30.魔力測定をしましょう☆

 えっと、せっかく話してくれたのは嬉しんだけれど、なんか知らない世界すぎて、ちょっとなに言ってるかわからないんですが。

 私のきょとんとした表情にすまないと謝罪を入れつつ、ちゃんと細かい部分を言ってくれた。


「王家の闇、王宮の汚染を跡形もなく消し去ってきたというところだな。たとえば魔物に憑りつかれた奴の封印、忌み子のお祓い、汚れた場所を丸ごと焼き払うとかな。だからこそ、強力な魔力に気づかなかきゃいけなくて、それに特化した魔力だけは膨大なんだ」


 うーん、要は異世界版陰陽師的な感じですかね。

 なんとなくそんなイメージしかつかない。

 とはいえ、いくら前世の職業・巫女であっても陰陽師がなにかという部分をきちんと説明できないので、ここは口をつぐんでおくのが吉だ。

「でも、エリックはそれ以外にも氷漬けにするのと燃やすのは得意だよね」

「……まあな」

 私が余計なことを考えている間にレオンさんが茶々を入れるが、あまりその表現は好きじゃないみたいだ。ちょっとだけ眉が寄った。


「だから俺は、いや、ベルゼック家は代々人に会うのを忌み嫌って、この塔に立て籠もるのが慣例なんだ」


 ふーん。なるほどねぇって、立て籠もるって表現はどうよと思ったけれど、まあ本人が言ってるんだからいいのか(適当)。

 でも、それで納得した。なんでユリウスさんの呼びだしにも応じなかったのか。

 いたよねー。前世で霊感強いから神社にはいれませーんっていう人も。


「お前の指導を打診されたとき、嬉しかったけれど、お前の魔力を見てしまうのが怖かったんだ」


 エリックさんは不快な思いをさせてしまったなと頭を下げた。

「いえ、私はもうなにも気にしてませんよ」

 本音だ。

 これがほかの人だったら嘘だろって思ったかもしれないけれど、エリックさんは事実があるんだから。

 私の赦しに胸をなでおろしたエリックさんに、それならばと聞きたいことがあったんだっけ。

「そういえば、一つお聞きしたいことがあったんですけれど」

 私の問いかけになんだと不思議そうな顔をされた。魔王城脱出の際にきちんと回収されていたらしいそれ・・をスカートの外ポケットから取りだして、エリックさんに渡す。

「このアンクレットってなんですかね」


 ずっと疑問に思っていたこと。

 いつの間にかついていたアンクレット。魔王ガープは“もう必要ない・・・・・・”って言っていたけれど、なんのためにはめられたのかさえ分かっていないから、“必要”という言葉がどこにかかってくるのかがわからないんだよねぇ。


 エリックさんはどれどれと機械でアンクレットを確認していたんだけれど、なんでこんな貴重なものがとぼそりと呟く。

 貴重?

 普通の金属に見えるんですけれど、なにがどう貴重なんですかねぇと思って、エリックさんの顔を見ると、興味深そうにこちらを見ていた。

 怖い怖い。

「ああ、アイアンボートとグレースカッパー、レントシルバーの合金だ」

「ええっ……!! それ、すっげぇやばいやつじゃん」

 そうだなとレオンさん、ジェイドさんと頷きあうエリックさん。

 え、そんなに貴重なんですか。

 わかってないのは私だけなようで、この雰囲気から早く脱出したかった。


創造主か魔王しか・・・・・・・・鍛錬できないと言われてきた幻の合金だ」


 むむむぅ。

 小さいころに読み聞かせてもらった童話にも登場していた気がするし、金属を多く取り扱う両親も言っていたような。

 確証はないけれど。

「効果は魔力の抑制・増幅、果てはレアスキルの生成までなんでもござれ。なんでこんなもんを……そういえば、ユリウスが言ってたな。『勝手にはめられていた』って」

「そう、ですねぇ」

 エリックさんの迫力に負けた。私がゆっくり頷くと、ちょっと確認させてくれと言って、壁際の棚から機械取りだしてきた。もう私はなされるがままになっていた。

 私の不思議な視線にエリックさんは目を細める。


「魔力とスキル測定器だ」


 ほほう。

 エリックさんはこの測定器がいかに素晴らしいか、こと細やかに説明してくれた。

 うん、説明してくれた九割がたは理解できん。

 とはいえ、ある程度理解できた部分には、ギルドにあったものよりも精密に測れるらしく、王宮にいる人たちの魔力やスキルはこれで測定し、記録が収められていると。

 へぇと頷いた私は、指示された場所に手をかざす。なんだかあったかい気がするなんて思っていると、エリックさんが眉を寄せる。


 …………

 ………………

 ………………………………

 ………………………………――――


 えーっとぉ、なんですかねぇ。この沈黙。

 記憶にあるようなないような長い沈黙の後、エリックさんはレオンさんの方を見て静かに命令する。

「レオン、至急ギルドに連絡。ミコ・ダルミアンの身辺書を取り寄せろ」


「お、おう……!!」

 彼がこんな口調になるのが珍しかったんだろう。慌てた様子のレオンさんがどたばたと出ていく。

 いったいなにがあったのだろうと恐る恐る聞くと、エリックさんは怖い顔をしてこちらを見ている。


「ミコ・ダルミアン。お前、いったい何者なんだ」

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