をする。ほかの人たちからも怪訝な顔をされなかったから、問題はない。
のーぷろぶれむ。
「お前に攻撃系のスキルがないのが理解できたし、その自称神とやらがお前にアンクレットをつけた理由がわかった」
エリックさんとその傍らに立っている男性が頷きあう。
ごめん、どういうことですかねぇ。
「スキルには多分……いや、確実にその前世での行いが影響している。そして、自称神がアンクレットをつけた理由。お前の持っているスキルを封じるためだ」
エリックさんの言葉を一瞬、理解できなかったけど、理解した瞬間にはいぃぃ!?って大声で叫んじゃった☆
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