第十章 レッドアラート!
第251話 軽便鉄道タカサキ線
――七月、キャランフィールド。
「キャー!」
「早い! 早い!」
子供たちのはしゃいだ声が、キャランフィールドの街に響く。
子供たちがはしゃいでいるのは、キャランフィールドの街中に列車が走り出したからだ。
ガタンゴトンと音を立てて、ホレックのおっちゃんが作った魔導機関車が走る。
「ホレックのおっちゃん、さすがだね!」
「任せとけよ!まあ、テスト機だがな!」
ホレックのおっちゃんが、完成させたテスト機は、小型の機関車だ。
人が二人横に並んで乗れる幅で、遊園地にある親子用列車に似ている。
それでも、十分だ。
テスト路線として、キャランフィールドの街中を走らせてみた。
港
↓
商人ギルド前
↓
領主館前
↓
クイック工場前
↓
冒険者ギルド前
単線で魔導機関車一台に四人乗りの客車が二両のかわいい列車だ。
魔導機関車は、箱形でディーゼル機関車に似ている。
無骨な感じが渋くてカッコイイ。
俺好みだ。
ホレックのおっちゃんとしては、まず、小型のテスト機でノウハウを貯めてから、大型の列車を作るそうだ。
厳しい目で魔導機関車をにらむ。
「とりあえず、平地なら問題ねえな」
「十分だよ! この小型の列車、これはこれで使い道があるよ」
「そうか?」
「小回りがきくから、山間部で運用したいね」
このサイズなら、軽便鉄道として利用出来る。
軽便鉄道というのは、小型の列車を走らせる簡易鉄道のことだ。
昔は、日本のあちこちに軽便鉄道があったらしい。
トラックや自家用車の普及に伴って、戦後姿を消してしまったとか。
六輪自動車タイレルやケッテンクラートは、軍事利用出来るので市販をする予定はない。
なので、補助交通網として軽便鉄道は有力な候補だ。
都市間を結ぶ幹線は、地球と同じ大型の列車を走らせる。
細かいローカル路線や普通の線路敷設が厳しい山間部は軽便鉄道として、この小型を利用する。
俺の考えをホレックのおっちゃんに話すと、話にのってきた。
「なるほどな。面白え! 山間部で魔導機関車が、どれだけ動けるか試してみようぜ!」
「よし! やろう!」
さて、山間部を走る軽便鉄道は、どこにしようか?
イメージとしては、ダージリン・ヒマラヤ鉄道だな。
ダージリン・ヒマラヤ鉄道は、インドのダージリン地方を走る小型の鉄道路線として有名だ。
ネットで動画を見て、いつか乗ってみたいと思っていたけれど、生憎この異世界に転生してしまった。
地球で乗れなかった分は、異世界で乗ろう!
山岳鉄道なんて、ロマンが一杯だ!
「サイターマ領都オオミーヤから、シメイ伯爵領カイタックはどうかな? 道路工事が終わりそうだから、工事の人員を手配できるよ」
「よーし! アンジェロの兄ちゃん。それで、頼むわ」
バトルホースが引く馬車は、トラックのような荷物運搬メインの位置づけにして、軽便鉄道は旅客専門……。
これなら、すみ分け出来るかな?
俺は、シメイ伯爵領カイタックに転移して、早速、シメイ伯爵に相談した。
「やりましょう!」
相変わらず、ノリがイイな。
たぶん、深く考えてない。
いや、まったく考えてない。
俺が持ってきた話だから、儲け話だ、良い話だと思っているだけだよな。
俺は大切なことをシメイ伯爵に告げた。
「弁当を忘れるなよ?」
「あっ……オークの……」
「釜ゆでじゃダメだぞ! 釜めしにしろよ! あとは、だるま弁当な!」
「えっと……」
「鉄道が通れば、駅が出来る。駅には駅弁が必要だろう!」
俺の剣幕にシメイ伯爵が押される。
いや、ここは譲れないよ。
駅弁だけはね!
「わかりました! わかりました! その鉄道のオープンに合わせて弁当を用意しますから!」
どうも、不安だな……。
まあ、だが、これでオオミーヤとカイタックをつなぐ鉄道建設スタートだ。
路線名は、タカサキ線だな!
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